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第3章
第185話 昼休憩の街
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トマソンが気を遣っている感じがする。普段と勝手が違う旅だから、状況が見えないと余計に気遣いをさせてしまうかもしれないな。
せっかくの休暇旅なんだし、開示出来る情報はなるべく伝えて、一緒に楽しみたい。
そんな話をしているうちに、昼休憩をする街に到着した。
前の馬車に続いて、街の広場に馬車を乗り入れる。馬車の窓から外を覗くと魔導士の格好をした人物が数人、広場を除雪していた。
馬車を停める付近だけは到着とほぼ同時に除雪が行われたらしく、広場の端は馬車が通れる幅で雪がなくなっている。
残りの部分からも雪を除けて行くようだ。
広場の馬車停留側から外側に向かってザザーと雪の波が動いて行く。そして地面が現れて来た。
「おお!あれが除雪魔法でござるか!凍った湖に波が起きているみたいでござるな。」
馬車を降りかけたまま、動きを止めてユリウスが除雪魔法に見入った。
他の皆もその場に立ち尽くして広場を除雪して行く様子を興味深げに眺めていた。
魔導士達が立っている付近には他にも人物が数人いた。雪が広場の中心部分から消えると、一人が書類にサインをして、魔導士の近くにいた人物に手渡しているのが見えた。
街道の除雪のついでに、街の広場の除雪も依頼をしたということかもしれない。
魔導士達はその後、馬車の方に戻って行った。
俺達は馬車を降りてすっかり雪が消えた広場を見回した。
痛い程冷たい風が頬を叩くように撫でていく。慌てて俺達の周りだけ温熱魔法を展開した。
「おお!寒いでござる。懐の芋が冷えるでござる。」
王都で買った焼き芋はすっかり冷めている頃だ。懐に入れていたら人肌の温度ではあるだろうけど。
ユリウスは懐に芋の袋を入れているからか、お腹の辺りがボコッと膨らんでいた。
「芋は冷めてるだろ。持ち歩かない方がいいんじゃないか?」
「何かあったときの非常食になるでござる!」
「なるほど。安心は大事だな。」
雪は降っていなかったが、非常に寒いというのに、既に街の人が何人か広場に集まり始めていた。
馬車横に設置された屋根の下に台が置かれて、何か商品の販売をするらしい。
珍しそうに眺めているユリウス達を促して、街の食堂を目指した。
広場の外縁には雪が高く積み上げられていて分厚い壁のようになっていた。
食堂が建ち並ぶ通りに入る路地の手前にも雪が溜まって壁がそびえている。ふと、路地の角の片側が広場に面した店を見た。広場側の入り口が既に降り積もった雪と除雪の雪で完全に埋もれていた。
その場所はパン屋だったと思うのだが今は営業していないのだろうか。路地側の出入り口も雪が積もったまま溜まっていた。
路地は人力で人が通る部分だけ雪かきをしているようだった。雪かきがされた場所もその後にまた雪がふったりしたのか、薄く雪が積もっているし所々凍っていて、気をつけないと滑って転びそうだ。
「あれ?ジョスは?」
路地に入りかけた時、トマソンが周囲を見回した。
ジョセフィンの姿がないことに気がついたようだ。
「ああ、ジョスなら席の確保をしに先に行っているよ。」
一つの街に一度に大勢の人数が押し寄せるのだ、昼食を食べる場所は限られるからジョセフィンには到着して直ぐにランチの席の確保に行ってもらっていた。
「いつの間に‥‥。何から何まで世話になっているな。感謝する。」
「礼は後でジョスに直接言ってやってください。」
デリックさんの言葉にそう返すと、デリックさんは微笑んで頷いた。ユリウスがバッと手を上げた。
「拙者も、ランチ斥候したいでござる!次の街でチャレンジするでござる!」
