198 / 324
第3章
第197話 緊急事態?
しおりを挟む
「馬車隊の人数に対して食事処が不足してましたからね。屋台も出ていなかったし。
あの場所だったからこそですよ。除雪魔導士が雪の壁を作ってくれたのは、結果的にクグロフさんにとってはラッキーでしたね。」
「あの雪の壁も、まさか動かすとは驚いたである。」
「マーギットさんが溶かしてくれたんじゃないですか。皆で押したり引いたりしたし。」
「我も協力はしたが、雪の壁が動く先の地面を凍らせなければ成り立たなかったである。‥‥凍らすのも出来るのであるな。」
マーギットさんの目がキラリと光った。
ああ、氷雪魔法って除雪魔法と同じ系統だけど、使い手は少ないんだっけ。北の方の出身者に多いって聞いたけどな。でも全く居ないことはないはず。
「氷系の魔法持ちは北の方にはそこそこいるでしょう?さっきのは使用範囲小さかったですし。」
「瞬時に場所指定して使えるのが、見事なのである。‥‥魔導科に移籍してきて欲しいである。」
「俺は騎士科が気に入ってますからね。」
俺とマーギットさんのやり取りが耳に入ったのかユリウスが、キョロキョロと俺達を見比べて、口を開いた。
「兄上!マーカス氏は騎士科にいて欲しいでござるよ!」
「わかっているである。言ってみただけであるよ。最近魔導科の生徒の質が落ちていると言われているであるからなぁ。」
「それは拙者もちょっと思ったでござるが言わない様にしているでござる!マーカス氏の消音魔法とか、魔法制御の仕方がレベチでござる!
魔導科の学生でもそう居ないとおもうでござるが、魔導科の人の前では言えないでござる。」
ユリウスが興奮気味にそう言うと、マーギットさんが微妙な顔をした。
「ユリウス‥‥。我も一応魔導科なのであるが。」
「兄上は火魔法と土魔法が凄いのでござる。それに我が家系には封印が‥ふがっ」
「ユリウス。その件は無闇に言わないんだよ。」
マーギットさんは手にしていた芋をユリウスの口に突っ込んだ。うん‥‥、封印ってなんだろうな。
商業旅団の馬車隊はその後、夕方の宿泊予定の街に辿り着くまでの間に途中の小さな街2カ所に短い時間だけ立ち寄った。
乗降広場全体の除雪などはしない。依頼されていた積荷のやり取りをささっと行っている間に、他の乗員達はトイレ等を済ますのだ。
街の人も要領を得ているので、トイレを利用出来る場所の案内などをあちこちに出していた。
雪の中ではね‥‥、一歩間違うと遭難するからね。
ピーッと笛の音が鳴り響いた。もうすぐ出発という知らせだ。
「ま、ま、待って~!」
広場の真ん中の雪が積もっている所をズボズボと分け入って進む人影。魔導士の格好の二人。
「あれ、マルロイ氏とシン氏でござる!」
馬車の窓から外を覗いたユリウスが言った。確かに彼らのようだけど、時々雪に足を取られてすっ転びながら進んで行くのは一体どうしたんだろう。
乗降広場全体の除雪はしていないが、馬車の隊列がいる場所に沿って、迂回して行けば整備された場所を通れるようになっているのだ。
最短距離を行こうとして失敗したのかな。
「何かあったのかね。ジョス、一応鐘鳴らしておいて。」
「わかりました!」
ジョセフィンが馬車の端の壁に沿って延びていた紐を引っぱった。カーンと鐘の音が鳴り響いた。
非常時に鳴らす鐘だ。問題なしと確認がとれたら、鐘を三回鳴らすルールになっている。
非常時の鐘を鳴らすと、馬車隊も出発を待ってくれる。しかし待たせているから確認は早めの方が良い。
「見てくるでござる!」
「ユリウス、ちょっと待って。」
馬車を飛び出そうとするユリウスを一端引き止めた。腰に差していた短い杖を取り出して、広場の中央に線を引くように振った。途中マルロイ君達が居る場所は、一端止めて、温熱魔法を駆けてから
続きの線を引く。線を引いた場所の雪が分かれて、人一人がやっと通れる程に道ができた。
「もう通れるよ!」
「おお!感動でござる!」
ユリウスがピョンと馬車から飛び降りて出来あがった道を駆けていった。俺とジョセフィンも付いて行く。状況を聞きたいからね。
マルロイ君達は、広場の中央にさしかかった辺りで、急に出来上がった通り道に驚いてキョロキョロとしていた。
「マルロイ氏!シン氏!どうしたでござるか!」
「あ!ユリウス氏!マーカス氏、ジョス氏もきてくれたっぺ。」
「助かっただす!」
俺達の姿を見てマルロイ君とシン君はほっとした顔をした。
あの場所だったからこそですよ。除雪魔導士が雪の壁を作ってくれたのは、結果的にクグロフさんにとってはラッキーでしたね。」
「あの雪の壁も、まさか動かすとは驚いたである。」
「マーギットさんが溶かしてくれたんじゃないですか。皆で押したり引いたりしたし。」
「我も協力はしたが、雪の壁が動く先の地面を凍らせなければ成り立たなかったである。‥‥凍らすのも出来るのであるな。」
マーギットさんの目がキラリと光った。
ああ、氷雪魔法って除雪魔法と同じ系統だけど、使い手は少ないんだっけ。北の方の出身者に多いって聞いたけどな。でも全く居ないことはないはず。
「氷系の魔法持ちは北の方にはそこそこいるでしょう?さっきのは使用範囲小さかったですし。」
「瞬時に場所指定して使えるのが、見事なのである。‥‥魔導科に移籍してきて欲しいである。」
「俺は騎士科が気に入ってますからね。」
俺とマーギットさんのやり取りが耳に入ったのかユリウスが、キョロキョロと俺達を見比べて、口を開いた。
「兄上!マーカス氏は騎士科にいて欲しいでござるよ!」
「わかっているである。言ってみただけであるよ。最近魔導科の生徒の質が落ちていると言われているであるからなぁ。」
「それは拙者もちょっと思ったでござるが言わない様にしているでござる!マーカス氏の消音魔法とか、魔法制御の仕方がレベチでござる!
魔導科の学生でもそう居ないとおもうでござるが、魔導科の人の前では言えないでござる。」
ユリウスが興奮気味にそう言うと、マーギットさんが微妙な顔をした。
「ユリウス‥‥。我も一応魔導科なのであるが。」
「兄上は火魔法と土魔法が凄いのでござる。それに我が家系には封印が‥ふがっ」
「ユリウス。その件は無闇に言わないんだよ。」
マーギットさんは手にしていた芋をユリウスの口に突っ込んだ。うん‥‥、封印ってなんだろうな。
商業旅団の馬車隊はその後、夕方の宿泊予定の街に辿り着くまでの間に途中の小さな街2カ所に短い時間だけ立ち寄った。
乗降広場全体の除雪などはしない。依頼されていた積荷のやり取りをささっと行っている間に、他の乗員達はトイレ等を済ますのだ。
街の人も要領を得ているので、トイレを利用出来る場所の案内などをあちこちに出していた。
雪の中ではね‥‥、一歩間違うと遭難するからね。
ピーッと笛の音が鳴り響いた。もうすぐ出発という知らせだ。
「ま、ま、待って~!」
広場の真ん中の雪が積もっている所をズボズボと分け入って進む人影。魔導士の格好の二人。
「あれ、マルロイ氏とシン氏でござる!」
馬車の窓から外を覗いたユリウスが言った。確かに彼らのようだけど、時々雪に足を取られてすっ転びながら進んで行くのは一体どうしたんだろう。
乗降広場全体の除雪はしていないが、馬車の隊列がいる場所に沿って、迂回して行けば整備された場所を通れるようになっているのだ。
最短距離を行こうとして失敗したのかな。
「何かあったのかね。ジョス、一応鐘鳴らしておいて。」
「わかりました!」
ジョセフィンが馬車の端の壁に沿って延びていた紐を引っぱった。カーンと鐘の音が鳴り響いた。
非常時に鳴らす鐘だ。問題なしと確認がとれたら、鐘を三回鳴らすルールになっている。
非常時の鐘を鳴らすと、馬車隊も出発を待ってくれる。しかし待たせているから確認は早めの方が良い。
「見てくるでござる!」
「ユリウス、ちょっと待って。」
馬車を飛び出そうとするユリウスを一端引き止めた。腰に差していた短い杖を取り出して、広場の中央に線を引くように振った。途中マルロイ君達が居る場所は、一端止めて、温熱魔法を駆けてから
続きの線を引く。線を引いた場所の雪が分かれて、人一人がやっと通れる程に道ができた。
「もう通れるよ!」
「おお!感動でござる!」
ユリウスがピョンと馬車から飛び降りて出来あがった道を駆けていった。俺とジョセフィンも付いて行く。状況を聞きたいからね。
マルロイ君達は、広場の中央にさしかかった辺りで、急に出来上がった通り道に驚いてキョロキョロとしていた。
「マルロイ氏!シン氏!どうしたでござるか!」
「あ!ユリウス氏!マーカス氏、ジョス氏もきてくれたっぺ。」
「助かっただす!」
俺達の姿を見てマルロイ君とシン君はほっとした顔をした。
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
見捨てられた令嬢は、王宮でかえり咲く
堂夏千聖
ファンタジー
年の差のある夫に嫁がされ、捨て置かれていたエレオノーラ。
ある日、夫を尾行したところ、馬車の事故にあい、記憶喪失に。
記憶喪失のまま、隣国の王宮に引き取られることになったものの、だんだんと記憶が戻り、夫がいたことを思い出す。
幼かった少女が成長し、見向きもしてくれなかった夫に復讐したいと近づくが・・・?
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
始まりは最悪でも幸せとは出会えるものです
夢々(むむ)
ファンタジー
今世の家庭環境が最低最悪な前世の記憶持ちの少女ラフィリア。5歳になりこのままでは両親に売られ奴隷人生まっしぐらになってしまうっっ...との思いから必死で逃げた先で魔法使いのおじいさんに出会い、ほのぼのスローライフを手に入れる............予定☆(初投稿・ノープロット・気まぐれ更新です(*´ω`*))※思いつくままに書いているので途中書き直すこともあるかもしれません(;^ω^)
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
死に戻り公爵令嬢が嫁ぎ先の辺境で思い残したこと
Yapa
ファンタジー
ルーネ・ゼファニヤは公爵家の三女だが体が弱く、貧乏くじを押し付けられるように元戦奴で英雄の新米辺境伯ムソン・ペリシテに嫁ぐことに。 寒い地域であることが弱い体にたたり早逝してしまうが、ルーネは初夜に死に戻る。 もしもやり直せるなら、ルーネはしたいことがあったのだった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する
山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。
やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。
人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。
当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。
脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる