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第3章
第89話 色々複雑
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「‥‥君‥‥。ちょっと失礼だよ。」
エルマー様と呼ばれた男性が、少し顔を赤らめ不機嫌そうにユリウスを睨みつけた。
ビクッとユリウスが小さく撥ねる。エルマー様は更に苦情を言ってくるかと思ったけど、それ以上は何も言わずにふんっと顔を背けて歩き出した。後ろをローズピンク髪の令嬢が追いかけて行く。
後にはクラーラさんが涙ぐんで立っていた。
「クラーラさん‥‥。」
エルマー達の姿が見えなくなってからクラーラさんに話しかけた。
「マーカス君、ジョス君‥‥。」
クラーラさんはさっとハンカチを出して顔を拭った。きゅっと唇に力を入れニコリとしてカーテシーをする。
「ごきげんよう。お騒がせしてしまってごめんなさい。」
「クラーラさん、さっきの男性‥‥エルマー様って‥‥。」
「ええ、以前話した私の婚約者よ。」
「‥‥。」
ちょっと気まずい雰囲気になったので、とりあえずトマソンとユリウスを紹介した。
トマソンとクラーラさんは知り合いだった。トマソンが以前所属していた特進科で同じクラスだったようだ。
「お恥ずかしいところを見せてしまったわ。
私、気が小さいでしょう? 少しの事でも、気にしてしまって‥‥。」
クラーラさんの婚約者であるエルマー・シュバルツ公爵令息は特進科の二年生で図書委員長なのだという。
あのローズピンク髪の令嬢、マリエル・ロセウス子爵令嬢は最近、図書委員となったらしい。彼女が何かとエルマーさんに相談を口実に近づいているので、様子が気になっていたんだそうだ。
エルマーさんに近づき過ぎではといっても、「相談に乗っているだけだ」といって取り合ってくれないという。
今日は、マリエル嬢がエルマーさんの腕にしがみついている姿を見たので我慢できずに、注意しに言ったら先程の言い争いになってしまったのだそうだ。
「ふん。金か身分か‥‥。」
トマソンが呟くのを聞いて、クラーラさんがキッと眉をあげてトマソンを見た。
「なんですの? ‥‥少し、失礼ではなくて?」
「あのマリエル・ロセウスという令嬢のことだ。彼女は財力とか爵位とかが大好きなん‥‥ですよ。」
トマソンが眉間に皺を寄せながら口をモゴモゴと動かした。相手が侯爵令嬢だからか、丁寧語にしたらしい。
「お知り合いですの?」
「兄の‥‥、元婚約者です。」
「え?」
トマソンの兄、デリック・ダリス伯爵令息とマリエル嬢は婚約していたが、最近婚約解消したのだという。
ダリス伯爵家の経済の悪化を理由として相手側からかなり見下した態度で婚約解消を申し入れられたそうだ。
元はマリエル嬢は、デリックさんと同じ美化委員に所属していたが、婚約解消後に図書委員になったそうだ。
「そ、そうだったんですの‥‥。」
クラーラさんはちょっと気まずそうな顔をした。トマソンは相変わらず眉間に皺を寄せている。
「クラーラ嬢の婚約者殿がどういうつもりなのかはわからないけど、気をつけた方がいいですよ。あの女は裏表が激しいから。」
「‥‥。」
トマソンはそこまで言うと、ずんずんと特進科の学舎に向かって歩いていった。
エルマー様と呼ばれた男性が、少し顔を赤らめ不機嫌そうにユリウスを睨みつけた。
ビクッとユリウスが小さく撥ねる。エルマー様は更に苦情を言ってくるかと思ったけど、それ以上は何も言わずにふんっと顔を背けて歩き出した。後ろをローズピンク髪の令嬢が追いかけて行く。
後にはクラーラさんが涙ぐんで立っていた。
「クラーラさん‥‥。」
エルマー達の姿が見えなくなってからクラーラさんに話しかけた。
「マーカス君、ジョス君‥‥。」
クラーラさんはさっとハンカチを出して顔を拭った。きゅっと唇に力を入れニコリとしてカーテシーをする。
「ごきげんよう。お騒がせしてしまってごめんなさい。」
「クラーラさん、さっきの男性‥‥エルマー様って‥‥。」
「ええ、以前話した私の婚約者よ。」
「‥‥。」
ちょっと気まずい雰囲気になったので、とりあえずトマソンとユリウスを紹介した。
トマソンとクラーラさんは知り合いだった。トマソンが以前所属していた特進科で同じクラスだったようだ。
「お恥ずかしいところを見せてしまったわ。
私、気が小さいでしょう? 少しの事でも、気にしてしまって‥‥。」
クラーラさんの婚約者であるエルマー・シュバルツ公爵令息は特進科の二年生で図書委員長なのだという。
あのローズピンク髪の令嬢、マリエル・ロセウス子爵令嬢は最近、図書委員となったらしい。彼女が何かとエルマーさんに相談を口実に近づいているので、様子が気になっていたんだそうだ。
エルマーさんに近づき過ぎではといっても、「相談に乗っているだけだ」といって取り合ってくれないという。
今日は、マリエル嬢がエルマーさんの腕にしがみついている姿を見たので我慢できずに、注意しに言ったら先程の言い争いになってしまったのだそうだ。
「ふん。金か身分か‥‥。」
トマソンが呟くのを聞いて、クラーラさんがキッと眉をあげてトマソンを見た。
「なんですの? ‥‥少し、失礼ではなくて?」
「あのマリエル・ロセウスという令嬢のことだ。彼女は財力とか爵位とかが大好きなん‥‥ですよ。」
トマソンが眉間に皺を寄せながら口をモゴモゴと動かした。相手が侯爵令嬢だからか、丁寧語にしたらしい。
「お知り合いですの?」
「兄の‥‥、元婚約者です。」
「え?」
トマソンの兄、デリック・ダリス伯爵令息とマリエル嬢は婚約していたが、最近婚約解消したのだという。
ダリス伯爵家の経済の悪化を理由として相手側からかなり見下した態度で婚約解消を申し入れられたそうだ。
元はマリエル嬢は、デリックさんと同じ美化委員に所属していたが、婚約解消後に図書委員になったそうだ。
「そ、そうだったんですの‥‥。」
クラーラさんはちょっと気まずそうな顔をした。トマソンは相変わらず眉間に皺を寄せている。
「クラーラ嬢の婚約者殿がどういうつもりなのかはわからないけど、気をつけた方がいいですよ。あの女は裏表が激しいから。」
「‥‥。」
トマソンはそこまで言うと、ずんずんと特進科の学舎に向かって歩いていった。
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