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誘い
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町から帰ってきたときには日が落ちようとしていた。野営地には兵士たちが各々の時間を過ごしていた。
「ナオキぃ、さっきのおっさんに殴られたやつ、ビックリしたわね。しかも八京さんに止められてて動けなかったなんて、もう八京さんとおっさんがグルになってナオキを痛めつけてるようにしか見えなかったわよ」
「う、うるさいなぁ。状況が状況だったんだし、仕方ないだろう」
明日香は楽しそうにナオキをからかっている。何とか終わることができた出来事を今更ながらに思い出し面白くなったのだろう。
「ナオキ君、ゴメンね。あの時はあぁするしか思い浮かばなくって。でもナオキ君なら大怪我をすることも無いし、騒ぎも大きくならなくて良かったよ」
代わりにナオキは町を出禁になってしまったが
「でもまさかナオキが助けに行くなんて思わなかったよ。少し見直したわ」
「あ、あの時のセンパイ、か、カッコよかったです……」
「そうだね。僕の立場上、あの状況は止めるしかないんだけど、ナオキ君の勇気ある行動は確かに凄かった」
皆一様に褒めてくれる。それだけでも行動した甲斐があった。
「いつものナオキならチワワみたいにプルプル震えてるのに一体どうしたの?」
「チワワみたいにプルプルなんてしてないだろ! でも確かに今までのオレなら黙って見過ごしてたと思う。けど、オレそんな自分から変わりたいんだ」
ナオキはチラッとルカの方に視線を向けた。それに気付いたルカは少しだけ笑みを浮かべた。
「ふ~ん……まぁ良いんじゃない? 今までよりマシになったってことだし。これからも頑張りなさいよ」
明日香が励ましてくれている。八京もルカもナオキを見て頷いた。
ナオキに期待をしてくれていることが分かり、ナオキは改めてあの行動が間違っていなかったと実感した。
「あぁ、わかってる」
「それはそうと八京さん。あの奴隷の子、本当にどうにか出来ないの? あんな酷い扱い受けてあまりにも可哀そうよ」
確かに……あの少女は日常的に暴力を受けている。それだけではない。少女の身体はやせ細り、体臭もキツかった。まともな生活環境にないことが容易に想像できた。
「それなんだけど、残念だけどこの世界ではあぁいった子が数多く存在するんだ。皆、親を亡くした子たちで、そう言った子を迎え入れる施設はあるんだけど、スグに奴隷として売られてしまう。奴隷はその主人の所有物でどう扱おうとお咎めはない。このルールはどの国でも共通事項なんだ」
顔を曇らせた八京は言った。
「………………」
やっぱりあの子を救うことは出来ないのか……
だがナオキはあの時八京が明日香に言ったことを訊き逃さなかった。
――今の僕たちにはどうすることも出来ないんだ――
今の僕たち……八京から咄嗟にでた言葉だろうが間違いなくそう言った。つまり、八京は奴隷について何かしら考え、動こうとしているということではないか。
今なら何か聞けるかもしれない……
ナオキは八京に話を振ろうとした――その時だった。
「八京、悪いが夕食前に明日からのスケジュールの確認をさせてくれ」
ジュダだった。突然現れたジュダは忙しいのだろう。普段より早口になっていた。
「はい。わかりました。皆、僕はちょっと行ってくるから少し休んでて」
そう言って八京はジュダと共に行ってしまった。
聞きたかったけどしょうがない。また今度聞いてみよう……
「よお! お前たち! ヒマか?」
タイミングを見計らったかのように、八京たちが去ったあとナオキ達に話掛ける者がいた。
確かこいつは――
「ゾーラ……さん?」
スティルトンと共にいた男だ。ナオキを召使いにするとか明日香たちを妾にするとか、言いたい放題言ってくれたヤツだ。そんな奴が一体どんな用があってきたのか見当もつかなかった。
「お、覚えててくれたんかい! 嬉しいねぇ。暇なら面白れぇもん見せてやるからオレに付き合わねぇか?」
随分と馴れ馴れしい態度にナオキは少々腹が立った。
それとゾーラの息からは酒の匂いがした。酔っているのか?