「ああ、交代で席確保にあたるのはよいであるな。我もやろう。」
ユリウスの宣言にマーギットさんも賛同した。
トマソンとデリックさんも頷いている。
せっかくの休暇旅なんだし、開示出来る情報はなるべく伝えて、一緒に楽しみたい。
そんな話をしているうちに、昼休憩をする街に到着した。
前の馬車に続いて、街の広場に馬車を乗り入れる。馬車の窓から外を覗くと魔導士の格好をした人物が数人、広場を除雪していた。
馬車を停める付近だけは到着とほぼ同時に除雪が行われたらしく、広場の端は馬車が通れる幅で雪がなくなっている。
残りの部分からも雪を除けて行くようだ。
広場の馬車停留側から外側に向かってザザーと雪の波が動いて行く。そして地面が現れて来た。
「おお!あれが除雪魔法でござるか!凍った湖に波が起きているみたいでござるな。」
馬車を降りかけたまま、動きを止めてユリウスが除雪魔法に見入った。
他の皆もその場に立ち尽くして広場を除雪して行く様子を興味深げに眺めていた。
魔導士達が立っている付近には他にも人物が数人いた。雪が広場の中心部分から消えると、一人が書類にサインをして、魔導士の近くにいた人物に手渡しているのが見えた。
街道の除雪のついでに、街の広場の除雪も依頼をしたということかもしれない。
魔導士達はその後、馬車の方に戻って行った。
俺達は馬車を降りてすっかり雪が消えた広場を見回した。
痛い程冷たい風が頬を叩くように撫でていく。慌てて俺達の周りだけ温熱魔法を展開した。
「おお!寒いでござる。懐の芋が冷えるでござる。」
王都で買った焼き芋はすっかり冷めている頃だ。懐に入れていたら人肌の温度ではあるだろうけど。
ユリウスは懐に芋の袋を入れているからか、お腹の辺りがボコッと膨らんでいた。
「芋は冷めてるだろ。持ち歩かない方がいいんじゃないか?」
「何かあったときの非常食になるでござる!」
「なるほど。安心は大事だな。」
雪は降っていなかったが、非常に寒いというのに、既に街の人が何人か広場に集まり始めていた。
馬車横に設置された屋根の下に台が置かれて、何か商品の販売をするらしい。
珍しそうに眺めているユリウス達を促して、街の食堂を目指した。
広場の外縁には雪が高く積み上げられていて分厚い壁のようになっていた。
食堂が建ち並ぶ通りに入る路地の手前にも雪が溜まって壁がそびえている。ふと、路地の角の片側が広場に面した店を見た。広場側の入り口が既に降り積もった雪と除雪の雪で完全に埋もれていた。
その場所はパン屋だったと思うのだが今は営業していないのだろうか。路地側の出入り口も雪が積もったまま溜まっていた。
路地は人力で人が通る部分だけ雪かきをしているようだった。雪かきがされた場所もその後にまた雪がふったりしたのか、薄く雪が積もっているし所々凍っていて、気をつけないと滑って転びそうだ。
「あれ?ジョスは?」
路地に入りかけた時、トマソンが周囲を見回した。
ジョセフィンの姿がないことに気がついたようだ。
「ああ、ジョスなら席の確保をしに先に行っているよ。」
一つの街に一度に大勢の人数が押し寄せるのだ、昼食を食べる場所は限られるからジョセフィンには到着して直ぐにランチの席の確保に行ってもらっていた。
「いつの間に‥‥。何から何まで世話になっているな。感謝する。」
「礼は後でジョスに直接言ってやってください。」
デリックさんの言葉にそう返すと、デリックさんは微笑んで頷いた。ユリウスがバッと手を上げた。
「拙者も、ランチ斥候したいでござる!次の街でチャレンジするでござる!」
「ああ、交代で席確保にあたるのはよいであるな。我もやろう。」
ユリウスの宣言にマーギットさんも賛同した。
トマソンとデリックさんも頷いている。
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