騎士志望のご令息は暗躍がお得意

第3章

第140話 断罪？

「ちょっと何言ってるのよ！」
「根拠のない事を言って私の友人を侮辱しないでもらえるかな。」

イリーとカサンドラがクラーラさんを庇うように立った。
クラーラさんは二人の肩越しに泣きそうな顔で主張した。

「わたくしは、そんなことしません！」

クラーラさんの身体に纏っている魔力がゆらゆら揺れている。暴発しないか？周囲を避難させた方が良いだろうか。

「クラーラ‥‥。」

エルマーさんはそんなクラーラさんの様子を見て少し悲しげな顔をした後、ロセウス子爵令嬢やラウム伯爵令息の方を見て言った。

「うん！クラーラはそんな事しないと思うな。」

エルマーさんの言葉に、ロセウス子爵令嬢とラウム伯爵令息が「はあああああ！？」と呆れた声を上げた。

「エルマー様？何を言っているんですか！！」
「そうですよ！情に流されずにちゃんと調べましょう！今すぐ衛兵を呼びましょう！きっと寮の部屋にでも隠しているんでしょう！動かぬ証拠を掴んでみせましょう！」

エルマーさんは否定しているのにラウム伯爵令息とロセウス子爵令嬢がぐいぐいとエルマーさんに迫る。

エルマーさんはそんな二人を見て困ったように首を振った。

「僕は‥‥クラーラはそんな事しないと思うよ。ねえ、二人とも落ち着いてよ。」
「エルマー様！しっかりしてください！」
「今すぐ衛兵を呼ばないと証拠隠滅されてしまいますよ！早く！寮の部屋を調べさせるんです！」

ラウム伯爵令息はやけに寮の部屋推しだな。

「‥‥何故わたくしの部屋にあると確信されているんですの？」

イリーとカサンドラの間からクラーラさんが一歩踏み出してラウム伯爵令息に尋ねた。ラウム伯爵令息が振り向いてクラーラさんを睨みつけた。

「そんなの！所持品検査をした時に持っていなかったってことは、何処かに隠したのが明白だからだ！あれこれ言って見苦しい言い逃れしようとしても無駄だぞ！
目撃者がいるんだからな！」
「目撃者‥‥ですか？」

ラウム伯爵令息の口調に不快そうな顔をしながらクラーラさんが尋ねた。

「そうさ！あそこにいるクルト・ゼラルドが見たって証言してる！　貴様が猫の目魔石のペンダントを持っているのを見たってな！」

ラウム伯爵令息が、ゼラルド伯爵令息を指差して勝ち誇ったように言った。
ビクン！とゼラルド伯爵令息が身を震わせた。顔が真っ青だ。口をぱくぱくとさせている。呼吸できなくなってない？

「わたくしは、エルマー様の物を盗んだりしておりません！」

クラーラさんはゼラルド伯爵令息の様子を見たあと、ラウム伯爵令息の方を向き直って力強く言い、更に一歩前にふみだした。後ろにイリーとカサンドラがぴったり付いてクラーラさんの腕にそっと手を添えている。

「クルト、お前確かに見たんだろう？今ここで証言してやれよ！」

ラウム伯爵令息が、ゼラルド伯爵令息を顎で指示するようにしながら言った。

「アイヴリンガー侯爵令嬢が、猫の目魔石を持っているのを見たってことをな！澄ました顔してるけどとんでもない盗人令嬢だってな！‥‥ッヒィ！」

ラウム伯爵令息が憎々しげにクラーラさんにそう言い放ったところで、急に喉から変な息を漏らした。