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第3章

第250話 イーモ再び

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明け方魔鳥に偵察をさせたときは、アイスワームが居る付近を中心に飛ばせていて、北方面の街道とかは見ていなかった。
街道で馬車が雪に埋もれていたりすると厄介だ。
凍死の心配もあるし、アイスワーム討伐に駆けつけてくれるはずの騎士団が通れなくなる可能性もある。

気になって、朝食後に街道方面に魔鳥を飛ばしてみた。
何か見つけた時に知らせてもらうようにしたら、主街道に合流する手前くらいで馬車が数台雪に嵌っていた。
馬車から降りて、徒歩で街に向かっている人影も見える。街に助けを求めに行くところだろうか。

「‥‥一応、知らせておくか‥‥。」

雪に嵌っている場所が街の外だと、救援要請がない限り、街から救援部隊を出動させないかもしれない。
しかし、早めに動いていないと、騎士団の到着にも影響しそうだ。


「馬車が立ち往生、ですか‥‥。」

商業ギルドに情報を伝えに行った。宿を出た時間には、まだ雪かきが済んでいない場所多かったが、雪履きを履いて、どうしても通りにくい場所だけ
魔法で雪を除けて行った。
朝早くから商業ギルドの窓口は開いていた。窓口は空いていたが、フロアはそこで夜を明かした雰囲気の人達が沢山いた。宿にも止まれなかった人達を受け入れていたようだ。

「ええ。そのうち、馬車から救援を求めに出た人が来るとは思うのですが、街道を塞いでしまっている状況は他に影響が出そうなのでお知らせに来ました。」
「然様でしたか。お知らせ下さりありがとうございます。
現在、ギルド所属の除雪魔導士は、討伐隊に協力する為に南門からの道を除雪に出ています。戻り次第対応いたします。」
「冒険者ギルドの討伐隊に、商業ギルド所属の除雪魔導士が同行しているんですか?」
「いいえ、南門から出て主街道と繋がる砦門までの間の道だけです。
砦門から先は、戦闘になる可能性があるので、そちらは冒険者ギルドで対応してもらいます。」

アイスリザードが街道に入り込んだ箇所を討伐に進むにも、除雪が必要だ。戦闘に同行する除雪魔導士の魔力の節約の為に、
戦闘がない一部の道の除雪を、商業ギルドで分担をしたようだ。

「東門側の救援の対応は南門対応の後にしていただけるということですね。」
「はい。そろそろ戻ってくる頃かと思います。」

商業ギルドの職員との話はスムーズに進み、街道近辺の除雪に向かってもらえそうだった。話が終わりかけていた頃に、商業ギルドのホールにドルートルさんが入って来たのが
見えた。人の気配がしたので振り向いたら目が合ったのだ。
挨拶をして、状況を説明した。

「ほう。街道を塞いでしまっているのはまずいですな。うちで契約している除雪魔導士に応援を依頼しましょうか。」
「よろしいんですか?」

ドルートルさんが商業旅団と契約中の除雪魔導士に協力を依頼すると申し出てくれた。段取りなどは、商業ギルド側と商業旅団で勧めてくれるようだ。
それでは、とお任せして商業ギルドを後にすることにしたのだが、
ユリウスがホール内の掲示板を熱心に見ていたので声を駆けた。

街の通りの様子が気になるという事で、俺とジョセフィンの他、マーギットさん、ユリウス、デリックさん、トマソンも同行していたのだ。
昨日と違って、商業ギルド内が空いていたので、俺がギルド職員と話をしている間、ホールの中を見て回っていたようだ。

「芋の買い取り価格が出ているでござるが、販売価格は出ていないでござるかな?」

何か興味深いものがあったのかと聞いてみようと近付いたら、ユリウスが振り向いて言った。

「芋を買いたいの?販売の場合は、値段交渉で決まるから価格は書かないものだよ。買い取りも,品の状態によるから最低価格しか書かれていないけどね。」
「芋が安かったら、冒険者ギルドに居た彼らに配ろうと思ったでござる。」
「優しいなぁ。」
「これだけ雪が降ったら寒いでござろう?差し入れでござる!」

ユリウスはそう言うと懐から布の包みを出した。銀貨が三枚包まれている。

「足りるでござるかなぁ。」

これまでの旅程の費用分で少し余剰が出た金額だそうだ。
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