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第3章
第75話 エドワードが気になる存在
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「どうしようかって‥‥。クラスで何かあった?」
エドワードはトリー殿下と同じクラスだ。でも話したことはないと以前言っていた。
「うん。『取り巻き』に入れてくれるって話があって。」
エドワードはそう言うとちょっと悪戯っぽい微笑みを浮かべて首を傾げた。
「取り巻き?」
トリー殿下が自分の周囲の人物を選出するとか、そういう感じはしないが、時々遠くから見かけた時は、周辺を取り囲まれていた。
「宰相閣下の息子がさぁ、仕切ってるんだよねぇ。」
宰相グスタフ・ベーレンドルフ伯爵の子息、ドミニク・ベーレンドルフの事か。
トリー殿下からの話でも、時々その名前を聞く。トリー殿下が、何かしたいと言ったとき、大抵、ベーレンドルフが、「危ないから」とかいう理由で反対をするらしい。
そのドミニク・ベーレンドルフが、トリー殿下の近くに来ていい同級生を選別しているんだそうだ。
エドワードがちょっと捻くれた言い方をしたのは、宰相の子息というだけで、ベーレンドルフが「許可」を与えるみたいなのが気に入らないようだ。
「僕の成績が上がってきたから、殿下とお昼を食べるメンバーに加えてやってもいいってさ。なんだかねぇ。」
肩を竦めて、ふうっと溜め息をつくエドワード。
「気が進まないなら断れば?」
「うーん‥‥。宰相子息が仕切ってるのがちょっとムカつくだけで、トリー殿下は気になるんだよね。だって、よく見たらマーカスそっくりでしょ。」
「おっと‥‥。」
思わず、顔に手をやって眼鏡をかけていたかどうか確認してしまった。
「その眼鏡もあって、ぱっと見、ぴんとこないけど。従兄弟だって知ってて、よく見てみたら、似てるなぁって。眼鏡外してみて欲しいけど、ここでは我慢する。」
今度、こっそり、眼鏡外した顔を見せてね、とニコニコして言うエドワード。
「それでさ、マーカスは名前変えてるでしょ。交流ないのか気になったんだよね。仲悪いんだったら、近づかないでいようかと思ったし。」
「なるほど。‥‥仲自体は良いと思ってるよ。面倒事を避けたくて、目立った場所では交流をもってないし、名乗ってもいないけど。」
「なんか判る。宰相子息とかってまさに面倒事って感じじゃん。」
「直接会って話したことはないけど‥‥。派閥を作っているみたいな様子からすると、面倒そうだね。」
「そうなんだよ~。」
「じゃあ、やっぱり近づかないほうがいいんじゃないの?」
「‥‥殿下が楽しそうじゃないのが気になっちゃうんだよね。マーカスと仲良いんだったら、ちょっとでも力になってあげたい気がするし。」
エドワードは、肘をテーブルの上について、両手で頬を包み込んだ。
「いや、エドワードが何か無理をすることはないんじゃないか。」
「でも、マーカスによく似た顔の殿下としゃべってみたいなぁ、なんて‥‥。」
えへへ、と照れくさそうにエドワードが笑った。
うーん‥‥。俺はお茶のカップを置き、ちらりとジョセフィンの方を見た。ジョセフィンが、軽く肩を竦めた。
早朝の訓練場でのお茶会。そこにエドワードも招いてもよいだろうか。トリー殿下に確認してからだな。
「‥‥クラスとは関係ないところで、会えるか聞いてみるよ。」
「本当!やったー!」
エドワードがパッと顔を上げて、嬉しそうに微笑んだ。
エドワードはトリー殿下と同じクラスだ。でも話したことはないと以前言っていた。
「うん。『取り巻き』に入れてくれるって話があって。」
エドワードはそう言うとちょっと悪戯っぽい微笑みを浮かべて首を傾げた。
「取り巻き?」
トリー殿下が自分の周囲の人物を選出するとか、そういう感じはしないが、時々遠くから見かけた時は、周辺を取り囲まれていた。
「宰相閣下の息子がさぁ、仕切ってるんだよねぇ。」
宰相グスタフ・ベーレンドルフ伯爵の子息、ドミニク・ベーレンドルフの事か。
トリー殿下からの話でも、時々その名前を聞く。トリー殿下が、何かしたいと言ったとき、大抵、ベーレンドルフが、「危ないから」とかいう理由で反対をするらしい。
そのドミニク・ベーレンドルフが、トリー殿下の近くに来ていい同級生を選別しているんだそうだ。
エドワードがちょっと捻くれた言い方をしたのは、宰相の子息というだけで、ベーレンドルフが「許可」を与えるみたいなのが気に入らないようだ。
「僕の成績が上がってきたから、殿下とお昼を食べるメンバーに加えてやってもいいってさ。なんだかねぇ。」
肩を竦めて、ふうっと溜め息をつくエドワード。
「気が進まないなら断れば?」
「うーん‥‥。宰相子息が仕切ってるのがちょっとムカつくだけで、トリー殿下は気になるんだよね。だって、よく見たらマーカスそっくりでしょ。」
「おっと‥‥。」
思わず、顔に手をやって眼鏡をかけていたかどうか確認してしまった。
「その眼鏡もあって、ぱっと見、ぴんとこないけど。従兄弟だって知ってて、よく見てみたら、似てるなぁって。眼鏡外してみて欲しいけど、ここでは我慢する。」
今度、こっそり、眼鏡外した顔を見せてね、とニコニコして言うエドワード。
「それでさ、マーカスは名前変えてるでしょ。交流ないのか気になったんだよね。仲悪いんだったら、近づかないでいようかと思ったし。」
「なるほど。‥‥仲自体は良いと思ってるよ。面倒事を避けたくて、目立った場所では交流をもってないし、名乗ってもいないけど。」
「なんか判る。宰相子息とかってまさに面倒事って感じじゃん。」
「直接会って話したことはないけど‥‥。派閥を作っているみたいな様子からすると、面倒そうだね。」
「そうなんだよ~。」
「じゃあ、やっぱり近づかないほうがいいんじゃないの?」
「‥‥殿下が楽しそうじゃないのが気になっちゃうんだよね。マーカスと仲良いんだったら、ちょっとでも力になってあげたい気がするし。」
エドワードは、肘をテーブルの上について、両手で頬を包み込んだ。
「いや、エドワードが何か無理をすることはないんじゃないか。」
「でも、マーカスによく似た顔の殿下としゃべってみたいなぁ、なんて‥‥。」
えへへ、と照れくさそうにエドワードが笑った。
うーん‥‥。俺はお茶のカップを置き、ちらりとジョセフィンの方を見た。ジョセフィンが、軽く肩を竦めた。
早朝の訓練場でのお茶会。そこにエドワードも招いてもよいだろうか。トリー殿下に確認してからだな。
「‥‥クラスとは関係ないところで、会えるか聞いてみるよ。」
「本当!やったー!」
エドワードがパッと顔を上げて、嬉しそうに微笑んだ。
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