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第2章

第59話 現行犯

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「魔力感知。鑑定! ファシナの媚石の使用を確認!」

騎士が小窓から鑑定眼鏡で確認後に告げると、衛兵がざっと動きだした。

「現行犯だ。捕えろ。」

騎士と衛兵が接客フロアに出て行って、ニーナを取り囲んだ。

『ちょ、ちょっとぉ~!なにするのよぉ!』

動揺して逃げようとするニーナをあっという間に取り押さえてしまった。

「ニーナ!ニーナァ~!」

小窓にしがみついて、カシュー先輩が泣き叫んだ。

「カシュー先輩‥‥。」

俺とジョセフィンでカシュー先輩の背中をポンポンと叩いた。

「きっと‥‥、何かお金に困るようなことがあったんだよ。よっぽど‥‥。」
「そうだったとしても、物をねだっておいて、貰ってすぐに売りに出すのは誠実じゃないと思いますよ。」

髪飾りもニーナにねだられたのだ。

「うう‥‥。」

カシュー先輩は壁に頭を押し当てて泣いていた。
小窓の向こう側はバタバタとしていた。ニーナは既に店の外に連行されて行った。騎士と衛兵が2名、まだ店内に残って、従業員に何か確認をとっている。
従業員は、手袋をしていたせいか、ファシナの媚石の影響はあまり受けていないようだ。普通に受け答えをしているように見える。

「カシュー先輩。カシュー先輩が、贈った物を売りに出されても構わない、と、受け入れるのは自由だと思います。
でも、今みたいな使われ方をするって分かっていて品を渡したら、犯罪に加担しているような物だと思いますよ。」
「うぅ‥‥うん‥‥。」

カシュー先輩ががっくり項垂れた。
調査の結果、2番街のいくつかの宝石店で、同様の事が行われていた事が分かったそうだ。
店として公表したくなくて黙っている可能性もあるので、実際は、見つかった以上に被害が有るかもしれない。
ペリリ文具店の店主は、買い取り査定の為に手袋をしていた時だったからか、被害は被っていなかったようだ。

ジークヴァルドにも、贈った品をニーナが買い取りに出していた事実が知らされた。他にも数点贈っていたようで、婚約者向けの費用を使い込んでいた事が発覚して
アインホルン侯爵は激怒したそうだ。
ファシナの媚石の影響を薄める為と、ニーナから再度影響を受けないため、暫く学園を休む事になった。
ニーナが逮捕されたので、近い内、復帰するだろう。

ニーナの父、バーデン男爵も、違法物の王都流入に加担していた疑いがあるとされて、逮捕された。
ファシナの媚石は一つだけではなくて、使用して効果が薄れてくると、時々新しい媚石をニーナに届けていたそうだ。所有許可も得ていなかった。

エドワードが目撃した紫のフードの男は、バーデン男爵に雇われた人物なんだろう。

バーデン男爵は、他にも違法賭博等の余罪があるらしい。そもそも、爵位自体が、バーデン男爵家に婿入りして得たものそうだ。
夫人は結婚して1年しないうちに亡くなり、その後まもなくニーナの母親である現在の夫人と結婚したという。
婿入りした経緯や、夫人の死についても、疑いがもたれ、調査が開始されたという。どろどろした話になってきてしまった。

いずれにせよ、バーデン男爵家は取り潰しとなりそうだ。
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