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第3章

第93話 早朝お茶教室

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「デリック殿、トマソン殿。お互い大変な時期であるが、近隣の者同士領地の復旧の為、協力し合えればと思っている。今後ともよろしく頼むである。」
「あ‥‥、ああ。こちらこそよろしく頼む。」

マーギットさんが、デリックさんとトマソンに向き直りそう言うと、デリックさんは少しビックリしたような顔をした後、頷いて姿勢を正してお辞儀をした。そして二人で握手をした。

「‥‥そうか‥‥。アリアス領の被害も大きかったんだな。」
「我は原因の調査も進めているである。何か情報があれば共有したいである。」
「原因?魔獣の溢れのか?」
「そうである。‥‥だが今日は、マーカス殿とジョス殿に感謝の意を示して、受け取った品の感想を述べる方が大事である。その話は後日しようではないか。」
「ああ‥‥そうだな。」

デリックさんもトマソンと一緒に、俺達に向かって頭を下げてお礼を述べた。
試供品を提供しただけだから凄く感謝の意を示されると、ちょっとくすぐったい気持ちだ。

四人は学園の寮住まいなので、その日はその場で解散をした。


「あー、その令嬢見た事あるかも。寮のロビーにいたと思う。」

早朝お茶教室。
エドワードが紅茶の缶を並べて選びながら言った。一つずつ香りを確認して、ジョセフィンが書いたお茶の特徴のメモと照らし合わせている。
いつもの早朝お茶会だが、エドワードとトリー殿下は、ジョセフィンにお茶の入れ方を教わっていた。
朝や夜の冷え込みが激しくなってきて、寮の部屋でも温かいお茶が飲みたいが侍女がいないという話題になり、エドワードがジョセフィンにお茶の淹れ方を習いたいと言い出した。
そうしたらトリー殿下も一緒に教えて欲しいと言ったので、早朝お茶教室となったのだ。

お茶を淹れながら、マリエル・ロセウス嬢とエルマー・シュバルツ公爵令息の話をした。
以前エドワードの兄、ジークヴァルドさんが一時期ニーナという令嬢と距離が近かった時、ファシナの媚石が使われていたことがあったので同じようなケースかもしれないと気になったのだ。

「寮のロビーって、特進科のだよね。淑女科の女生徒は入れないんじゃないの?」
「特進科の生徒との婚約申請証書を持っていたら、ロビーまでは入れるんだよ。‥‥でも婚約解消したんだよね。僕が見たの最近だよ。」
「学園に出している婚約申請証書そのまま使ってるんじゃないの?」
「おおぅ‥‥。」

ジョセフィンの言葉にエドワードがうなり声を上げた。トリー殿下が首を傾げる。

「婚約解消したら、婚約申請証書って無効にならないの?」
「期限が書かれているようなものじゃないからなあ‥‥。」

婚約したときに教会が発行する婚約証明書は、婚約解消手続き時に返却する。
でも学園が発行する婚約申請証書は、発行時は教会の婚約証明書が必要だけど、婚約解消時に自動的に無効になるわけではない。証書を無効にする手続きは自己申告制なんだと思う。
そういうのって、誰かが取り締まったりするんだろうか。
風紀委員‥‥は、騎士科の学生が大半だし、そもそも、誰が婚約して、解消したかとか、いちいち把握はしてないだろうな。
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