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第3章

第229話 早朝の偵察

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明け方、まだ朝食の時間まで余裕があるので、魔鳥を偵察に飛ばした。
ラドロ達がアイスリザードと戦っていた辺りを飛ぶように指示して、何か見つけたら知らせてもらうようにした。

すると思ったより早いタイミングで、魔鳥からお知らせがあった。
感覚共有すると、昨日の地点よりずっと手前にアイスリザードの姿が見えた。

アイスリザードの姿を確認した地点から,少し上空に上がって位置を確認すると、ラロド達が戦っていた地点と街の中間の位置くらいまでアイスリザードが来ていることがわかった。

念の為にアイスリザードの侵入避けのために街道を塞いであるはずの雪の壁が健在か確認に戻る。
雪の壁は崩れたりはしていなかった。街道の両脇にそびえている雪の壁よりは薄いが簡単には壊されないだろう。

街道をもう一度辿って行くと,別の分岐の道の先に門があった。門で塞がれた先が街に繋がっている。ラドロ達冒険者が討伐に出る時に使用している道のようだ。
門に続く分岐点からも、アイスリザードの位置はかなり離れているから慌てる事はない。
再びアイスリザードが居た地点まで戻ってその先に進んだ。
アイスリザードの姿が何体も確認できた。どこから来るのだろう。アイスリザードが来た方角に飛んでみた。

川が見えた。川にかかっている橋に近付くにつれてアイスリザードの数が増していた。
そして橋の手前で、思わぬ光景を見て愕然として思わず感覚共有を中断した。

「やばい。何だアレ。」
「どうしたんですか?」

俺の言葉に少し驚きながらジョセフィンが暖かいおしぼりを差し出して来た。視覚の感覚共有をすると目の辺りに魔力が集まって疲れるから、おしぼりを目に当てて目を休ませる。

ジョセフィンに伝えた。

「橋の手前に、雪の壁の上に上れるようなスロープができていた。
アイスリザードがスロープを上って、街道内に入ってきてるんだ。」
「え?」

冒険者達が偵察に行っても、アイスリザードが入り込む場面に遭遇しない限りは、雪の壁に穴が開いているわけではないし、街道の内側からは見えないだろう。
雪の壁はアイスリザードが上れないくらいの高さはあるのだが、どうぞお上り下さいとばかりに、スロープが存在していた。アイスリザードはスロープを伝って
雪の壁の上に上った後、街道側に落ちる。落ちた瞬間は暫く動きを止めているけど、たいしたダメージがないのか、時間が経ったらモゾモゾと動き始めていた。

「雪の壁にはしごがかかっているようなものですか‥‥。」
「なんでそんな物が出来ているのかがわからないが、なんとかしないと‥‥。」

激しい炎を発する魔法陣玉を別の魔鳥に持たせて、飛ばした。上空から魔法陣玉を落とさせるのだ。

雪の壁の上部にさしかかっている辺りを重点的に何度か魔法陣玉を落としたら、スロープが抉れて、アイスリザードがすぐには上れない状態になった。
炎を嫌がって、アイスリザードが散って行く。散って行くのだが、雪の壁の向こう側にアイスリザードがうようよしている。

「川から来るのか‥‥。」

橋より川の少し上流付近に大きな岩があって、川を下って来たアイスリザードが岩にぶつかって岸側に寄ってきて岸に上がっているようだ。
岩を破壊したい衝動に駆られるが、遠隔では難しい。他にスロープが出来ている所がないかをまずは確認しておこう。

今まで、街道の内側に注目して見ていて、雪の壁の外側の状況に注目していなかった。
アイスリザードが多そうな川の上流側を雪の壁に沿って見て行くと、段差があるような箇所にスロープが出来かけている箇所が何カ所かあった。
そしてある箇所でアイスリザードが、押し寄せる様にスロープを上って行く光景が見えた。
動きの遅いアイスリザードにしては、かなり速い動きだ。だが、スロープの上部はまだ雪の壁の上まで達していなかった。雪の壁に阻まれてアイスリザード達が蠢いている。

状況を観察していた魔鳥が何かを感知したらしい。上空に一気に上がった。その下を何か強い魔力が通り抜けた。

攻撃を受けた?

高度を維持しながら、旋回すると魔鳥の居る位置よりかなり下の方を氷の礫のような物が飛んで行った。飛んできた方角を見ると、雪の中を何かが蠢いていたようだった。
よく見えなかったが近付くのは危険そうだ。

上空を飛びながら、魔鳥が足で掴んでいた魔法陣玉に魔力を通してポトンと落とすように指示する。
魔法陣玉が雪の上に落ちるか落ちないか位のタイミングで、炎を吹き上げた。その瞬間、雪の中から勢い良く何かが顔を出して、魔法陣玉から吹き出た炎に氷の礫を浴びせかけた。
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