233 / 324
第3章
第232話 受付嬢の見解
しおりを挟む
「なんだとぅ?お前達がワームを見た何て言うから、この忙しいのに魔鷹まで飛ばしてやったんじゃないか。まだ話があるっていうのか。ならさっさと話せよ。」
「‥‥。」
マーギットさんはスッと右眼を片手で覆った。手で覆った辺りから一瞬だけ妙な波動の魔力が漏れ出た。マーギットさんがスーッと呼吸を大きく息を吸ったら魔力の波動が治まった様に感じた。その動作で何かをしたのか、単に落ち着くためにやったのかは不明だ。
「本当にアイスワームが出た場合の対応はどうなるであるか?警鐘を鳴らして街の人を避難させるであるか?」
「あぁ?そんなのワームを確認してみねぇとわからんだろう。大きさや脅威度を確認してからだ。」
「住民や旅人に知らせないであるか? 避難経路は決まっているであるか?」
「はああ? 何ごちゃごちゃ訳分からないこと言ってんだよ!冒険者はなぁ、魔獣を倒すのが仕事なんだよぅ。住民の避難?そんなのは、領主様とかが考える事だろうがぁ。」
「成る程‥‥で、領主への連絡はするであるか?」
「知るか。こんな辺鄙な田舎町に領主様が関心を寄せるわけねぇだろうが!」
「ほう。では、魔獣溢れが出たときはどうしていたであるか?」
「うるっせえな、おめえ!階級はなんだ!降格させるぞ!」
ギルドマスターの白髪まじりの髪がぶわっと膨らんだ。眼をぎょろっと剥き、噛み付きそうな勢いでマーギットさんに向かって怒鳴っている。
うーん‥‥。この人って本当にギルドマスターなんだろうか。もしかして「ギルド・マスター」さんって名前なんじゃないだろうか。
苛つく気持ちより、この人に時間くっているのがもったいないような気がしたので、マーギットさんの腕を掴んで「出ましょう」と伝えた。
「次行く所あるんでもう行きましょう。‥‥お時間いただきありがとうございました!」
「おっ‥‥。」
まだ何か言いかけていたギルドマスターの横を通り抜けて、応接室を出た。
受付には、フレイヤさんがまだ座っていたので、声をかけた。
「フレイヤさん、マスターさんに取り次いでいただきありがとうございました。」
「ああ‥‥、ちょっと‥‥。」
フレイヤさんが周囲をちらりと見回してから俺達に小さく手招きをした。
「大丈夫だった?」
「大丈夫とは?」
「‥‥ちょっとアレだったでしょ。」
「アレ‥‥でしたね。」
「やっぱり‥‥。今日は副ギルド長が不在だからどうかと思って。」
あのギルドマスターは、先々月赴任して来たばかりで、普段は勤続年数が長い副ギルドマスターがフォローをしているらしい。
しかしアイスリザードが出没している件で今朝は副ギルドマスターも冒険者と一緒に調査に出ているのだそうだ。
「あ、まともな人も居るんですか‥‥。あ、失礼。」
「そう思うわよね!‥‥あ‥‥、コホン‥‥。」
ギルドマスターが勢い良く応接室の扉を開けて出て来た。ジロリとこちらを睨んで来た。フレイヤさんは、少しわざとらしく声を張り上げた。
「依頼を受けていかれますかー?掲示されている依頼以外にも常設依頼などございますよーー。」
若干棒読みで案内を始めたフレイヤさんに、ギルドマスターがイライラした声で怒鳴る様に言う。
「フレイヤ、そんなチャラチャラした若造達には、力仕事なんて無理だぞ。薬師の手伝いでも案内してやれよ!」
「まぁー、薬師の手伝いですかー、常設依頼にあったかしらー。」
フレイヤさんは返事をしながら適当にファイルをめくっていく。
「フン!」
ギルドマスターは不機嫌そうに足音を立てながら、奥に入って行った。奥の通路の先に部屋があるのか遠くで勢い良く扉が閉まる音がした。
フレイヤさんが小さく肩を竦めた。
「ギルドマスターは、領主様のご親戚の知り合いのお兄様の奥様の従兄弟だとかで、貴族家出身の方らしいんですよ。」
「え?知り合いって時点で親戚ですらないのでは。」
「コホン‥‥。」
フレイヤさんが咳払いをしてチラリとギルド奥に視線を動かした。口の前に人差し指を持って来る。
先程より声を顰めて言った。
「前のギルドマスターが、怪我が原因で休養に入られたの。その後、領主様のご親戚だか?経由で、今のギルドマスターが赴任されたのよ。」
「そ、そうでしたか。」
「‥‥。」
マーギットさんはスッと右眼を片手で覆った。手で覆った辺りから一瞬だけ妙な波動の魔力が漏れ出た。マーギットさんがスーッと呼吸を大きく息を吸ったら魔力の波動が治まった様に感じた。その動作で何かをしたのか、単に落ち着くためにやったのかは不明だ。
「本当にアイスワームが出た場合の対応はどうなるであるか?警鐘を鳴らして街の人を避難させるであるか?」
「あぁ?そんなのワームを確認してみねぇとわからんだろう。大きさや脅威度を確認してからだ。」
「住民や旅人に知らせないであるか? 避難経路は決まっているであるか?」
「はああ? 何ごちゃごちゃ訳分からないこと言ってんだよ!冒険者はなぁ、魔獣を倒すのが仕事なんだよぅ。住民の避難?そんなのは、領主様とかが考える事だろうがぁ。」
「成る程‥‥で、領主への連絡はするであるか?」
「知るか。こんな辺鄙な田舎町に領主様が関心を寄せるわけねぇだろうが!」
「ほう。では、魔獣溢れが出たときはどうしていたであるか?」
「うるっせえな、おめえ!階級はなんだ!降格させるぞ!」
ギルドマスターの白髪まじりの髪がぶわっと膨らんだ。眼をぎょろっと剥き、噛み付きそうな勢いでマーギットさんに向かって怒鳴っている。
