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第3章

第273話 雪壁上の戦い

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「芋はないからこれでいきましょう。」
「芋?」

ロトヴィックさんが、不思議そうな顔をいた。あ、ジョセフィンがちょっと冷めた目で見てる。
ユリウスの影響ってわけじゃないぞ。アイスリザードに焼き芋が有効なのは、氷系の魔獣が温度が高いものに反応するからなので、アイスワームも同じ作戦が有効だって思うんだよね。
逆に、火槍の時みたいに手元で熱の有るものを生じさせると狙われてしまうけど。

灯火の魔法陣玉を一度開いて、中の魔法陣を見せた。
そしてそれを、もう一度丸めて振りかぶり、魔力を込めて高く放り投げた。

魔法陣玉は高くまで飛び,落下し始めたところで燃え上がった。

「ギュォォ!」

アイスワームが即座に反応して口を大きく開いた。魔法陣玉が落下を始めるまでに構えていた魔弓で矢を放つ。
アイスワームが吹き出した氷の礫が魔法陣玉を吹き飛ばし、燃え上がった炎は一瞬で消えたが、同時にアイスワームの口の中に風魔法で強化した矢が突き刺さった。

「ギュアアアアア!」

アイスワームが怒って敵を捜すように首を動かした。その時には既に、ジョセフィンが第2段の魔法陣玉を放り投げていた。
空中で燃えあがった魔法陣玉にアイスワームが反応して、標的を魔法陣玉の炎に移した。

「ほう!」
ロトヴィックさんは、アイスワームが魔法陣玉の炎の方に顔を向けたところを狙って、火の矢を放った。火槍より炎は小さいが速い。

「ギュア!」
火の矢を口の端に受けて、アイスワームが雄叫びを上げた。
動きが止まったところをねらって、魔弓で矢を放つ。矢がアイスワームの左の眼に命中した。

「よし。」
俺は、手持ちの魔法陣玉が入った革袋を、ジョセフィンに差し出した。
ロンウェルさん達がジョセフィンに近付いてきて、魔法陣玉を受け取っていた。イーモ作戦(?)に協力してくれるらしい。

炎系の魔法陣玉を投げる事で、標的がこちらから逸れるのと、攻撃しようとして口を開けるし、動きも一瞬止まる。
後は、アイスワームが隙を見せたところに、強力な魔法等の攻撃を仕掛ける。

ロンウェルさん達は、矢の先に魔法陣をくくり付けて、矢を高く飛ばす作戦に出た。魔力を通して手際よく矢を放っている。
囮の魔法陣玉をロンウェルさん達に任せたのでジョセフィンは弩砲を撃ち始めた。
ロトヴィックさんの仲間の冒険者や騎士達の何人かも壁の上に上って攻撃を始めている。

炎系の魔法陣玉で翻弄しながら、眼や口等に容赦なく集中砲火を浴びせているとようやくアイスワームの動きが弱々しくなって来て
火炎の魔法陣玉が飛んで来ても、少し反応を示す程度で攻撃を仕掛けなくなってきた。

「よし!デカイの行くぜ。」

ロトヴィックさんがそう言って、今までより強めに魔力を集め始めた。念の為、風の障壁を強化する。
頭上に特大の火の槍が出来上がった。アイスワームが唸って口を開き攻撃の動作を始めたが動きが鈍い。
氷の礫を吐き出す前に火槍がアイスワームの口に叩き込まれた。

俺も矢を三本重ねて、魔力を強めに込めて撃ち込む。同時にジョセフィンの弩砲も火を吹いた。

ズシーン!
アイスワームが頭を雪の上に横たえた。まだビクピク動いている。

「トドメだ!」
ロトヴィックさんが背中に背負っていた大剣を手に、雪の壁の上から飛び降り、アイスワームの胴体の上を駆け上がって、
ジャンプしてから落下しながらアイスワームの目に大剣を突き立てた。

ボフ!

炎の魔法を付与していたのか大剣を突き立てられたアイスワームの目から火が噴き出し煙が上がった。
アイスワームが完全に動きを止めるまで、皆で固唾を飲んでその光景を見つめていた。

そして、最後にロトヴィックさんが大剣を引き抜いて、剣を振り上げたたところで歓声があがった。
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