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第3章

第129話 考察

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早朝のお茶会が終わって、トリー殿下とエドワードが寮の部屋に戻って行くのをジョセフィンと一緒に見送った。俺とジョセフィンはまだ帰らずに訓練場に残っていた。

テーブルのある場所まで移動してから防音魔法を展開する。椅子に腰を下ろしてからジョセフィンに話しかける。

「あまり関わりたくない感じがするんだけど‥‥。ベーレンドルフ伯爵令息は何か引っかかるな。」
「ベーレンドルフ宰相閣下が学園に多額の寄付をしているようですね。それと学園内の教師もベーレンドルフの派閥に近い家が多いようです。」
「学園内に顔がきいて、先生方にも強い態度で出れるということか‥‥。
それで‥‥シュバルツ公爵家は?宰相家と派閥は違ったと思ってたけど。最近変わったとかって情報ある?」
「シュバルツ公爵家は‥‥どちらかというと敵対派閥ですよね。以前宰相の座を争ってたと聞きますし。今でもベーレンドルフに替わって国家の実権を握りたいと思っていそうですよね。もしもその関係性が変わって友好関係になっていたら噂になると思いますけど。」
ジョセフィンは「念の為、父にも確認してみます。」と言っていたけど、やっぱり急に両家が仲良くなったとは思えない。

「ベーレンドルフ伯爵家とシュバルツ公爵家があまり仲良くないという前提で考えると、公爵子息の側近達があっさりベーレンドルフ伯爵子息の指示に従ったというのが引っかかるよな。
ちゃんと両家の関係を認識している従者なら『なぜ指示を出す?』と反発すると思うし、何も分かっていないレベルの従者なら‥‥『誰?なんで命令するの?』って思わないか?」

「そうですね‥‥。この件の前に何か揉めるような出来事でもあったのでは。それで『逆らえない人物』と思うようになったたとか」
「『逆らえない』って‥‥公爵家の後ろ盾があっても? 後ろ盾にならないと思えるような家だったら、従者やめないかな。それに従者していてあんなに偉そうにすると思う?」
「‥‥。」

ジョセフィンの眉間に皺がよった。最近眉間の寄せ方がちょっとトマソンっぽくなった気がする。

「‥‥僕なら‥‥、彼らの立場だったらと考えると‥‥。彼らが僕の常識の範疇を超えてしまっているので全然見当違いになるかもしれないですが‥‥。

例えば、マーカス様が大事にしている宝石が盗まれたとします。絶対に自分の力で見つけ出してやると思ったとしましょう。僕ならそもそも盗ませませんし、万一盗まれたとしても学園の警備や風紀に連絡をいれますけどね。

手当たり次第、周囲の人間に持ち物検査をしてでも探し出そうとしたとします。たとえ高位貴族の子息子女相手にでもですよ。結構な決意です。多数の高位貴族の反感を買ったら、たとえ公爵家の後ろ盾があっても家の立場としては厳しいと思いますから。

そして立ち入り捜査に向かった先で取り仕切っている奴が出て来たとします。

『ここからこっちの人は調べなくていいから』と言われたら‥‥。
え、でも!捜査したいってなりますよね。普通。
相手が宰相の子息で学園内でも顔が利くと思っていたとしても、勢い込んで捜査に向かったくらいなら『そこをなんとか』とお願いすると思います。」

「権力に弱い性格だったら?」
「権力に弱い性格なら、高位貴族の子息子女が集まっている特進科の教室に乗り込みませんよ。まして、殿下がいる教室ですよ。どんだけ愚かなんですか。

公爵家の従者だから偉いと思っているなら、やろうとした事を止めるように指示されたら反発するだろうし。
これは‥‥。繋がりがあるようにしか思えないですね‥‥。」

ムムムと唸るジョセフィン。ホント何だか面倒そうな状況だよな。
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