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第3章

第163話 王都からの旅事情

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トマソンはノートに帰省のコースや宿泊先などいくつかのパターンを書き出して帰省費用の計算をしているようだ。
そこに四人部屋のパターンを追加していた。

「‥‥この時期、部屋代に薪料金が加わるから一泊あたり‥‥。」
「条件はわかるけど、同行者の了承は?デリックさんは,四人部屋とか大丈夫そうなの?」

そもそもトマソンだって個室を希望していたはずだ。貴族の令息だし誰が同室になるかわからない大部屋はあまり好まないだろう。安ければ大部屋で良いと言い切るユリウスの方が珍しい。

「ユリウス達と一緒なのは大丈夫だと思う。きちんとした四人部屋の場合であればだけど‥‥。」

ユリウス案のようにベッドが足りない部屋に追加料金を少し払って泊まるというのには無理があるようだ。トマソンはフゥと軽く溜め息をついた。

「‥‥金がかかるから、帰省しないで済むならその方がいいんだが‥‥。父への報告事項もあるし、復興状況も気になるから‥‥。」

報告事項というのは、デリックさんの元婚約者であるロセウス子爵令嬢が学園内で問題を起こしたということについてだろう。
ちなみにロセウス子爵令嬢は、謹慎となった期間が長かった為、試験を受けられずに既に領地に一旦帰って行ったそうだ。

ふとトマソンが何か思いついたように顔を上げて俺の方を見た。

「マーカスは何時帰るんだ?帰省するんだろう?」
「ああ、まあね。帰ろうとは思ってるけどさ。」

実は、俺はまだあまり帰省の計画を練っていなかった。雪の中長距離移動するのは大変そうなので、王都に残っていてもいいかと最近まで思っていたんだ。
でも、王都の冬はほぼ雪に閉じ込められるらしく、しかも期間が長い。

王都に残る人が沢山いるなら、交流を持ったりしてそれなりに楽しめるだろうけど、どうやらほとんどの人が帰省してしまったり、南の地に冬越しに行くという。
もしもトリー殿下が学園の寮で冬を越すというのなら、冬の間空いた寮部屋にでも入れてもらってでも王都に残ろうかと思っていたんだけど。王弟殿下一家で保養地に行くらしい。それを聞いてちょっとホッとした。

「何だ?決めていないのか。馬車を手配するんだって早くしないと難しくなるらしいぞ。」
「試験終わったんでこれから考えるよ。」

ユリウス達は乗り合い馬車に乗っての帰省を計画しているけど、学園の生徒の大半は各自の家で所有している馬車か、家で手配した馬車に乗る。

手配する場合、貸し馬車を御者付きで契約することになるわけだけど、手配された馬車の方は遠くまで行ったら王都に戻るのも大変だから、行った先で留まれるくらいには料金が高くなる。それでも行ったきりで何とかならない場合もあるから雪が深くなると戻れないことを理由に馬車の手配自体を断られたりする。

そもそも王都から出るのには除雪されているのが前提だから、貴族家でも馬車一台調達すればなんとかなるというわけではない。
除雪出来る魔導士や冒険者を雇うとか、街道が除雪される日を問い合わせたりとか色々と調整が必要なようだ。

そう考えると雪が深くなると移動ハードルが急激に上がるな。甘く見ていてはいけなさそうだ。どうにかなりそうな気もするんだけど。雪が深くなってくると王都を出るのが面倒くさくなってきそうだな。ちゃんと計画立てよう。
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