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第24話
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そしていよいよルズベリー帝国の第二皇子夫妻を迎えるパーティー当日を迎えた。
会場の準備、料理の手配、宮廷音楽家の手配等は夫妻をお迎えするのに相応しい完璧な状態だ。
国王陛下夫妻、シモンとマリアン、イヴァンは王族の為に会場内の上座に用意されている席に着席し、参加者を待っている。
なお、サミュエルはこの場にはいない。
彼は第二皇子夫妻が王宮に到着し、パーティーの会場に入場するまでの間、まずは応接室で夫妻をもてなし、時間になったら夫妻をパーティー会場に連れて来るという重要な仕事があるからだ。
国王陛下夫妻は事務的な確認事項をお互い話しているが、シモンとマリアンとイヴァンの間に会話はなかった。
その原因はマリアンだ。
マリアンは朝からご機嫌斜めだった。
理由は自分が思っていたようなドレスを購入出来なかったからだ。
今回は流石に外国からの要人をお迎えするのに相応しい装いをしなければならない為、商人を呼んだら来て注文は出来た。
しかしマリアンが注文しようとしたのは如何にも贅を尽くしたようなドレスで、最高級の品質の生地を使用しているのは勿論のこと、ドレスにふんだんに縫い付けられているのは全て本物の宝石というドレスだった。
宝石一つ一つは大きさは極めて小さいが如何せん数が多い為、その分値段が張る。
マリアンがそのドレスを注文したいと言い張っていても、明らかに予算をはみ出しているので商人は頑として了承せず、違うドレスを勧めた。
マリアンは渋々――本当に渋々、というのが見て取れた――その代わりに勧められたドレスを注文した。
マリアンが何故最初のドレスが注文お断りだったのか尋ねると、”購入した場合のお支払いはどうするのですか? あなたが自分の私財でお支払いして頂けるのであれば、注文を受けつけますが”と商人が答えた。
するとマリアンは”私は王太子妃よ!? 私が望むものは何でも手に入るのよ!”と主張する。
商人は”国王陛下夫妻のご意向で、今回は注文を認めるが此方が伝えた金額以上のものは購入させないで欲しいとのことでした。なので私はそれに従いました”と答える。
そして商人はドレスの納入予定日を伝え、さっさと帰っていった。
今、マリアンが着ているのがそのドレスだ。
注文しようとしたドレスに比べるとランクは下がっているが、それでも王族として恥ずかしくない品位のものだった。
でもマリアンはそれに気づかずに安物と断定して不満がいっぱいだった。
不機嫌なマリアンはさておき、パーティーは王宮のパーティーホールで行われる。
基本的にほぼ全部の貴族の家を招待したが、領地で何か問題が起きてその対策に奔走しておりちょうど間が悪かったり、王都から遠い領地に住んでいる爵位が低級の貴族等は参加を辞退している。
王都から遠方の領地に住んでいる爵位が低級の者にとって王都までの交通費は割と馬鹿にならない。
王家も各家の財政状況は把握しているから、今回のようなパーティーで経済的な事情により不参加であってもお咎めはない。
お咎めはなくてもパーティーに参加することで得られる情報はもらえないので、その部分はマイナスになってしまうがそれは当人達は分かっている。
参加することになった貴族達ももう殆どが入場しており、ウェルカムドリンクとして給仕係が配ったシャンパンが入ったグラスを片手に各々付き合いのある者とお互いの近況等を語らいながら、パーティーが始まるのを待っている。
会場では宮廷音楽家達による優雅な演奏が行われており、パーティーとしての雰囲気は悪くなかった。
やっと今日の主役であるルズベリー帝国第二皇子夫妻がパーティーホールに到着し、会場の入口扉付近に立って入場者の名前を伝える係の者が声高らかに発表する。
「ルズベリー帝国第二皇子ご夫妻がご来場なさいました」
第二皇子夫妻の接待係になっているサミュエルの先導で、夫妻は国王陛下夫妻、シモンとマリアン、イヴァンがいる王族席へ向かう。
帝国第二皇子は深紅の生地に金色で華やかに縁取りされたジャケットを身に纏い、その妻はコバルトブルーのドレスにアクアマリンの欠片を縫い付けたドレスを身に纏っている。
ホールのシャンデリアの光がアクアマリンに降り注ぎ、キラキラと輝く。
改めて夫妻の容貌を注視すると、帝国第二皇子はすらりと背が高く、アイスブルーのさらさらとした髪に鮮やかなコバルトブルーの瞳の白皙の美青年で、ほぅっと見とれる夫人や未婚の令嬢が多数いた。
一方、参加者は第二皇子から妻の方に目線を動かすと、一様に驚愕の表情を浮かべる。
パーティーに参加しているエレオノーラから手紙を受け取った彼女と親しくしていた者達は、彼女が本当に生きていたと己の目で確認して涙ぐんでいた。
太陽の光の如く艶々と輝く豪奢な金髪にルビーのように輝く赤い瞳で、陶器のようにすべすべで色白の美しい顔立ち。
着ているドレスはオルレーヌ王国では見ないデザインのものだから、ルズベリー帝国のドレスであることは見て取れるが、見間違える訳がない。
それはかつてオルレーヌ王国ブロワ公爵家長女にしてシモン王太子殿下の婚約者でありながらも死刑判決を受け、処刑されたはずのエレオノール・ブロワその人だった――。
こうしてエレオノーラは学園の卒業パーティー以来、華々しくオルレーヌ王国へ舞い戻って来たのだ。
