上 下
228 / 324
第3章

第227話 備え

しおりを挟む
解決の目処が立たない場合は少し王都方面に引き返してから迂回することになるかもしれない。俺達の目的地は商業旅団と同じツヴァンだからまだ良いけど、
魔導科クラスの彼らは、途中で乗り換えて行く予定だったはずだ。
迂回した場合、かなり遠回りになる可能性がある。
出来れば原因を解消して、通行止めを解除したい所だ。

ラドロ達は討伐で疲れているであろうということで、少し話しをしてから解散した。去り際にマーギットさんが、クリーン魔法を使おうか?と進言した。
ちょうど俺達も4人いたのでそれぞれ一人一回ずつクリーン魔法を使えば、インターバルも必要ないのだ。

お礼を行って来たラドロの様子だと、ラドロもクリーン魔法を覚えていなさそうだった。
ロビーでクリーン魔法を使ったので、他のロビー泊の客から金を払うのでクリーン魔法をかけてくれないかと打診されてしまった。
宿の営業妨害になるかもしれないので宿に相談してくると告げて、宿の受付にはクリーン魔法の希望者が多い事を伝えておいた。

宿には清掃業務もあるし、宿の従業員の大半はクリーン魔法を普段から多用しているはずだ。臨時のサービスで、収益を得るチャンスだろう。
受付のカウンターの所にいた、従業員達の目がキラリと光った。
早速、数人の従業員で料金の相談を始めていた。

部屋に戻りながらマーギットさんが、チラリと後方を振り返った。

「彼らへのクリーン魔法も宿に任せるべきであったかな。」
「いえ、サービス開始前だったし問題ないでしょう。商売したわけじゃないですし。」

意外とクリーン魔法の需要が高い事が判った。インターバルの有無だけではなく、クリーン魔法自体を覚えていない人が結構いるみたいだ。

「しかし‥‥、明日出発出来ない可能性が高そうであるな。次の馬車隊が到着したら、更に混雑するのではないか?」
「既に宿も一杯だというのにな。」

マーギットさんとデリックさんが難しそうな顔をした。

「我々用に確保してくれた宿は延泊が可能ということであったが、このまま足止め客が増えて行ったら宿に泊まれない人で街が溢れかえるであるぞ。」
「夕方に王都方面行きの馬車が出てたから、通行止めの事も伝えてくれていると良いですけどね。」

商業ギルド辺りが通行止めの事を伝達していっているなら、後続の馬車隊は手前の街辺りに留まるのではないかと思うのだけどね。

そのまま各自の部屋に戻って解散の流れかと思ったら、マーギットさんが難しい顔をして相談してきた。

「アイスリザードが続々出て来たというのが気になるである。原因も判明していないであるし‥‥。」

今の所、街にまでアイスリザードの襲撃はないようだが、万一の為に、魔法陣玉を用意しておきたいというのだ。
発火の魔法陣の発動を遅延するように書き換える方法をマーギットさんとデリックさんにレクチャーする事になった。
まだそんなに遅い時間ではなかったのと、ユリウスとトマソンも部屋に戻って来ていたので、急遽、魔法陣教室を開催した。

明日までに魔法陣玉を用意するのが目的なので、まだ魔法陣を描き慣れないユリウスとトマソンは、書き換え方法の説明を一度受けた後は、
せっせと発火の魔法陣製作をして、マーギットさんとデリックさんが書き換えを担当した。

俺とジョセフィンはいくつか別の魔法陣を作成した。使う必要がない事を願うが、もっと激しい炎をだす魔法陣やら炎が民家に燃え移ったリしたときに消化する為の魔法陣やら。
取り扱い注意のものは、色の違う羊皮紙に書いておく。

「マルロイ氏達にも持たせたいでござる。いくつか渡しても良いでござるか?」
描き上がった魔法陣を箱の中に重ねながら、ユリウスが言った。

「良いんじゃない?‥‥彼らまで使う事態は避けたいけどさ。」
「確かに。使わないに越した事ないでござるなぁ。」

備えあれば憂いなし、とは言うけど、大量に作っていたら使用する場面を想像して返って心配になってしまったようだ。

マーギットさんが、ペンを魔法陣から離して顔を上げた。

「いざというときは、集まって行動していればよかろう。我もいる。心配はいらん。」
「でも‥‥。心配だから魔法陣玉を作っているのでござろう?」
「より安全を確保する為である。想像してみるがいいである。我が戦っている時に、もう一体現れたとする。我は集中して戦う事が出来なくなるである。
そういった時に、誰かが魔法陣玉を投げつけて相手が怯んだ隙にお前達が逃げてくれれば安心というものである。」
「それでは兄上が矢面で戦う想定になるでござる!そんな訳にはいかないでござる!拙者も戦うでござる!」

