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第3章

第305話 芋とリンゴのパイ

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「やったぁ!イーモのパイ!イーモ!イーモ!皆でイーモを食べるでござるぅ!」
ユリウスが小躍りしている。小さい店舗の中で、多少は配慮しているのか若干モーションは控えめだ。でもちょっと騒がしい。他の客がいなかったから、まだよいけど。

「ユリウス、芋が良いならまた芋の注文をするか。」

芋を使ったパイを作っているくらいだから、この街で芋が手に入るはずなのだ。
商業ギルドに問い合わせてみようかとも思ったが、だめ元で菓子店に訊いてみる事にした。ユリウスガ目を輝かせた。

「おお!明日の朝はマルロイ氏達は出発でござった!餞別にイーモを渡したいでござるぅ!」

菓子店で芋を焼いてもらって焼きたてを売ってもらえないかと交渉してみたのだが、早朝は難しいとのことだった。でも生の芋を沢山仕入れているので芋を分けてくれることはできるそうだ。それならと、生の芋も売ってもらうことにした。
そして芋とリンゴのパイを更に追加で購入した。
商業旅団組合の施設の食堂の厨房を貸してもらえるか交渉してみることにした。
追加のパイは、厨房を貸してもらえた場合に報酬の他にお礼として渡す分だ。

菓子店で売ってもらった芋と、パイを抱えて店を出た頃、魔鳥から連絡があった。一瞬だけ感覚共有すると、赤毛の髪の二人組の姿が見えた。
ロアン君、ローレ嬢、デヴィン君の三人で、井戸端で洗濯をしているらしい。
ちょっと高く飛んでもらって、付近の様子を見回してもらうと、見覚えがある建物が見えた。そんなに遠くない。

「ロアン君達を見つけたよ。

芋とパイを抱えてちょっと荷物が重くなったけど、そのまま彼らが泊まっているらしい宿の方向に向かう事にした。
パイが売られていた店から三本奥まった通りに宿があった。ちょっと古めかしい感じの建物だ。ジョセフィンが宿の受付に聞いて、ロアン君を呼び出してもらった。

バタバタと駆けてきたロアン君がビックリしたような嬉しそうな顔をした。

「えー?何で場所が分かったんですか?」
「イーモの力でござるよ!イーモ!」
「イーモ!わわ!なんだろう?暖かい!食べ物ですか?」
ロアン君はパイの入った箱を受け取って、ちょっとテンパってキョロキョロした。

「イーモの菓子でござる。」
「わ、イーモの?あ!ローレ達を呼んで‥‥、あ、洗濯中‥‥。」
宿の奥の方を振り返ってロアン君がどうしようと呟いた。
結局、ローレ嬢とデヴィン君にも会わせたいということで、宿の裏の井戸まで案内をしてくれることになった。

「ええ?イーモのお菓子?ありがとうございます!わぁ。温かい!」
「本当だ、温かい!」
パイの入った箱をロアン君、ローレ嬢、デヴィン君の三人が両手で触っている。嬉しそうだけど、どうしたのかなと思ったらどうやら洗濯に使っていた井戸水が冷たかったらしい。
もうそろそろ洗濯は終了というので、桶に入った水を湯に変えてあげた。

「わ~!暖か~い!」
交代でパイの箱を持って、お湯の入った桶に手を突っ込んで温めていた。

「魔法、いいなぁ。クリーン魔法もだけど‥‥。」
ローレ嬢が呟いた。そういえば、魔導科クラスの女子が、ローレ嬢にクリーン魔法を教えてあげたいとか言ってたけど、道中教えるタイミングもなかったみたいだったな。

「温水に変える魔法は適正が必要だし、覚えるのもちょっと時間がかかるけど‥‥、クリーン魔法ならあまり時間かからずに覚えられるんじゃない?」

俺の言葉でローレ嬢が目を見開いた。
「覚えられるの?クリーン魔法を?」

ユリウスがバッと手を上げた。
「拙者が教えるでござるよ!」
「本当?」
「ユリウス、今日の魔法の効きが甘かったのに教えられるであるか?」
「やり方位は教えられるでござるよ!」

マーギットさんとユリウスが話している間、ロアン君達が三人でボソボソと相談していた。
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