騎士志望のご令息は暗躍がお得意

第3章

第298話 冒険者登録

商業旅団組合の施設の部屋は、一般的な貴族が宿泊するような宿と比べると質素なんだけど、魔導科クラスメンバーは、ツヴァンまでの旅の間も安宿を選んで泊まっていたくらいなだけあって、宿泊部屋自体に不満はないようだった。
むしろ、宿というより寮みたいな雰囲気だと嬉しそうだった。
さっそく、休み明け前に集合する手筈を整えていった後は、一泊しかしないツヴァンの街の探索に出かけて行った。

「拙者達はツヴァンで暫くゆっくりするでござるなぁ。」
「うむ。時間もある事だし、冒険者登録でもしようと思うである。」

マーギットさんが冒険者登録をすると言い出した。アイスリザード討伐の報告をした時に登録もしてしまおうかという話が出ていたのだけど
登録した街で活動をするというのが出来ないので，保留になっていたのだ。

ツヴァンに滞在している間、冒険者パーティで活動をすれば、初期のランク上げを皆で出来るというメリットがある。

「冒険者！冒険者に拙者もなるでござるぅ！」

ユリウスは、冒険者登録をすると聞いて，テンションを上げていた。登録をするというのが嬉しいらしい。

「騎士科は皆、登録をしていたから、登録したかったでござる。」

騎士科の生徒はほとんど冒険者登録をしている。以前、アレクシスやヘンリー達とダンジョンに行ったりしていたけど、冒険者パーティを組んで
鍛錬ついでに小遣い稼ぎも出来るのだ。
だけど，途中から騎士科に異動してきたユリウスやトマソンは、後から冒険者登録をしても皆とランクが違って一緒に活動出来ないということになってしまう。
それで登録をするタイミングを逃していたようだ。

魔導科は何故かあまり冒険者登録をしないんだよな。
魔導科だと攻撃魔法とかをバンバン撃っていそうなイメージがあるのだけど、実戦はしないのかな。

入学の案内の時に説明がなかったけど、その辺はちゃんと学科選択までにそういったことは教えてもらいたいよね。
マーギットさんとユリウスが登録すると聞いて、
今なら初心者冒険者パーティとして活動できるということで、デリックさんやトマソンも冒険者登録をすることになった。

早速ということでツヴァンの街の冒険者ギルドに向かった。

「あ！どうしてここに？」

冒険者ギルドに向かうとロアン君達がいた。護衛依頼の完了報告をした後、宿を確保してから、受けられる依頼を確認しに来たのだそうだ。
「拙者達は冒険者登録に来たでござるよ。」
ユリウスがそう説明をすると、ロアン君達がちょっと嬉しそうな顔をした。

「じゃあ、冒険者としては僕の方が先輩ですね！」
「むぅ～！すぐ追い抜くでござるぅ！」
ユリウスがちょっと唇を尖らせた。マーギットさんは「うむ。」と頷いた。
「切磋琢磨するのは良い事である。我もランク上げに励むである。」
「うわ。本当にすぐ追い抜かれそう。」

先に着いていたロアン君達が、依頼票の掲示板で見て来た内容を少し教えてくれた。

「やっぱり、朝イチじゃないと条件の良い依頼は残ってないみたいです。」

ランク毎に分けられてはられているらしい依頼票を指さす。確かに、掲示板の大きさに比べて、張られている依頼票の数は少ない。