うーん‥‥。この人って本当にギルドマスターなんだろうか。もしかして「ギルド・マスター」さんって名前なんじゃないだろうか。
苛つく気持ちより、この人に時間くっているのがもったいないような気がしたので、マーギットさんの腕を掴んで「出ましょう」と伝えた。
「次行く所あるんでもう行きましょう。‥‥お時間いただきありがとうございました!」
「おっ‥‥。」
まだ何か言いかけていたギルドマスターの横を通り抜けて、応接室を出た。
受付には、フレイヤさんがまだ座っていたので、声をかけた。
「フレイヤさん、マスターさんに取り次いでいただきありがとうございました。」
「ああ‥‥、ちょっと‥‥。」
フレイヤさんが周囲をちらりと見回してから俺達に小さく手招きをした。
「大丈夫だった?」
「大丈夫とは?」
「‥‥ちょっとアレだったでしょ。」
「アレ‥‥でしたね。」
「やっぱり‥‥。今日は副ギルド長が不在だからどうかと思って。」
あのギルドマスターは、先々月赴任して来たばかりで、普段は勤続年数が長い副ギルドマスターがフォローをしているらしい。
しかしアイスリザードが出没している件で今朝は副ギルドマスターも冒険者と一緒に調査に出ているのだそうだ。
「あ、まともな人も居るんですか‥‥。あ、失礼。」
「そう思うわよね!‥‥あ‥‥、コホン‥‥。」
ギルドマスターが勢い良く応接室の扉を開けて出て来た。ジロリとこちらを睨んで来た。フレイヤさんは、少しわざとらしく声を張り上げた。
「依頼を受けていかれますかー?掲示されている依頼以外にも常設依頼などございますよーー。」
若干棒読みで案内を始めたフレイヤさんに、ギルドマスターがイライラした声で怒鳴る様に言う。
「フレイヤ、そんなチャラチャラした若造達には、力仕事なんて無理だぞ。薬師の手伝いでも案内してやれよ!」
「まぁー、薬師の手伝いですかー、常設依頼にあったかしらー。」
フレイヤさんは返事をしながら適当にファイルをめくっていく。
「フン!」
ギルドマスターは不機嫌そうに足音を立てながら、奥に入って行った。奥の通路の先に部屋があるのか遠くで勢い良く扉が閉まる音がした。
フレイヤさんが小さく肩を竦めた。
「ギルドマスターは、領主様のご親戚の知り合いのお兄様の奥様の従兄弟だとかで、貴族家出身の方らしいんですよ。」
「え?知り合いって時点で親戚ですらないのでは。」
「コホン‥‥。」
フレイヤさんが咳払いをしてチラリとギルド奥に視線を動かした。口の前に人差し指を持って来る。
先程より声を顰めて言った。
「前のギルドマスターが、怪我が原因で休養に入られたの。その後、領主様のご親戚だか?経由で、今のギルドマスターが赴任されたのよ。」
「そ、そうでしたか。」
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです
かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。
そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。
とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする?
パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。
そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。
目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。
とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜
はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。
目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。
家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。
この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。
「人違いじゃないかー!」
……奏の叫びももう神には届かない。
家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。
戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。
植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する
山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。
やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。
人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。
当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。
脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる