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第3章

第197話 緊急事態?

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「馬車隊の人数に対して食事処が不足してましたからね。屋台も出ていなかったし。
あの場所だったからこそですよ。除雪魔導士が雪の壁を作ってくれたのは、結果的にクグロフさんにとってはラッキーでしたね。」
「あの雪の壁も、まさか動かすとは驚いたである。」
「マーギットさんが溶かしてくれたんじゃないですか。皆で押したり引いたりしたし。」
「我も協力はしたが、雪の壁が動く先の地面を凍らせなければ成り立たなかったである。‥‥凍らすのも出来るのであるな。」

マーギットさんの目がキラリと光った。

ああ、氷雪魔法って除雪魔法と同じ系統だけど、使い手は少ないんだっけ。北の方の出身者に多いって聞いたけどな。でも全く居ないことはないはず。

「氷系の魔法持ちは北の方にはそこそこいるでしょう?さっきのは使用範囲小さかったですし。」
「瞬時に場所指定して使えるのが、見事なのである。‥‥魔導科に移籍してきて欲しいである。」
「俺は騎士科が気に入ってますからね。」

俺とマーギットさんのやり取りが耳に入ったのかユリウスが、キョロキョロと俺達を見比べて、口を開いた。

「兄上!マーカス氏は騎士科にいて欲しいでござるよ!」
「わかっているである。言ってみただけであるよ。最近魔導科の生徒の質が落ちていると言われているであるからなぁ。」
「それは拙者もちょっと思ったでござるが言わない様にしているでござる!マーカス氏の消音魔法とか、魔法制御の仕方がレベチでござる!
魔導科の学生でもそう居ないとおもうでござるが、魔導科の人の前では言えないでござる。」

ユリウスが興奮気味にそう言うと、マーギットさんが微妙な顔をした。

「ユリウス‥‥。我も一応魔導科なのであるが。」
「兄上は火魔法と土魔法が凄いのでござる。それに我が家系には封印が‥ふがっ」
「ユリウス。その件は無闇に言わないんだよ。」

マーギットさんは手にしていた芋をユリウスの口に突っ込んだ。うん‥‥、封印ってなんだろうな。

商業旅団の馬車隊はその後、夕方の宿泊予定の街に辿り着くまでの間に途中の小さな街2カ所に短い時間だけ立ち寄った。
乗降広場全体の除雪などはしない。依頼されていた積荷のやり取りをささっと行っている間に、他の乗員達はトイレ等を済ますのだ。
街の人も要領を得ているので、トイレを利用出来る場所の案内などをあちこちに出していた。
雪の中ではね‥‥、一歩間違うと遭難するからね。

ピーッと笛の音が鳴り響いた。もうすぐ出発という知らせだ。

「ま、ま、待って~!」

広場の真ん中の雪が積もっている所をズボズボと分け入って進む人影。魔導士の格好の二人。

「あれ、マルロイ氏とシン氏でござる!」

馬車の窓から外を覗いたユリウスが言った。確かに彼らのようだけど、時々雪に足を取られてすっ転びながら進んで行くのは一体どうしたんだろう。
乗降広場全体の除雪はしていないが、馬車の隊列がいる場所に沿って、迂回して行けば整備された場所を通れるようになっているのだ。
最短距離を行こうとして失敗したのかな。

「何かあったのかね。ジョス、一応鐘鳴らしておいて。」
「わかりました!」

ジョセフィンが馬車の端の壁に沿って延びていた紐を引っぱった。カーンと鐘の音が鳴り響いた。
非常時に鳴らす鐘だ。問題なしと確認がとれたら、鐘を三回鳴らすルールになっている。
非常時の鐘を鳴らすと、馬車隊も出発を待ってくれる。しかし待たせているから確認は早めの方が良い。

「見てくるでござる!」
「ユリウス、ちょっと待って。」

馬車を飛び出そうとするユリウスを一端引き止めた。腰に差していた短い杖を取り出して、広場の中央に線を引くように振った。途中マルロイ君達が居る場所は、一端止めて、温熱魔法を駆けてから
続きの線を引く。線を引いた場所の雪が分かれて、人一人がやっと通れる程に道ができた。

「もう通れるよ!」
「おお!感動でござる!」

ユリウスがピョンと馬車から飛び降りて出来あがった道を駆けていった。俺とジョセフィンも付いて行く。状況を聞きたいからね。
マルロイ君達は、広場の中央にさしかかった辺りで、急に出来上がった通り道に驚いてキョロキョロとしていた。

「マルロイ氏!シン氏!どうしたでござるか!」
「あ!ユリウス氏!マーカス氏、ジョス氏もきてくれたっぺ。」
「助かっただす!」

俺達の姿を見てマルロイ君とシン君はほっとした顔をした。
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