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第3章
第90話 兄君達の試着
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特進科の庶務課窓口は、渡り廊下側からは建物を回り込む位置にあった。元々特進科にいたトマソンは迷わずに先頭を歩いて進み窓口でさっさと伝言の手続きをした。
クラーラさんも一応一緒に来ていた。他学科への伝言手続きを知らなかったそうなので、説明しながら歩いていたのだ。
話しているうちに、気分も落ち着いたのか、表情が柔らかくなった。
予鈴がなったので急いで戻ることにして、その場は別れを告げた。
喉に魚の小骨が刺さったままみたいな、少し憂鬱な気持ちを引き摺った状態でその日の午前の授業を受けた。昼休みに庶務課の伝言係の人がトマソンの兄からの返信メッセージを届けに来て、放課後に会う事になった。
ユリウス兄の都合もついて、学科共有のカフェテリアの横に設置されたサロンで放課後待ち合わせる。
「フフフ。これは中々、ぐっとくるであるな。フフフ‥‥。」
青く長い前髪が顔の右半分を隠すように、ばさっと覆っている。顔を動かしてバサッと前髪を揺らす。いくつもの銀の指輪をつけた指で、赤と青の色をしたセーターをつまみ上げた。
「ぐっとくるでござろう?兄上。ククク‥‥。」
「ああ、心沸き立つようである。フフフ‥‥。」
ユリウスの兄、マーギット・アリアス子爵令息は不敵な笑いを浮かべた。トマソンの兄、デリック・ダリス伯爵令息に赤と青のセーターを突き出した。
「ダリス殿。どちらがいいか決まったであるか? 我はどちらでもいいぞよ。この空と血の色のセーターも、魔の山を現すジャケットも、どちらも魅力的である。」
「‥‥。」
デリックさんは、当惑したように口をパクパクと動かした後、助けを求めるようにトマソンの方を見た。トマソンは眉間に皺を寄せているだけで何も言わず突っ立った状態だ。
「‥‥。」
トマソンが何も言わないからか更にキョロキョロして俺と目が合った。
「是非手に取って手触りも確認してください。」
「あ、ああ‥‥。」
デリックさんは選んでと言われたら適当に選びそうな感じがする。でもまだ手触りも確認してもらっていなかったので促してみる。
どちらか選ぶにしろ、拒むにしろちゃんと品を吟味してからにしてもらいたかったんだ。
デリックさんがテーブルの上に置かれたジャケットにそっと手を触れた。
「あ‥‥。」
そっとジャケットの上で滑らせた指を往復させる。
「手触りどうですか?」
「‥‥悪くない‥‥。」
俺が問いかけるとデリックさんが少し口を尖らせながら言った。眉間に皺が寄っている。兄弟だな‥‥。
ちらりと、俺の方に目を向けた。
「‥‥試作品と聞いたが‥‥。これは君が作ったのか?」
「いえ、2番街にある店に縁があって‥‥。この試作品は店と契約しているデザイナーが店に持って来たやつなんです。学生向けにデザインしたっていうんでこうして色々な人に使ってもらって感想を聞いて、デザイナーに伝えてるんですよ。」
「なるほど‥‥。少々派手だと思ったが、学生向けということか‥‥。」
「どうぞ着心地も確認してください。」
俺がそういうとデリックさんが上着を脱いだ。
ジャケットを広げて差し出すと、デリックさんが袖を通した。
「軽い‥‥な‥‥。」
「フフフ、こちらのセーターも軽くて暖かいであるぞ。フフフ。」
マーギットさんもセーターを試着していた。上が赤で下が青の派手なセーターと一見シリアスに見えるマーギットさんの顔とのギャプがすごい。
でも、髪色が青系だから、バランスとれているかも。
「手触りもよい。感触が柔らかい。デザインも明るく前向きな気持ちになる色合いでなかなかよいである。フフフ‥‥。」
セーターはマーギットさんの好評を得たようだ。
クラーラさんも一応一緒に来ていた。他学科への伝言手続きを知らなかったそうなので、説明しながら歩いていたのだ。
話しているうちに、気分も落ち着いたのか、表情が柔らかくなった。
予鈴がなったので急いで戻ることにして、その場は別れを告げた。
喉に魚の小骨が刺さったままみたいな、少し憂鬱な気持ちを引き摺った状態でその日の午前の授業を受けた。昼休みに庶務課の伝言係の人がトマソンの兄からの返信メッセージを届けに来て、放課後に会う事になった。
ユリウス兄の都合もついて、学科共有のカフェテリアの横に設置されたサロンで放課後待ち合わせる。
「フフフ。これは中々、ぐっとくるであるな。フフフ‥‥。」
青く長い前髪が顔の右半分を隠すように、ばさっと覆っている。顔を動かしてバサッと前髪を揺らす。いくつもの銀の指輪をつけた指で、赤と青の色をしたセーターをつまみ上げた。
「ぐっとくるでござろう?兄上。ククク‥‥。」
「ああ、心沸き立つようである。フフフ‥‥。」
ユリウスの兄、マーギット・アリアス子爵令息は不敵な笑いを浮かべた。トマソンの兄、デリック・ダリス伯爵令息に赤と青のセーターを突き出した。
「ダリス殿。どちらがいいか決まったであるか? 我はどちらでもいいぞよ。この空と血の色のセーターも、魔の山を現すジャケットも、どちらも魅力的である。」
「‥‥。」
デリックさんは、当惑したように口をパクパクと動かした後、助けを求めるようにトマソンの方を見た。トマソンは眉間に皺を寄せているだけで何も言わず突っ立った状態だ。
「‥‥。」
トマソンが何も言わないからか更にキョロキョロして俺と目が合った。
「是非手に取って手触りも確認してください。」
「あ、ああ‥‥。」
デリックさんは選んでと言われたら適当に選びそうな感じがする。でもまだ手触りも確認してもらっていなかったので促してみる。
どちらか選ぶにしろ、拒むにしろちゃんと品を吟味してからにしてもらいたかったんだ。
デリックさんがテーブルの上に置かれたジャケットにそっと手を触れた。
「あ‥‥。」
そっとジャケットの上で滑らせた指を往復させる。
「手触りどうですか?」
「‥‥悪くない‥‥。」
俺が問いかけるとデリックさんが少し口を尖らせながら言った。眉間に皺が寄っている。兄弟だな‥‥。
ちらりと、俺の方に目を向けた。
「‥‥試作品と聞いたが‥‥。これは君が作ったのか?」
「いえ、2番街にある店に縁があって‥‥。この試作品は店と契約しているデザイナーが店に持って来たやつなんです。学生向けにデザインしたっていうんでこうして色々な人に使ってもらって感想を聞いて、デザイナーに伝えてるんですよ。」
「なるほど‥‥。少々派手だと思ったが、学生向けということか‥‥。」
「どうぞ着心地も確認してください。」
俺がそういうとデリックさんが上着を脱いだ。
ジャケットを広げて差し出すと、デリックさんが袖を通した。
「軽い‥‥な‥‥。」
「フフフ、こちらのセーターも軽くて暖かいであるぞ。フフフ。」
マーギットさんもセーターを試着していた。上が赤で下が青の派手なセーターと一見シリアスに見えるマーギットさんの顔とのギャプがすごい。
でも、髪色が青系だから、バランスとれているかも。
「手触りもよい。感触が柔らかい。デザインも明るく前向きな気持ちになる色合いでなかなかよいである。フフフ‥‥。」
セーターはマーギットさんの好評を得たようだ。
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