ユリウスは泣きそうな顔をして立ち上がった。
マーギットさんは目を細めてユリウスを見つめた。

「実戦経験がないユリウスが、前線に出て行ったら、返って邪魔になるであろう。ユリウスは友達を避難させることに注力する方が効率的であるぞ。」
「でも‥‥、それだと兄上が‥‥。」
「我も、危険と判断したら逃げるである。アイスリザードは足が遅いのであるから、あまり心配するでない。今言ったのはアイスリザードが二体出て来た場合どうするかというだけの話である。」

マーギットさんの言葉に、ユリウスはまだ納得していないのか不安そうな顔をしていた。デリックさんが、二人の顔を交互に見た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

赤いりんごは虫食いりんご 〜りんごが堕ちるのは木のすぐ下〜

くびのほきょう
恋愛
10歳になった伯爵令嬢のオリーブは、前世で飼っていた猫と同じ白猫を見かけて思わず追いかけた。白猫に導かれ迷い込んだ庭園の奥でオリーブが見たのは、母とオリーブを毒殺する計画を相談している父と侍女ジョナの二人。 オリーブは父の裏切りに傷つきながらも、3日前に倒れベッドから出れなくなっていた母を救うのだと決意する。 幼馴染ラルフの手を借りて母の実家へ助けを求めたことで両親は離婚し、母とオリーブは無事母の実家へ戻った。 15歳になりオリーブは学園へ入学する。学園には、父と再婚した元侍女ジョナの娘で異母妹にあたるマールム、久しぶりに再会したオリーブにだけ意地悪な幼馴染のラルフ、偶然がきっかけでよく話をするようになった王弟殿下のカイル、自身と同じ日本からの転生者で第一王子殿下の婚約者の公爵令嬢フレイアなどがいた。仲良くなったフレイアから「この世界は前世に遊んだ乙女ゲームとそっくりで、その乙女ゲーム上では庶子から伯爵令嬢となったマールムがヒロインで、カイルとラルフはマールムの攻略対象だった」と言われたオリーブは、密かに好意を持っていたカイルとマールムが仲良く笑い合っている姿を目撃した。 これは、本来なら乙女ゲーム開始前に死んでいたはずのヒロインの異母姉オリーブが、自身が死ななかったことで崩れてしまった乙女ゲームのシナリオ上を生きる物語です。 ※倫理観がなかったり、思いやりやモラルがない屑な登場人物が沢山います。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

身代わりの人質花嫁は敵国の王弟から愛を知る

夕香里
恋愛
不義の子としてこれまで虐げられてきたエヴェリ。 戦争回避のため、異母妹シェイラの身代わりとして自国では野蛮な国と呼ばれていた敵国の王弟セルゲイに嫁ぐことになった。 身代わりが露見しないよう、ひっそり大人しく暮らそうと決意していたのだが……。 「君を愛することはない」と初日に宣言し、これまで無関心だった夫がとある出来事によって何故か積極的に迫って来て──? 優しい夫を騙していると心苦しくなりつつも、セルゲイに甘やかされて徐々に惹かれていくエヴェリが敵国で幸せになる話。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹
ファンタジー
家族と一緒に初めて王都にやってきたソーマは、王都の光景に既視感を覚えた。自分が作ったゲームの世界に似ていると感じて、異世界に転生した事に気がつく。 自作ゲームの中で作った猫執事キャラのプティと再会。 やっぱり自作ゲームの世界かと思ったけど、なぜか全く作った覚えがない乙女ゲームのような展開が発生。 何がどうなっているか分からないまま、ソーマは、結構マイペースに、今日も魔道具制作を楽しむのであった。 第1章完結しました。 第2章スタートしています。

死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く

miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。 ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。 断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。 ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。 更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。 平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。 しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。 それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね? だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう? ※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。 ※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……) ※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。

処理中です...