281 / 324
第3章
第280話 洗濯
しおりを挟む
「‥‥いよいよであるか。長かったであるな。」
マーギットさんが腕組みをして感慨深そうに言った。ユリウスはちょっと慌てた様子で冒険者ギルドの方をチラリと見た。
「ローレ氏達とお別れでござるか?」
「まあ、そうだけど。多分、休憩の街くらいまでは同じ方向だと思うよ。」
「そうでござったかぁ!これっきりかと思ったでござるよ。」
「馬車が別方向だっとしても、出発前に挨拶くらいはするだろう。」
ホッとした様子のユリウスに、トマソンが眉間に皺を寄せて突っ込みを入れた。
デリックさんは顎に手を当てて首をひねった。
「今から洗濯をして朝までに乾くだろうか。」
「え?洗濯?」
「いつ出発かが判らず、洗濯するタイミングを逃していたのだ。」
デリックさんが自ら洗濯をするというのが意外で、訊き返してしまったけど、旅費の節約の為だよな。
今まで特に自分で洗濯しているとは言ってなかったけど、出発時間とかの予定が決まっている時は自分達で洗濯をしていたらしい。
トマソンも頷いた。
「いつ避難勧告が出るか分からないと思ってたが、さっさと洗濯してしまえばよかったな。」
「温風魔法かけようか?」
「いや、暖房の管のところに置けば乾くだろう。
」
貴族令息なのに所帯染みた会話をしている。マーギットさんとユリウスはどうしていたのだろうと思ったけど、湯浴みの度に来ていたものを洗濯して、マーギットさんの風魔法で乾かしていたらしい。
「マーカス氏とジョス氏は、洗濯は宿に頼んでいるのでござるか?」
ユリウスに訊かれたので俺は首を横に振った。
「いや、クリーン魔法で済ましてる。」
「は!?」
ユリウスが目と口を同時に開いた。
「クリーン魔法!その手があったでござるか?」
「いや、洗った方がスッキリするっていいう人も居るし、好みな方法で良いんじゃない?」
俺の言葉にユリウスはバッとマーギットさんに詰め寄った。マーギットさんは、「ふむ。」と頷いた。
「寝袋はクリーン魔法をかけたというのに、習慣で洗濯していたであるな。」
「インターバルがあるでござるが、洗って乾かすより早そうでござるぅ!』
基本的なクリーン魔法だと対象物が一つだけだから,靴下一組でも二回クリーン魔法を使う事になる。
それが面倒というのは有るだろう。そうは言っても宿の部屋で寛ぐくらいの余裕が有る時なら問題なさそうだけど。
実家では使用人が洗濯をするから、衣類にクリーン魔法を使うという発想がなかったらしい。
学園の寮でも、湯浴み代わりにクリーン魔法は使うのに、衣類は洗濯していたそうだ。
そんな話をしていたら、ロアン君達が冒険者ギルドから出て来た。俺達の姿を見て手を振ってくる。
「あれ?待っててくれたんですか?」
「いや、立ち話をしてたんだよ。」
ロアン君達はそれぞれ報酬が入っているらしい革袋を大事そうに抱えていた。
「報酬貰えて助かりました!」
ロアン君が言うと、ローレ嬢とデヴィン君も嬉しそうに頷いた。
「今度は緊急用の分は実家に送らないで残しておこうと思って。」
「え、全部緊急用で良いんじゃない?」
「でも、護衛している時あまりジャラジャラさせていると‥‥。狙われたりしそうで‥‥。」
「小金貨とかならそうジャラジャラしないんじゃなにの?」
「え?」
ローレ嬢が慌てて、持っていた革袋の中を覗き込んだ。
マーギットさんが腕組みをして感慨深そうに言った。ユリウスはちょっと慌てた様子で冒険者ギルドの方をチラリと見た。
「ローレ氏達とお別れでござるか?」
「まあ、そうだけど。多分、休憩の街くらいまでは同じ方向だと思うよ。」
「そうでござったかぁ!これっきりかと思ったでござるよ。」
「馬車が別方向だっとしても、出発前に挨拶くらいはするだろう。」
ホッとした様子のユリウスに、トマソンが眉間に皺を寄せて突っ込みを入れた。
デリックさんは顎に手を当てて首をひねった。
「今から洗濯をして朝までに乾くだろうか。」
「え?洗濯?」
「いつ出発かが判らず、洗濯するタイミングを逃していたのだ。」
デリックさんが自ら洗濯をするというのが意外で、訊き返してしまったけど、旅費の節約の為だよな。
今まで特に自分で洗濯しているとは言ってなかったけど、出発時間とかの予定が決まっている時は自分達で洗濯をしていたらしい。
トマソンも頷いた。
「いつ避難勧告が出るか分からないと思ってたが、さっさと洗濯してしまえばよかったな。」
「温風魔法かけようか?」
「いや、暖房の管のところに置けば乾くだろう。
」
貴族令息なのに所帯染みた会話をしている。マーギットさんとユリウスはどうしていたのだろうと思ったけど、湯浴みの度に来ていたものを洗濯して、マーギットさんの風魔法で乾かしていたらしい。
「マーカス氏とジョス氏は、洗濯は宿に頼んでいるのでござるか?」
ユリウスに訊かれたので俺は首を横に振った。
「いや、クリーン魔法で済ましてる。」
「は!?」
ユリウスが目と口を同時に開いた。
「クリーン魔法!その手があったでござるか?」
「いや、洗った方がスッキリするっていいう人も居るし、好みな方法で良いんじゃない?」
俺の言葉にユリウスはバッとマーギットさんに詰め寄った。マーギットさんは、「ふむ。」と頷いた。
