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第3章
第201話 内職三昧
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初回限定価格は終了したので、特別提供か書く魔法陣1枚で銀貨一枚という倍の値段にしたら在庫がなくなるまで売れた。
通常の魔法陣は1つ銀貨一枚では買えるものではないのだが、クリーンという初級魔法なのと、可能な限り使用する羊皮紙を小さくして、費用を削減したのだ。
そんなに日常に使うものならあまり高い価格設定にしたくはないのだが、下手するとクリーン魔法専用の魔法陣職人になりかねないので、特別提供価格ももう少ししたら終了すると伝えておいた。
「こちらはほどよい小遣い稼ぎとなるが、彼女達は旅行費用を使い切ってしまったりしないであるか。
だからといって,安くしすぎると、こちらがクリーン魔法陣漬けになってしまうであるが。」
「羊皮紙もなくなりそうだよね。価格は見直して状況によって割引とかにするか。」
「これだけ売れると知ったら、ユリウスが、必死になりそうであるな。」
「ツヴァンに付く前に描けるようになっていればよいですけど、それ以降でもちゃんと描けるようになったら認定出しますよ。」
「ふ。感謝する。我らも行商の旅になって来たである。さすが、商業旅団である。」
「はははっ。」
マーギットさんと笑いながら話をして馬車に戻ると、既にトイレ休憩から馬車に戻った後、お茶休憩をしていたトマソンとユリウスとデリックさんは、魔法陣の在庫がなくなる程売れたと聞いて驚愕していた。
「そ、それはうかうかしていられないでござる!一刻も早く魔法陣を作成できるようになるでござる!」
「うむ。俺も描く。」
「私も頑張るぞ。」
お茶を飲む手を止めて、魔法陣練習を再開しようとする三人を止める。
「ちょっと根詰めすぎだよ。ちゃんと休憩の時は休憩した方が良いよ。お茶飲んでゆったりしたり、外散歩して身体を動かしたり。」
「買い取る人がいるうちに完成させたいでござるよ!少しでも稼ぎたいでござる!」
「実家が困窮しているのに、働きに出て稼ぐ余裕がないのだ。少しでも稼げるならやりたいんだ。」
「うむ。他にも効率よく稼ぐ方法はあるだろうが、馬車に乗っている時間を有効活用できるなら、やっておきたいのだよ。」
ユリウスの実家もトマソンとデリックさんの実家も、魔獣被害で経済的に厳しい状況だから馬車に乗っている間に魔法陣の内職ができるというのは魅力的らしい。
クリーンの魔法陣はそう高額では売れないけど、上達していったら他の有用な魔法陣も描けるようになるだろう。
ある意味有意義な馬車旅なんだけど、クリーン魔法陣漬けはなあ‥‥。
ピーッピーッと出発を知らせる笛が鳴った。ぞろぞろと先頭の馬車から動き始めて、俺達が乗る馬車もゆっくりと動き出したと思ったら、車輪が石にでも乗っかったのかゴトンと馬車が揺れた。
「ああ!」
揺れで線がぶれてしまって哀しそうな顔をするユリウス。
「練習用の魔法陣なんだから続きを描いちゃえばいいんじゃない?」
「そうでござるが‥‥。ここまでは良い出来だったでござるよ‥‥。」
「描き慣れて来たってことじゃない?次はもっとすらすら描けるようになるんじゃないかな。」
「そうでござるかぁ?」
クリーン魔法陣漬けはちょっと、と思ったけど、宿泊予定の街に近付くまではほとんどする事はなかったので、魔法陣教室と、クリーン魔法陣の内職が続いた。
カランカラン。
馬車内に設置した小さい鐘が鳴り響いた。御者からの合図だ。もう少ししたら宿泊で滞在する街に到着する。
羽根ペンを置いてうーんと伸びをする。結局、馬車に乗っている間ずっと魔法陣を描いてしまっていた。
チラリと皆の様子を見ると、ジョセフィン以外は皆魔法陣を描いていた。ジョセフィンは手帳に何か記入していた。ふとジョセフィンが顔を上げて俺の方を見た。
「次の街はランガーヴェスタには、日暮れ前に着きますね。少し街を見て回れるかもしれません。」
「ああ、それはいいね。」
宿を取る予定の街には、日暮れ過ぎに到着する場合もある。日ガ暮れると開いている店は、食堂か居酒屋くらいになってしまう。
まだ明るい時間なら、他の店も開いている可能性があるのだ。冬季休業で閉まっていることもあるだろうけど。
「街歩きできるでござるか?」
ユリウスがパッと顔を上げた。
「日暮れまでの少しだけね。まあ、雪でほぼ動き回れないかもしれないけど。」
「少しでも良いでござる。朝の出発は早いでござるから、少しでも街の様子が見られるなら見たいでござる。」
ユリウスがそう言うと、トマソンが頷いた。
「うむ。別に買い物をしたい訳ではないが、街並くらいは見ておきたい。」
マーギットさんやデリックさんも街歩きんは賛成のようだった。
「じゃあ、宿にチェックイン後に少し外に出よう。暖かい格好しておいてね。」
通常の魔法陣は1つ銀貨一枚では買えるものではないのだが、クリーンという初級魔法なのと、可能な限り使用する羊皮紙を小さくして、費用を削減したのだ。
そんなに日常に使うものならあまり高い価格設定にしたくはないのだが、下手するとクリーン魔法専用の魔法陣職人になりかねないので、特別提供価格ももう少ししたら終了すると伝えておいた。
「こちらはほどよい小遣い稼ぎとなるが、彼女達は旅行費用を使い切ってしまったりしないであるか。
だからといって,安くしすぎると、こちらがクリーン魔法陣漬けになってしまうであるが。」
「羊皮紙もなくなりそうだよね。価格は見直して状況によって割引とかにするか。」
「これだけ売れると知ったら、ユリウスが、必死になりそうであるな。」
「ツヴァンに付く前に描けるようになっていればよいですけど、それ以降でもちゃんと描けるようになったら認定出しますよ。」
「ふ。感謝する。我らも行商の旅になって来たである。さすが、商業旅団である。」
「はははっ。」
マーギットさんと笑いながら話をして馬車に戻ると、既にトイレ休憩から馬車に戻った後、お茶休憩をしていたトマソンとユリウスとデリックさんは、魔法陣の在庫がなくなる程売れたと聞いて驚愕していた。
「そ、それはうかうかしていられないでござる!一刻も早く魔法陣を作成できるようになるでござる!」
「うむ。俺も描く。」
「私も頑張るぞ。」
お茶を飲む手を止めて、魔法陣練習を再開しようとする三人を止める。
「ちょっと根詰めすぎだよ。ちゃんと休憩の時は休憩した方が良いよ。お茶飲んでゆったりしたり、外散歩して身体を動かしたり。」
「買い取る人がいるうちに完成させたいでござるよ!少しでも稼ぎたいでござる!」
「実家が困窮しているのに、働きに出て稼ぐ余裕がないのだ。少しでも稼げるならやりたいんだ。」
「うむ。他にも効率よく稼ぐ方法はあるだろうが、馬車に乗っている時間を有効活用できるなら、やっておきたいのだよ。」
ユリウスの実家もトマソンとデリックさんの実家も、魔獣被害で経済的に厳しい状況だから馬車に乗っている間に魔法陣の内職ができるというのは魅力的らしい。
クリーンの魔法陣はそう高額では売れないけど、上達していったら他の有用な魔法陣も描けるようになるだろう。
ある意味有意義な馬車旅なんだけど、クリーン魔法陣漬けはなあ‥‥。
ピーッピーッと出発を知らせる笛が鳴った。ぞろぞろと先頭の馬車から動き始めて、俺達が乗る馬車もゆっくりと動き出したと思ったら、車輪が石にでも乗っかったのかゴトンと馬車が揺れた。
「ああ!」
揺れで線がぶれてしまって哀しそうな顔をするユリウス。
「練習用の魔法陣なんだから続きを描いちゃえばいいんじゃない?」
「そうでござるが‥‥。ここまでは良い出来だったでござるよ‥‥。」
「描き慣れて来たってことじゃない?次はもっとすらすら描けるようになるんじゃないかな。」
「そうでござるかぁ?」
クリーン魔法陣漬けはちょっと、と思ったけど、宿泊予定の街に近付くまではほとんどする事はなかったので、魔法陣教室と、クリーン魔法陣の内職が続いた。
カランカラン。
馬車内に設置した小さい鐘が鳴り響いた。御者からの合図だ。もう少ししたら宿泊で滞在する街に到着する。
羽根ペンを置いてうーんと伸びをする。結局、馬車に乗っている間ずっと魔法陣を描いてしまっていた。
チラリと皆の様子を見ると、ジョセフィン以外は皆魔法陣を描いていた。ジョセフィンは手帳に何か記入していた。ふとジョセフィンが顔を上げて俺の方を見た。
「次の街はランガーヴェスタには、日暮れ前に着きますね。少し街を見て回れるかもしれません。」
「ああ、それはいいね。」
宿を取る予定の街には、日暮れ過ぎに到着する場合もある。日ガ暮れると開いている店は、食堂か居酒屋くらいになってしまう。
まだ明るい時間なら、他の店も開いている可能性があるのだ。冬季休業で閉まっていることもあるだろうけど。
「街歩きできるでござるか?」
ユリウスがパッと顔を上げた。
「日暮れまでの少しだけね。まあ、雪でほぼ動き回れないかもしれないけど。」
「少しでも良いでござる。朝の出発は早いでござるから、少しでも街の様子が見られるなら見たいでござる。」
ユリウスがそう言うと、トマソンが頷いた。
「うむ。別に買い物をしたい訳ではないが、街並くらいは見ておきたい。」
マーギットさんやデリックさんも街歩きんは賛成のようだった。
「じゃあ、宿にチェックイン後に少し外に出よう。暖かい格好しておいてね。」
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