「何でアンタに付いて行かなきゃ行けないのよ。お断りだわ」
明日香もナオキと同様にゾーラを良く思っていない。あからさまに態度に出ている。
「そう言うなって。これから長い付き合いになるかも知れねぇんだ。親睦を深めておいても良いんじゃねぇかい? そこの嬢ちゃんもそう思うだろ?」
ルカの腕を掴みゾーラは引っ張った。
「え? い、いや……」
話を振られてルカは戸惑っていた。掴まれた手を剝がそうとするがビクともしない。
「ちょっと! 嫌がってるじゃない。やめなさいよ!」
明日香がゾーラとルカの間に割って入った。
「なんだよ。そんなに時間は取らせねぇ。なぁ? 絶対面白れぇからよ。」
尚もゾーラはしつこく誘ってくる。そんなに面白いことがあるのだろうか……
「絶対嫌よ。お断りよ!」
「連れねぇなぁ。ちっとは付き合ってくれてもいいんじゃねぇか? なぁ?」
ゾーラの口調が強くなっていた。いらだっているのだろう。酔っぱらっていることも有り、この男が何をしでかすか分からない。危険な雰囲気が漂っていた。
「ちょっと落ち着きましょう」
ナオキがゾーラと明日香の間に入った。このままだと二人が喧嘩を始めそうだったからだ。
「あぁ!? じゃあニィチャン。オメェは来るんだろうな?」
「分かりました。行きます行きます! だからこっちの二人は勘弁してくださいよ」
しまった
思わず言ってしまった。ナオキも行きたくはないがこの場を収めるにはそれしかないだろう。
「そうか、やっと行く気になったか。じゃあ行こうぜ、ニィチャン」
やっと落ち着いたゾーラはナオキの肩をガッチリ掴み歩き出した。もはや逃げることも出来ない。
「ナオキ行くの!? やめときなさいよ!」
明日香が止めようとするが歩き出した二人の歩みは止まらない。
もう覚悟を決めるしかない。
「大丈夫。スグ返ってくるから」
本当に早く帰ってこれますように……
強く願わずにはいられなかった。
「せ、センパイ気をつけて……」
「ありがとう。行ってくるよ」
「ナオキぃ、さっきのおっさんに殴られたやつ、ビックリしたわね。しかも八京さんに止められてて動けなかったなんて、もう八京さんとおっさんがグルになってナオキを痛めつけてるようにしか見えなかったわよ」
「う、うるさいなぁ。状況が状況だったんだし、仕方ないだろう」
明日香は楽しそうにナオキをからかっている。何とか終わることができた出来事を今更ながらに思い出し面白くなったのだろう。
「ナオキ君、ゴメンね。あの時はあぁするしか思い浮かばなくって。でもナオキ君なら大怪我をすることも無いし、騒ぎも大きくならなくて良かったよ」
代わりにナオキは町を出禁になってしまったが
「でもまさかナオキが助けに行くなんて思わなかったよ。少し見直したわ」
「あ、あの時のセンパイ、か、カッコよかったです……」
「そうだね。僕の立場上、あの状況は止めるしかないんだけど、ナオキ君の勇気ある行動は確かに凄かった」
皆一様に褒めてくれる。それだけでも行動した甲斐があった。
「いつものナオキならチワワみたいにプルプル震えてるのに一体どうしたの?」
「チワワみたいにプルプルなんてしてないだろ! でも確かに今までのオレなら黙って見過ごしてたと思う。けど、オレそんな自分から変わりたいんだ」
ナオキはチラッとルカの方に視線を向けた。それに気付いたルカは少しだけ笑みを浮かべた。
「ふ~ん……まぁ良いんじゃない? 今までよりマシになったってことだし。これからも頑張りなさいよ」
明日香が励ましてくれている。八京もルカもナオキを見て頷いた。
ナオキに期待をしてくれていることが分かり、ナオキは改めてあの行動が間違っていなかったと実感した。
「あぁ、わかってる」
「それはそうと八京さん。あの奴隷の子、本当にどうにか出来ないの? あんな酷い扱い受けてあまりにも可哀そうよ」
確かに……あの少女は日常的に暴力を受けている。それだけではない。少女の身体はやせ細り、体臭もキツかった。まともな生活環境にないことが容易に想像できた。
