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第3章

第232話 受付嬢の見解

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「なんだとぅ?お前達がワームを見た何て言うから、この忙しいのに魔鷹まで飛ばしてやったんじゃないか。まだ話があるっていうのか。ならさっさと話せよ。」
「‥‥。」

マーギットさんはスッと右眼を片手で覆った。手で覆った辺りから一瞬だけ妙な波動の魔力が漏れ出た。マーギットさんがスーッと呼吸を大きく息を吸ったら魔力の波動が治まった様に感じた。その動作で何かをしたのか、単に落ち着くためにやったのかは不明だ。

「本当にアイスワームが出た場合の対応はどうなるであるか?警鐘を鳴らして街の人を避難させるであるか?」
「あぁ?そんなのワームを確認してみねぇとわからんだろう。大きさや脅威度を確認してからだ。」
「住民や旅人に知らせないであるか? 避難経路は決まっているであるか?」
「はああ? 何ごちゃごちゃ訳分からないこと言ってんだよ!冒険者はなぁ、魔獣を倒すのが仕事なんだよぅ。住民の避難?そんなのは、領主様とかが考える事だろうがぁ。」
「成る程‥‥で、領主への連絡はするであるか?」
「知るか。こんな辺鄙な田舎町に領主様が関心を寄せるわけねぇだろうが!」
「ほう。では、魔獣溢れが出たときはどうしていたであるか?」
「うるっせえな、おめえ!階級はなんだ!降格させるぞ!」

ギルドマスターの白髪まじりの髪がぶわっと膨らんだ。眼をぎょろっと剥き、噛み付きそうな勢いでマーギットさんに向かって怒鳴っている。

うーん‥‥。この人って本当にギルドマスターなんだろうか。もしかして「ギルド・マスター」さんって名前なんじゃないだろうか。
苛つく気持ちより、この人に時間くっているのがもったいないような気がしたので、マーギットさんの腕を掴んで「出ましょう」と伝えた。

「次行く所あるんでもう行きましょう。‥‥お時間いただきありがとうございました!」
「おっ‥‥。」

まだ何か言いかけていたギルドマスターの横を通り抜けて、応接室を出た。
受付には、フレイヤさんがまだ座っていたので、声をかけた。

「フレイヤさん、マスターさんに取り次いでいただきありがとうございました。」
「ああ‥‥、ちょっと‥‥。」

フレイヤさんが周囲をちらりと見回してから俺達に小さく手招きをした。

「大丈夫だった?」
「大丈夫とは?」
「‥‥ちょっとアレだったでしょ。」
「アレ‥‥でしたね。」

「やっぱり‥‥。今日は副ギルド長が不在だからどうかと思って。」
あのギルドマスターは、先々月赴任して来たばかりで、普段は勤続年数が長い副ギルドマスターがフォローをしているらしい。

しかしアイスリザードが出没している件で今朝は副ギルドマスターも冒険者と一緒に調査に出ているのだそうだ。

「あ、まともな人も居るんですか‥‥。あ、失礼。」
「そう思うわよね!‥‥あ‥‥、コホン‥‥。」

ギルドマスターが勢い良く応接室の扉を開けて出て来た。ジロリとこちらを睨んで来た。フレイヤさんは、少しわざとらしく声を張り上げた。

「依頼を受けていかれますかー?掲示されている依頼以外にも常設依頼などございますよーー。」

若干棒読みで案内を始めたフレイヤさんに、ギルドマスターがイライラした声で怒鳴る様に言う。

「フレイヤ、そんなチャラチャラした若造達には、力仕事なんて無理だぞ。薬師の手伝いでも案内してやれよ!」
「まぁー、薬師の手伝いですかー、常設依頼にあったかしらー。」

フレイヤさんは返事をしながら適当にファイルをめくっていく。

「フン!」

ギルドマスターは不機嫌そうに足音を立てながら、奥に入って行った。奥の通路の先に部屋があるのか遠くで勢い良く扉が閉まる音がした。
フレイヤさんが小さく肩を竦めた。

「ギルドマスターは、領主様のご親戚の知り合いのお兄様の奥様の従兄弟だとかで、貴族家出身の方らしいんですよ。」
「え?知り合いって時点で親戚ですらないのでは。」
「コホン‥‥。」

フレイヤさんが咳払いをしてチラリとギルド奥に視線を動かした。口の前に人差し指を持って来る。
先程より声を顰めて言った。

「前のギルドマスターが、怪我が原因で休養に入られたの。その後、領主様のご親戚だか?経由で、今のギルドマスターが赴任されたのよ。」
「そ、そうでしたか。」
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