エレオノーラが卒業パーティーのあの日言い残した”また会える日まで”という言葉通り。
会場の準備、料理の手配、宮廷音楽家の手配等は夫妻をお迎えするのに相応しい完璧な状態だ。
国王陛下夫妻、シモンとマリアン、イヴァンは王族の為に会場内の上座に用意されている席に着席し、参加者を待っている。
なお、サミュエルはこの場にはいない。
彼は第二皇子夫妻が王宮に到着し、パーティーの会場に入場するまでの間、まずは応接室で夫妻をもてなし、時間になったら夫妻をパーティー会場に連れて来るという重要な仕事があるからだ。
国王陛下夫妻は事務的な確認事項をお互い話しているが、シモンとマリアンとイヴァンの間に会話はなかった。
その原因はマリアンだ。
マリアンは朝からご機嫌斜めだった。
理由は自分が思っていたようなドレスを購入出来なかったからだ。
今回は流石に外国からの要人をお迎えするのに相応しい装いをしなければならない為、商人を呼んだら来て注文は出来た。
しかしマリアンが注文しようとしたのは如何にも贅を尽くしたようなドレスで、最高級の品質の生地を使用しているのは勿論のこと、ドレスにふんだんに縫い付けられているのは全て本物の宝石というドレスだった。
宝石一つ一つは大きさは極めて小さいが如何せん数が多い為、その分値段が張る。
マリアンがそのドレスを注文したいと言い張っていても、明らかに予算をはみ出しているので商人は頑として了承せず、違うドレスを勧めた。
マリアンは渋々――本当に渋々、というのが見て取れた――その代わりに勧められたドレスを注文した。
マリアンが何故最初のドレスが注文お断りだったのか尋ねると、”購入した場合のお支払いはどうするのですか? あなたが自分の私財でお支払いして頂けるのであれば、注文を受けつけますが”と商人が答えた。
するとマリアンは”私は王太子妃よ!? 私が望むものは何でも手に入るのよ!”と主張する。
商人は”国王陛下夫妻のご意向で、今回は注文を認めるが此方が伝えた金額以上のものは購入させないで欲しいとのことでした。なので私はそれに従いました”と答える。
そして商人はドレスの納入予定日を伝え、さっさと帰っていった。
今、マリアンが着ているのがそのドレスだ。
注文しようとしたドレスに比べるとランクは下がっているが、それでも王族として恥ずかしくない品位のものだった。
でもマリアンはそれに気づかずに安物と断定して不満がいっぱいだった。
不機嫌なマリアンはさておき、パーティーは王宮のパーティーホールで行われる。
基本的にほぼ全部の貴族の家を招待したが、領地で何か問題が起きてその対策に奔走しておりちょうど間が悪かったり、王都から遠い領地に住んでいる爵位が低級の貴族等は参加を辞退している。
王都から遠方の領地に住んでいる爵位が低級の者にとって王都までの交通費は割と馬鹿にならない。
王家も各家の財政状況は把握しているから、今回のようなパーティーで経済的な事情により不参加であってもお咎めはない。
お咎めはなくてもパーティーに参加することで得られる情報はもらえないので、その部分はマイナスになってしまうがそれは当人達は分かっている。
参加することになった貴族達ももう殆どが入場しており、ウェルカムドリンクとして給仕係が配ったシャンパンが入ったグラスを片手に各々付き合いのある者とお互いの近況等を語らいながら、パーティーが始まるのを待っている。
会場では宮廷音楽家達による優雅な演奏が行われており、パーティーとしての雰囲気は悪くなかった。
やっと今日の主役であるルズベリー帝国第二皇子夫妻がパーティーホールに到着し、会場の入口扉付近に立って入場者の名前を伝える係の者が声高らかに発表する。
「ルズベリー帝国第二皇子ご夫妻がご来場なさいました」
第二皇子夫妻の接待係になっているサミュエルの先導で、夫妻は国王陛下夫妻、シモンとマリアン、イヴァンがいる王族席へ向かう。
帝国第二皇子は深紅の生地に金色で華やかに縁取りされたジャケットを身に纏い、その妻はコバルトブルーのドレスにアクアマリンの欠片を縫い付けたドレスを身に纏っている。
ホールのシャンデリアの光がアクアマリンに降り注ぎ、キラキラと輝く。
改めて夫妻の容貌を注視すると、帝国第二皇子はすらりと背が高く、アイスブルーのさらさらとした髪に鮮やかなコバルトブルーの瞳の白皙の美青年で、ほぅっと見とれる夫人や未婚の令嬢が多数いた。
一方、参加者は第二皇子から妻の方に目線を動かすと、一様に驚愕の表情を浮かべる。
パーティーに参加しているエレオノーラから手紙を受け取った彼女と親しくしていた者達は、彼女が本当に生きていたと己の目で確認して涙ぐんでいた。
太陽の光の如く艶々と輝く豪奢な金髪にルビーのように輝く赤い瞳で、陶器のようにすべすべで色白の美しい顔立ち。
着ているドレスはオルレーヌ王国では見ないデザインのものだから、ルズベリー帝国のドレスであることは見て取れるが、見間違える訳がない。
それはかつてオルレーヌ王国ブロワ公爵家長女にしてシモン王太子殿下の婚約者でありながらも死刑判決を受け、処刑されたはずのエレオノール・ブロワその人だった――。
こうしてエレオノーラは学園の卒業パーティー以来、華々しくオルレーヌ王国へ舞い戻って来たのだ。
エレオノーラが卒業パーティーのあの日言い残した”また会える日まで”という言葉通り。
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