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第3章

第301話 くっさい初依頼

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マーギットさんが掲示板付近の様子をチラリと見てから言った。
「誰かが依頼を受けたら今の話は、なしということであるな?」

「対象の衣類の数は多いようですので、時間まででしたら複数組が受けられます。」
マーギットさんが腕組みをして依頼内容がかかれた資料を覗き込み、俺達を振り返った。

「我は、この依頼で良いと思う。どうであるか?」
「良いが、これは対象のランクは石級だけか?」
デリックさんが質問をした。どうやら、俺とジョセフィンも受けられるのかを気にしているようだ。
受付の女性がニコリと微笑んだ。

「急ぎのご依頼ですので、ランクは問いません。」

誰が受けても良いということだったので、パーティ登録をして、全員でその依頼を受ける事にした。

「お受けいただき助かります。」

依頼を受けるとすぐにギルド職員の人に冒険者ギルドの奥の部屋に案内をされた。急ぎの依頼だけあって、どうやら既に洗濯ものをギルドの一室に預かっているらしい。
通路を通って、一室の前まで来たとき、ギルド職員の男性が、布を一枚取り出して自分の口と鼻を隠すように顔半分を覆った。

「少々匂いますので、布があるようでしたら鼻を塞いだ方が良いかもしれません。」
「ちょ、ちょっと待って。」

洗濯物がそんなに匂うのか?ギョッとしているとジョセフィンがささっと大きめのハンカチーフを出してくれた。
全員が布で鼻を保護するのを待ってからギルド職員が鍵を取り出して、ドアの鍵を開けた。ギギッと扉が開いた時、もわっと残留魔力を含んだ空気が部屋の外に漏れ出て来た。

「‥‥魔獣の血か‥‥。」
「アイスボアを狩ったときに返り血をたっぷり浴びたとか聞きました。えーと手前の三着だけで依頼は達成になります。」

部屋の床の上に布が敷かれていて、そこに衣類が山になっていて、手前にぐしゃっと無造作にシャツなどが三枚並べられていた。魔獣の血で染まってから乾いたらしくべっとりと茶色いものが付着していた。
布で鼻を覆ってはいるが、腐敗臭のような臭いが伝わってくる。魔獣の血に魔力が残っているから、余計に臭いが酷く感じるのか?

「うう。酷い臭いでござる。魔法陣玉を投げても良いでござるか?」

ユリウスは、クリーン魔法の魔法陣を一枚とりだしてピラピラと振った。マーギットさんが首を横に振る。

「ユリウス、その魔法陣は時間差発動するように作られていないである。そもそも、魔法陣を使うと赤字であろう。」
「でも、近付くと臭いでござるよ。これを着ていた人は大丈夫でござったか?」
「布を広げるまではここまで臭いませんでした。」

どうやら床に広げてある布は、蜘蛛系魔獣の糸を織り込んでいて、その布で洗濯物を包んでいると、臭いの漏れ出しが少なかったそうだ。

ギルド職員は、クリーン魔法をかけた洗濯物の枚数を数えるために立ち会うらしい。服を紛失したりなどのトラブル防止の為のようだ。紛失したとか言われて疑われたら困るからな。

「くぅ~!初依頼がくっさいでござるぅ!」
「ユリウス、笑ってしまうであろう。最低一人一枚、さっさと行うである。」

冒険者パーティを組んで依頼を受けたのでパーティで最低三枚の服にクリーン魔法をかければよいことになっている。
事前に打ち合わせた時、マーギットさん、ユリウス、デリックさん、トマソンで一枚ずつ合計四枚を目標にすることにした。俺とジョセフィンは残りがあればと考えていたのだ。
実際に見てみると、服は山になっていた。
マーギットさんはさっさと手前の一枚にクリーン魔法を放った。ふわりとシャツの一枚が光の粒に包まれて、光が消える頃にはすっかり綺麗になっていた。

「おお!兄上素早いでござる!」
「ユリウスもさっさとするである。」
「拙者はもっと近付かないと上手く行かないでござるよ。」

ユリウスは及び腰な姿勢で、一歩大きく部屋の中に踏み出し、更に片手だけを洗濯物の方に伸ばしてから、ギュッと目を閉じて叫んだ。

「クリーン!ウルトラクリーン!!」
「ユリウス、詠唱を変えてしまうから効果が弱まっているである。」
「うぇぇ‥‥。」

ユリウスは、もう一度クリーン魔法をかけようとしたがインターバルがあるので、一旦休憩となった。その間にデリックさんが別の一枚にクリーン魔法をかけた。
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