騎士志望のご令息は暗躍がお得意

第3章

第147話 臭い作戦

商人が話していたっていう噂を何らかの形で聞いた薬師がお試しで魔力ポーションを沸騰させてくれたら、そこら辺中がくっさくなるってだけだけどね。

白蛇山の魔獣溢れの事までは追求できなくても、とりあえずマルム草やマルム草から作ったポーションを大量に保持している人物がはっきりするかもしれないのと、
住居やら作業場所が臭くなってちょっと残念な状態になるだろうというだけの、かなりダメダメな作戦だ。
もしも臭い状態になっちゃったのが白蛇山の件とは無関係な薬師だったり、関連はしていてもマルム草を渡されただけの何も知らされていない薬師だったら可哀想、かもしれないけど。でも別にこちらが手を下すとかじゃないからね。
噂を聞いた人がこれは儲かるかもとか判断して実行するかどうかなだけだ。

まあ、真面目な薬師だったら手順通り以外の事はしないだろうし、やるとしたら儲け目当ての人物だけだよ。だからダメ元だよね。

俺がルドルフに説明をすると、ルドルフと傍で聞いていたジョセフィンが同じような顔をして眉をひそめた。

「凄く臭くなるって‥‥‥。ちょっと待って！ずっと前にあった気がする！」

ジョセフィンが思い出したように叫んで、凄く嫌そうな顔になった。

「あの元宮廷薬師の上品なご婦人が鬼の形相になって怒鳴ってた事件のことじゃないですか！？」
「上品なご婦人っておばばのこと？だったらそれで合ってると思う。」
「やっぱり！あんなに人が豹変するなんて初めて見てトラウマものだったんですからね！」
「そう？おばばには俺、よく怒られてたけど。」
「怒られるような事してたんじゃないですかぁ～。」

ジョセフィンは呆れた様子で肩を落とした。ルドルフは、口元に笑みを浮かべているけど、目が何か物語っているようだった。
いや、小さい頃の事を今更言われてもねぇ。どうしろって言うんだよ。

「おばばの話はいいだろう？今は、白蛇山関連の話だよ。」

俺が話を戻すと、ジョセフィンが途端に難しそうな顔になった。

「やりたい事は理解しましたけど、もし異臭事件が発生したら、何も知らないその地域の住民が困りませんか？」
「ちゃんとした薬師ならやらないはずだし、ちゃんとしていない薬師だったら、他の事でもやらかすだろう？」
「えー？」

大丈夫かな、とブツブツ言っているジョセフィン。
なんとかしますと、ルドルフが言っていた。多分、何らかの形で無関係な人達を避難させるとかするんだろうけど、どうするつもりなのかちょっと気になるな。

まあ、そんな作戦しか浮かんで来ないっていうのは、結構詰んだ状態かもしれない。