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第7話
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「この書類で良ければ渡しますわよ? はい、どうぞ」
ファニーとイアンによる書類が破れたら無効だという主張に対して、ミレイユは書類をあっさりイアンに渡す。
「書類を破るって言ってるのに渡すなんて、頭大丈夫か? 此方としてはこれで後は破ったらいいだけだから別にいいが」
そしてイアンはビリビリに書類を破る。
「ははっ! これで書類はなくなった!」
「イアン様、やりましたね!」
イアンとファニーは2人で手を取り合って大喜びしている。
「お馬鹿さんなのはあなた達の方ですわ。破ったら無効になるだなんて、そんな話、聞いたこともございませんわ。もっと簡単で分かりやすいお話をしましょうか。例えばあなたがご友人にお金を貸すとしましょう。その際、貸した金額や利子、返済金額、返済期日等を書面に記し、あなたとご友人、双方のサインを記入。それであなたはお金を貸します。後日、そのご友人が書類を破り捨て、”書類は破ったからこの借金は無効”と主張したとします。その時、あなたはその主張を認めますか?」
「そんなの認める訳ないでしょう! 借金の踏み倒しじゃないか!」
「それではあなた方の言うところの”書類は破れたら無効”という理屈は通りませんわね。まさかご自分の都合がいい時だけそんな主張をされるのですか?」
「そ、それは……」
イアンは言葉に詰まる。
「それに、このような重要な書類は作成時に複数枚作って予備とするものですわ。1枚ダメにしてしまったからと言ってそれで終わりではないのです。さらに今回みたいに貴族院に提出したなどであれば、提出先にも厳重保管されておりますのよ?」
「くっ……! せっかく此方に有利なように風向きが変わったと思ったのに!」
「イアン様、次なる手を考えましょう!」
ミレイユの正論によって論破されたイアンとファニーは何とか形勢を持ちなおそうとするが、ミレイユはそれを一刀両断する。
「あなた達はどう足掻いても、次期公爵家当主とその一家にはなれません。此方は血筋的にルシアが次期公爵家当主たる正当性もあり、お見せした通り、それを公的に示している書類もあるわ。それに対して、あなた達は血筋的な正当性もなければ、本当にアレクシス様が生前仰ったかどうかも怪しい口約束しかない。招待されてもいないパーティーに乱入してきた挙句、訳も分からない理屈で騒ぎ立て、陛下にもご迷惑をかける。正当性もない上に、このような非常識な行いしか出来ない者に公爵家の当主は務まりませんわ」
「夫人の仰る通りじゃ。公爵家は貴族階級では最も位が上で、我が王家とも連なっている。そんな公爵家は他の貴族階級の皆の規範になるような言動を心がけるものじゃ。元々カルマ男爵の主張は筋は通っておらんかったが、それを抜きにしても人格的に到底公爵にふさわしいと思えぬ」
「次期公爵家当主はルシアであって、あなたではない。あなた達がどれだけ喚きたててもそれは変わらない事実ですわ」
ミレイユがきっぱりと告げるも、トニーとバルバラ、そしてファニーはまだ粘る。
その姿は子供が駄々をこねているのとまるで同じだ。
「私が次期公爵池当主と認められないだと!? そんなことあってたまるかよ!」
「そうよ! 何かの間違いに決まっている!」
「私達の言い分こそが正しいのよ! 皆、騙されないで!」
「カルマ男爵夫妻とファニー嬢よ。もういい加減騒ぎ立てるのはやめよ。余が本日ここに来たのは、貴殿の騒ぎを見る為でなく完全に別件。ここに来れば貴殿に会えるじゃろうと踏んでのことじゃ。貴殿には領地での税収を横領している疑惑があっての。詳しい話を聞こうと思って王宮に召喚したが、いつも忙しいと断られる。なのでこちらから貴殿の行きそうな場所に出向いたという訳じゃ」
ファニーとイアンによる書類が破れたら無効だという主張に対して、ミレイユは書類をあっさりイアンに渡す。
「書類を破るって言ってるのに渡すなんて、頭大丈夫か? 此方としてはこれで後は破ったらいいだけだから別にいいが」
そしてイアンはビリビリに書類を破る。
「ははっ! これで書類はなくなった!」
「イアン様、やりましたね!」
イアンとファニーは2人で手を取り合って大喜びしている。
「お馬鹿さんなのはあなた達の方ですわ。破ったら無効になるだなんて、そんな話、聞いたこともございませんわ。もっと簡単で分かりやすいお話をしましょうか。例えばあなたがご友人にお金を貸すとしましょう。その際、貸した金額や利子、返済金額、返済期日等を書面に記し、あなたとご友人、双方のサインを記入。それであなたはお金を貸します。後日、そのご友人が書類を破り捨て、”書類は破ったからこの借金は無効”と主張したとします。その時、あなたはその主張を認めますか?」
「そんなの認める訳ないでしょう! 借金の踏み倒しじゃないか!」
「それではあなた方の言うところの”書類は破れたら無効”という理屈は通りませんわね。まさかご自分の都合がいい時だけそんな主張をされるのですか?」
「そ、それは……」
イアンは言葉に詰まる。
「それに、このような重要な書類は作成時に複数枚作って予備とするものですわ。1枚ダメにしてしまったからと言ってそれで終わりではないのです。さらに今回みたいに貴族院に提出したなどであれば、提出先にも厳重保管されておりますのよ?」
「くっ……! せっかく此方に有利なように風向きが変わったと思ったのに!」
「イアン様、次なる手を考えましょう!」
ミレイユの正論によって論破されたイアンとファニーは何とか形勢を持ちなおそうとするが、ミレイユはそれを一刀両断する。
「あなた達はどう足掻いても、次期公爵家当主とその一家にはなれません。此方は血筋的にルシアが次期公爵家当主たる正当性もあり、お見せした通り、それを公的に示している書類もあるわ。それに対して、あなた達は血筋的な正当性もなければ、本当にアレクシス様が生前仰ったかどうかも怪しい口約束しかない。招待されてもいないパーティーに乱入してきた挙句、訳も分からない理屈で騒ぎ立て、陛下にもご迷惑をかける。正当性もない上に、このような非常識な行いしか出来ない者に公爵家の当主は務まりませんわ」
「夫人の仰る通りじゃ。公爵家は貴族階級では最も位が上で、我が王家とも連なっている。そんな公爵家は他の貴族階級の皆の規範になるような言動を心がけるものじゃ。元々カルマ男爵の主張は筋は通っておらんかったが、それを抜きにしても人格的に到底公爵にふさわしいと思えぬ」
「次期公爵家当主はルシアであって、あなたではない。あなた達がどれだけ喚きたててもそれは変わらない事実ですわ」
ミレイユがきっぱりと告げるも、トニーとバルバラ、そしてファニーはまだ粘る。
その姿は子供が駄々をこねているのとまるで同じだ。
「私が次期公爵池当主と認められないだと!? そんなことあってたまるかよ!」
「そうよ! 何かの間違いに決まっている!」
「私達の言い分こそが正しいのよ! 皆、騙されないで!」
「カルマ男爵夫妻とファニー嬢よ。もういい加減騒ぎ立てるのはやめよ。余が本日ここに来たのは、貴殿の騒ぎを見る為でなく完全に別件。ここに来れば貴殿に会えるじゃろうと踏んでのことじゃ。貴殿には領地での税収を横領している疑惑があっての。詳しい話を聞こうと思って王宮に召喚したが、いつも忙しいと断られる。なのでこちらから貴殿の行きそうな場所に出向いたという訳じゃ」
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