「それなんだけど、残念だけどこの世界ではあぁいった子が数多く存在するんだ。皆、親を亡くした子たちで、そう言った子を迎え入れる施設はあるんだけど、スグに奴隷として売られてしまう。奴隷はその主人の所有物でどう扱おうとお咎めはない。このルールはどの国でも共通事項なんだ」
顔を曇らせた八京は言った。
「………………」
やっぱりあの子を救うことは出来ないのか……
だがナオキはあの時八京が明日香に言ったことを訊き逃さなかった。
――今の僕たちにはどうすることも出来ないんだ――
今の僕たち……八京から咄嗟にでた言葉だろうが間違いなくそう言った。つまり、八京は奴隷について何かしら考え、動こうとしているということではないか。
今なら何か聞けるかもしれない……
ナオキは八京に話を振ろうとした――その時だった。
「八京、悪いが夕食前に明日からのスケジュールの確認をさせてくれ」
ジュダだった。突然現れたジュダは忙しいのだろう。普段より早口になっていた。
「はい。わかりました。皆、僕はちょっと行ってくるから少し休んでて」
そう言って八京はジュダと共に行ってしまった。
聞きたかったけどしょうがない。また今度聞いてみよう……
「よお! お前たち! ヒマか?」
タイミングを見計らったかのように、八京たちが去ったあとナオキ達に話掛ける者がいた。
確かこいつは――
「ゾーラ……さん?」
スティルトンと共にいた男だ。ナオキを召使いにするとか明日香たちを妾にするとか、言いたい放題言ってくれたヤツだ。そんな奴が一体どんな用があってきたのか見当もつかなかった。
「お、覚えててくれたんかい! 嬉しいねぇ。暇なら面白れぇもん見せてやるからオレに付き合わねぇか?」
随分と馴れ馴れしい態度にナオキは少々腹が立った。
それとゾーラの息からは酒の匂いがした。酔っているのか?
「何でアンタに付いて行かなきゃ行けないのよ。お断りだわ」
明日香もナオキと同様にゾーラを良く思っていない。あからさまに態度に出ている。
「そう言うなって。これから長い付き合いになるかも知れねぇんだ。親睦を深めておいても良いんじゃねぇかい? そこの嬢ちゃんもそう思うだろ?」
ルカの腕を掴みゾーラは引っ張った。
「え? い、いや……」
話を振られてルカは戸惑っていた。掴まれた手を剝がそうとするがビクともしない。
「ちょっと! 嫌がってるじゃない。やめなさいよ!」
明日香がゾーラとルカの間に割って入った。
「なんだよ。そんなに時間は取らせねぇ。なぁ? 絶対面白れぇからよ。」
尚もゾーラはしつこく誘ってくる。そんなに面白いことがあるのだろうか……
「絶対嫌よ。お断りよ!」
「連れねぇなぁ。ちっとは付き合ってくれてもいいんじゃねぇか? なぁ?」
ゾーラの口調が強くなっていた。いらだっているのだろう。酔っぱらっていることも有り、この男が何をしでかすか分からない。危険な雰囲気が漂っていた。
「ちょっと落ち着きましょう」
ナオキがゾーラと明日香の間に入った。このままだと二人が喧嘩を始めそうだったからだ。
「あぁ!? じゃあニィチャン。オメェは来るんだろうな?」
「分かりました。行きます行きます! だからこっちの二人は勘弁してくださいよ」
しまった
思わず言ってしまった。ナオキも行きたくはないがこの場を収めるにはそれしかないだろう。
「そうか、やっと行く気になったか。じゃあ行こうぜ、ニィチャン」
やっと落ち着いたゾーラはナオキの肩をガッチリ掴み歩き出した。もはや逃げることも出来ない。
「ナオキ行くの!? やめときなさいよ!」
明日香が止めようとするが歩き出した二人の歩みは止まらない。
もう覚悟を決めるしかない。
「大丈夫。スグ返ってくるから」
本当に早く帰ってこれますように……
強く願わずにはいられなかった。
「せ、センパイ気をつけて……」
「ありがとう。行ってくるよ」
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