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エルフの里

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    草木が生い茂り、大小様々な木々がそびえ立った森の中、太陽の光が葉の隙間から降り注ぐその中でナオキとレイは剣を交えていた。

  時に荒々しく、時にダンスでも踊るように2人の動作は目まぐるしく変化していった。



  「ナオキ、お前本当に強くなったな!」

  「毎日お前と剣を交えてるんだ、当然だろ」

  「まったくだ。こりゃ俺もウカウカしてらんないな」

  「そんなこと言って、まだ本気じゃないんだろ?」

  「そりゃそうさ。俺を本気にできるヤツはただ1人だけだ」

  「そのうち2人になるさ」

  「そいつは楽しみだ」



  2人は無邪気にケンカゴッコをする子供のように本当に楽しそうに剣を振っていた。



   「兄さま、ナオキさん。父さまが呼んでます」



  2人のケンカゴッコに水を差しにベルが歩いてきた。隣にはアイリがいる。

 八京が亡くなり、ベルを救出することが出来たあの日のアイリからは想像もつかないほどにアイリは美しかった。



  「ちっ、いいところだったのに。オヤジが何の用だ?」



  動きを止めたレイは満足出来ずに不満を漏らす。



  「内容は聞いてませんが、父さま真面目な顔をしていましたよ」

  「急いで来てほしいと言っていました」



  ベルの言葉をアイリが捕捉する。



  「わかったよ。ナオキ、続きはオヤジの話の後だな」

  「まだやるのかよ、本当に好きだな」



  半ば呆れながらもナオキも満更ではなかった。レイと剣を交えていると自分が強くなっていくのがわかった。八京とはまた違った魅力をレイは持っていた。そう、レイとの訓練は楽しかった。



  「そういえばベル、チビたちはどうした? 一緒じゃないのか?」



  チビたち――勿論クーとガーのことだ。



  「あの子達なら村のお手伝いをしてますよ。最初と違って皆あの子達を可愛がってますわ」



  村――ここはレイとベルの故郷。エルフの里だ。馬を走らせたナオキたちは無事にレイたちの里に辿り着くことが出来たのだ。

  始めこそ族長であるレイたちの両親を筆頭に、里のエルフたちはナオキたちの立ち入りを拒絶した。だが、レイとベルの必死の説得で里に入ることが許可されると、皆ナオキたちのことを気に入り、今ではすっかり里の民のようだった。



  「アイツらホントに人懐っこいよなゴブリンなのにエルフに好かれるってどういうことだよ」

 「ホントだな。でもそういうの……悪く無いな」

 「まぁな。それに引き換えそっちはな……」



 意味深な言葉を口にし、レイが向けた視線の先にはある生き物がいた。



 「ナンだ!? ナニが言いたい小僧」



 木の根元には一匹の小さなドラゴンが座っていた。



 「いや~べっつにー」



 顔をニヤけさせながらもレイはそれ以上言わなかった。



 「フン……貴様の言いたいことなんぞ言われなくても分かるわい」



 憎らしそうに顔をしかめながらドラゴンは翼を広げ羽ばたかせた。その行く先はナオキの肩だ。

 ナオキに止まったドラゴンはナオキの頭を小突きながら――



 「コイツにもっと魔力があれば。ワイだって元の、とはいかんまでもチィとはまともな身体をしとるわ」

 「イタッ。そんなこと言ったって。ずっと魔力を供給し続けるって難しいし疲れるんだ」

 「うるさい! そもそもなんでこのワイが人間ごときに召喚されねばならんのじゃ。ワイはドラゴンの中でも最上位のドラゴンなんじゃぞ」



 そう――このドラゴンはあの時のドラゴンだ。自分の名は言いたがらないので、八京たちが使っていたカーマインを仮りの名としてナオキ達は使っていた。カーマインはナオキの出す魔力量で身体の大きさが変化することが分かった。今のナオキが常に出し続けられる量では今の姿が精一杯だった。



 「あれ~、そんなこと言ってるとまたナオキに魔力を止められるぞ? それでもいいのか?」

 「くっ……またそうやってワイをいじりおって貴様……覚えておれよ。元の姿になったら真っ先に喰ってやる」

 「ナオキ、やっぱコイツ秘龍石の中のほうが良いんじゃね?」

 「まぁまぁ。オレの魔力の訓練にもなるし、何よりクーとガーが喜ぶからさ」

 「お前は全く……誰にでも甘いんだからよ」

 「ねぇ。父さまが呼んでますよ。早く行かないと私まで怒られてしまうわ」



 終わらない会話にしびれを切らしたベルがナオキ達に言う。



 「あーハイハイ。わかったよ。行けばいいんだろう」



 まるで母親に注意された子供の用にレイは返し、レイの父親の元へ歩き出した。 
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