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第3章

第109話 白蛇山

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「ロセウス子爵家ですが、妙に羽振りがいいようです。」

学園から、二番街の店舗上階の住居に戻ってすぐルドルフが報告を始めた。
仕事早すぎじゃない?と思ったら、基本的に俺と関わりがある貴族家については、簡単な調査はしているらしい。マリエル嬢は俺とは直接関わっていないけど、クラーラ嬢とデリックさん両方と関わりがあるので、念のため税収や借金などくらいは調べていたようなのだ。

「王都で滞在する屋敷の購入を検討しているようで、商業ギルドに相談にきていたそうです。それと、夫人と令嬢がドレスや宝石を頻繁に購入しているとか。」
「白蛇山で魔獣溢れがあった後にか?」
「はい。収入源について現在調査中です。」

両隣の領地が魔獣の被害で打撃を受け、支援を依頼されているのを断った上婚約破棄までしていて、王都に屋敷を購入とは羽振りが良いというだけでなく、随分強気な態度だな。

「白蛇山の魔獣溢れの原因についても調査を頼む。」
「畏まりました。」

ルドルフが恭しくお辞儀をした。

そして二日後には、もう報告があった。

「証拠は見つかっておりませんが、魔獣寄せの呪石が使われた可能性が高いかと。」
「魔獣寄せの呪石? それを何処に?」

魔獣寄せの呪石はダンジョンで採掘される、魔獣を集める効果があるという石だ。
ルドルフは地図を広げて机の上に広げた。白蛇山とその裾野にダリス領、ロセウス領、アリアス領の位置が記載されている。
山から続いている川の線を、指でたどりながら、ルドルフが言う。

「この川は、途中からロセウス領に流れる支流と別れるのですが、支流には魔獣がほとんど向かっていません。そしてダリス領内の下流に至った後、陸に上がりダリス領内の農村付近を通過しています。
アリアス領でも同様に下流で陸に上がり、領地内を通過しているのですが‥‥。ダリス領でもアリアス領でも魔獣が陸に上がる際に、河岸の一方にしか侵攻していないのです。
約80年前に白蛇山で魔獣溢れがあった時の記録では、両河岸に魔獣が広がっていた記録があります。ロセウス領に続く支流にも魔獣が侵攻したとあります。」
「魔獣寄せの呪石によって侵攻する経路が導かれていたかもしれないということ?」
「はい。」
「‥‥それって‥‥ロセウス子爵が仕掛けた可能性がある?」
「可能性はあるかと。」

魔獣の被害の後支援と引き換えにダリス家とアリアス家に鉱山や土地を要求していたという。しかしそれについては両家から断られているというし、一歩間違えば自分の領地も魔獣の被害を被る危険性を犯してまですることだろうか。

「恨み?利益?ロセウス子爵家は、白蛇山の魔獣溢れによって何か利益を得てるのかな。羽振りが良くなってたんだよね。それと川下に魔獣寄せを設置しただけで魔獣溢れは起きるのかな。」

魔獣寄せの呪石は確かに魔獣を呼び寄せる効果があるとは言われているけど、呪石があっただけで魔獣が山から飛び出してくるほどかというとちょっと疑問だ。

「白蛇魔獣の巣を荒らすような事をした上で、山から続く川の下流に魔獣寄せの呪石で移動の方向を誘導したというようなことは可能性としてはあり得るでしょう。何か山中に痕跡がないか調べてみます。
利益についてですが、白蛇山の奥地にマルム草の群生地があると言われています。」

「マルム草って、上級ポーションの原料だよね。」
「はい。夏から秋にかけて白蛇魔獣が密集している魔力溜まりのエリアに自生しているそうです。上級冒険者もなかなか採取が出来ないと言われているのですが、
魔獣溢れが発生した直後は魔獣の数が極端に減るので、何組かの冒険者がマルム草目当てで白蛇山奥地に入ったそうです。
しかし数多くは採取できなかったとのことです。」

うーん、先に誰かが採取した可能性があるのか?
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