「寝袋はクリーン魔法をかけたというのに、習慣で洗濯していたであるな。」
「インターバルがあるでござるが、洗って乾かすより早そうでござるぅ!』
基本的なクリーン魔法だと対象物が一つだけだから,靴下一組でも二回クリーン魔法を使う事になる。
それが面倒というのは有るだろう。そうは言っても宿の部屋で寛ぐくらいの余裕が有る時なら問題なさそうだけど。
実家では使用人が洗濯をするから、衣類にクリーン魔法を使うという発想がなかったらしい。
学園の寮でも、湯浴み代わりにクリーン魔法は使うのに、衣類は洗濯していたそうだ。
そんな話をしていたら、ロアン君達が冒険者ギルドから出て来た。俺達の姿を見て手を振ってくる。
「あれ?待っててくれたんですか?」
「いや、立ち話をしてたんだよ。」
ロアン君達はそれぞれ報酬が入っているらしい革袋を大事そうに抱えていた。
「報酬貰えて助かりました!」
ロアン君が言うと、ローレ嬢とデヴィン君も嬉しそうに頷いた。
「今度は緊急用の分は実家に送らないで残しておこうと思って。」
「え、全部緊急用で良いんじゃない?」
「でも、護衛している時あまりジャラジャラさせていると‥‥。狙われたりしそうで‥‥。」
「小金貨とかならそうジャラジャラしないんじゃなにの?」
「え?」
ローレ嬢が慌てて、持っていた革袋の中を覗き込んだ。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
赤いりんごは虫食いりんご 〜りんごが堕ちるのは木のすぐ下〜
くびのほきょう
恋愛
10歳になった伯爵令嬢のオリーブは、前世で飼っていた猫と同じ白猫を見かけて思わず追いかけた。白猫に導かれ迷い込んだ庭園の奥でオリーブが見たのは、母とオリーブを毒殺する計画を相談している父と侍女ジョナの二人。
オリーブは父の裏切りに傷つきながらも、3日前に倒れベッドから出れなくなっていた母を救うのだと決意する。
幼馴染ラルフの手を借りて母の実家へ助けを求めたことで両親は離婚し、母とオリーブは無事母の実家へ戻った。
15歳になりオリーブは学園へ入学する。学園には、父と再婚した元侍女ジョナの娘で異母妹にあたるマールム、久しぶりに再会したオリーブにだけ意地悪な幼馴染のラルフ、偶然がきっかけでよく話をするようになった王弟殿下のカイル、自身と同じ日本からの転生者で第一王子殿下の婚約者の公爵令嬢フレイアなどがいた。仲良くなったフレイアから「この世界は前世に遊んだ乙女ゲームとそっくりで、その乙女ゲーム上では庶子から伯爵令嬢となったマールムがヒロインで、カイルとラルフはマールムの攻略対象だった」と言われたオリーブは、密かに好意を持っていたカイルとマールムが仲良く笑い合っている姿を目撃した。
これは、本来なら乙女ゲーム開始前に死んでいたはずのヒロインの異母姉オリーブが、自身が死ななかったことで崩れてしまった乙女ゲームのシナリオ上を生きる物語です。
※倫理観がなかったり、思いやりやモラルがない屑な登場人物が沢山います。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
身代わりの人質花嫁は敵国の王弟から愛を知る
夕香里
恋愛
不義の子としてこれまで虐げられてきたエヴェリ。
戦争回避のため、異母妹シェイラの身代わりとして自国では野蛮な国と呼ばれていた敵国の王弟セルゲイに嫁ぐことになった。
身代わりが露見しないよう、ひっそり大人しく暮らそうと決意していたのだが……。
「君を愛することはない」と初日に宣言し、これまで無関心だった夫がとある出来事によって何故か積極的に迫って来て──?
優しい夫を騙していると心苦しくなりつつも、セルゲイに甘やかされて徐々に惹かれていくエヴェリが敵国で幸せになる話。
平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。
なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。
そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。
そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。
クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。
自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません
月野槐樹
ファンタジー
家族と一緒に初めて王都にやってきたソーマは、王都の光景に既視感を覚えた。自分が作ったゲームの世界に似ていると感じて、異世界に転生した事に気がつく。
自作ゲームの中で作った猫執事キャラのプティと再会。
やっぱり自作ゲームの世界かと思ったけど、なぜか全く作った覚えがない乙女ゲームのような展開が発生。
何がどうなっているか分からないまま、ソーマは、結構マイペースに、今日も魔道具制作を楽しむのであった。
第1章完結しました。
第2章スタートしています。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる