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第3章
第91話 試着レポート
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デリックさんは暫くの間じっとマーギットさんのセーター姿を見つめていた。そして、試着したジャケットの裾をきゅっとつかんだ。
「‥‥ジャケットは‥‥色合いは重たすぎず、上品さもある。だが、背中の山の刺繍は‥‥。」
「そこがいいではないか。」
デリックさんが感想を述べてくれていたら、マーギットさんがズイッとデリックさんに顔を寄せた。
「‥‥目立ちすぎる‥‥と思う。」
やや引き気味に身体を反らして眉間に皺を寄せたデリックさんがボソリと言った。
デリックさんの言葉を聞いてマーギットさんがハッとして目を見開いた。
「成る程!隠密活動には向かないであるな。」
マーギットさんに続いて、ユリウスが感心したように大きく頷いた。
「確かにそうでござる!世を忍ぶ仮の姿のはずが注目されてしまう恐れがあるでござる。トマソン氏兄君は、流石!目の付けどころが鋭いでござる!」
「‥‥いや、隠密‥‥?世を忍ぶ‥‥。」
デリックさんが怪訝な顔をした。トマソンは椅子に座ったままずっと黙っている。眉間の皺が凄く深くなっている。
「背中の刺繍は好みが別れるということですね。目立ちたくない人には向かなそう‥‥と。」
ジョセフィンは淡々と感想をメモしている。
「ああ‥‥。」
デリックさんが、ジョナサンの言葉に頷いて、ジャケットを脱いだ。そして元々着ていた制服の上着を掴もうとしたが、その手にマーギットさんが脱いだばかりのセーターを押し付けた。
「フフフ‥‥。交代である‥‥。使用感を確認して感想を述べようではないか‥‥。フフフ‥‥。」
「‥‥わかったよ‥‥。」
デリックさんが仏頂面のまま、セーターを勢い良く被って袖を通した。
「‥‥。」
トマソンが顔を上げ、ぽかんとした様子でデリックさんを見る。
「‥‥似合わない‥‥。」
「何だと?」
デリックさんがむっとしてすぐにセーターを脱ごうとした。そのデリックさんの腕をユリウスが掴んだ。
「トマソン氏の兄君。まだ感想を述べていないでござる。」
「しかし‥‥。」
「着心地はどうでござるか? 兄上が言うように軽くて暖かいでござるか?」
「ああ‥‥そうだな‥‥。着心地は軽くて暖かいし、すべすべしていて柔らかい手触りも気持ちがいい‥。だが、この赤と青の配色というのが‥‥。」
「この色は良いと思うでござるよ!」
デリックさんが、デザインについて言おうとしたら、ユリウスが不服そうに声を上げた。
マーギットさんがユリウスを嗜める。
「ユリウス。よしなさい。感想は自由なのだ。そして今はデリック殿が感想を言う番なのだ。」
「兄上‥‥。そ、そうでござった‥‥。トマソン氏の兄君‥‥、大変失礼したでござる。例えトマソン氏の兄君がこの素敵なセーターを酷評したとしてもそれはトマソン氏の兄君の意見として‥‥。」
涙ぐんで言うユリウスを見てデリックさんが眉間に皺を寄せて見つめ、はぁと溜め息をついた。
「‥‥デリックでいいよ。その『トマソン氏の兄君』って言い方、やめてくれるか? ちょっと居心地悪い‥‥。」
「デリック氏!」
ユリウスがぱあぁっと笑顔になった。デリックさんは目をそらした。
「‥‥別にデザインを酷評する気はない‥‥。自分の好みで言えば、色の配分というか‥‥、胸の下で色が変わるのではなく、もっとこう‥‥上か下の位置で色が別れていた方が落ち着く気がする。」
「なるほど!デザイナーに伝えます。貴重なご意見ありがとうございます。」
デリックさんの言葉にジョセフィンが笑顔で頷いた。
「流石、デリック氏!」
「デリック殿は、デザインに造詣が深いのでござるな。フフフ‥‥。」
アリアス家兄弟と、ダリス家兄弟のテンションの差が凄い。でも、結構打ち解けている様子なのか?
結局、セーターはマーギットさん、ジャケットはデリックさんの元に引き取られた。
「‥‥ジャケットは‥‥色合いは重たすぎず、上品さもある。だが、背中の山の刺繍は‥‥。」
「そこがいいではないか。」
デリックさんが感想を述べてくれていたら、マーギットさんがズイッとデリックさんに顔を寄せた。
「‥‥目立ちすぎる‥‥と思う。」
やや引き気味に身体を反らして眉間に皺を寄せたデリックさんがボソリと言った。
デリックさんの言葉を聞いてマーギットさんがハッとして目を見開いた。
「成る程!隠密活動には向かないであるな。」
マーギットさんに続いて、ユリウスが感心したように大きく頷いた。
「確かにそうでござる!世を忍ぶ仮の姿のはずが注目されてしまう恐れがあるでござる。トマソン氏兄君は、流石!目の付けどころが鋭いでござる!」
「‥‥いや、隠密‥‥?世を忍ぶ‥‥。」
デリックさんが怪訝な顔をした。トマソンは椅子に座ったままずっと黙っている。眉間の皺が凄く深くなっている。
「背中の刺繍は好みが別れるということですね。目立ちたくない人には向かなそう‥‥と。」
ジョセフィンは淡々と感想をメモしている。
「ああ‥‥。」
デリックさんが、ジョナサンの言葉に頷いて、ジャケットを脱いだ。そして元々着ていた制服の上着を掴もうとしたが、その手にマーギットさんが脱いだばかりのセーターを押し付けた。
「フフフ‥‥。交代である‥‥。使用感を確認して感想を述べようではないか‥‥。フフフ‥‥。」
「‥‥わかったよ‥‥。」
デリックさんが仏頂面のまま、セーターを勢い良く被って袖を通した。
「‥‥。」
トマソンが顔を上げ、ぽかんとした様子でデリックさんを見る。
「‥‥似合わない‥‥。」
「何だと?」
デリックさんがむっとしてすぐにセーターを脱ごうとした。そのデリックさんの腕をユリウスが掴んだ。
「トマソン氏の兄君。まだ感想を述べていないでござる。」
「しかし‥‥。」
「着心地はどうでござるか? 兄上が言うように軽くて暖かいでござるか?」
「ああ‥‥そうだな‥‥。着心地は軽くて暖かいし、すべすべしていて柔らかい手触りも気持ちがいい‥。だが、この赤と青の配色というのが‥‥。」
「この色は良いと思うでござるよ!」
デリックさんが、デザインについて言おうとしたら、ユリウスが不服そうに声を上げた。
マーギットさんがユリウスを嗜める。
「ユリウス。よしなさい。感想は自由なのだ。そして今はデリック殿が感想を言う番なのだ。」
「兄上‥‥。そ、そうでござった‥‥。トマソン氏の兄君‥‥、大変失礼したでござる。例えトマソン氏の兄君がこの素敵なセーターを酷評したとしてもそれはトマソン氏の兄君の意見として‥‥。」
涙ぐんで言うユリウスを見てデリックさんが眉間に皺を寄せて見つめ、はぁと溜め息をついた。
「‥‥デリックでいいよ。その『トマソン氏の兄君』って言い方、やめてくれるか? ちょっと居心地悪い‥‥。」
「デリック氏!」
ユリウスがぱあぁっと笑顔になった。デリックさんは目をそらした。
「‥‥別にデザインを酷評する気はない‥‥。自分の好みで言えば、色の配分というか‥‥、胸の下で色が変わるのではなく、もっとこう‥‥上か下の位置で色が別れていた方が落ち着く気がする。」
「なるほど!デザイナーに伝えます。貴重なご意見ありがとうございます。」
デリックさんの言葉にジョセフィンが笑顔で頷いた。
「流石、デリック氏!」
「デリック殿は、デザインに造詣が深いのでござるな。フフフ‥‥。」
アリアス家兄弟と、ダリス家兄弟のテンションの差が凄い。でも、結構打ち解けている様子なのか?
結局、セーターはマーギットさん、ジャケットはデリックさんの元に引き取られた。
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