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第2章
第57話 衛兵呼んだ
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衛兵が駆けつけてきたので学園内は騒然となった。
トリシア嬢は、事情聴取に衛兵に囲まれ喚きながらどこかに連れて行かれた。
衛兵が呼ばれたのを聞いた学園長がすっ飛んで来た。
学園長は、医務室で、治療を受けているエドワードに状況を聞いている衛兵の近くに立って渋い顔をしている。
エドワードは、過去にも殴られた事があったようだ。額に傷跡が残っていた。本当、腹立つ。
エドワードは、治療を受けて大分落ち着いた様子だ。衛兵からの質問にもしっかり受け答えしている。
衛兵は、傷の具合と状況を確認した後、医務室を出て行った。
学園長は、切れ長のアイスブル-の瞳で、衛兵が去った後のドアが閉まるのを、ちらりと見た後、
俺の方に目を向けた。
「衛兵を呼ぶなら、一言相談してからにして欲しかったね。プリメレモン君。」
「傷の状態をみてもらった方がいいし、呼ぶのは早い方がいいと思ったんです。」
俺は、椅子に腰を下ろしたまま、学園長を見上げて言った。
オーギュスト・ファルケン侯爵。昨年代替わりして侯爵家を継いだと同時に、学園長に就任した。
兄の後輩だそうだ。俺が、エルストベルク家の次男だという事も知っている。
ちょっと困った顔をしていて、言いたい事を我慢しているみたいに見える。
相談していたら、衛兵を呼べなかったかもしれない。そんな気がしたから、先に呼んだんだけど。
騒ぎにしたくなかったんだろうなとは思うけど文句言うなら、怪我させた方に言ってください。
学園長は、ふうっと息を吐いてから、エドワードの方に向き直った。
「怖い思いをしたね。しゃべると傷は痛むかい?」
「あ、ちょっと‥‥。でも大丈夫です。」
口の端の周りの腫れを確認するように指先でそっと触れてから、エドワードが答えた。
「アインホルン侯爵家には連絡を入れている。もうすぐ迎えが来るだろう。」
そう言ったすぐ後に、ノックの音がした。
ジークヴァルドが、入って来た。
「エドワード!トリシアに殴られたというのは本当か!」
入ってくるなり大声。ジークヴァルドの後ろに赤茶けた髪の人。ジークヴァルドには従者がいると言っていたから、従者の人かな。
その後ろに、フーゴ先輩。
風紀委員に、ジークヴァルドを呼びに行ってもらった。ニーナ嬢抜きで呼んでもらった。
呼ばなくても騒ぎを聞いてくるかもしれないけど、ニーナ嬢がついてくるとややこしくなりそうだったから。
ジークヴァルドはエドワードの腫れた顔を見て、眉を吊り上げた。
「そんな暴力的な女だったとは! あんな女、婚約破棄してやる!」
ジークヴァルドが怒りの声を上げると、学園長が、淡々とした口調で、嗜める。
「ジークヴァルド・アインホルン君。落ち着きなさい。医務室では静かに。」
「‥‥すみません。でもっ‥‥。」
「家同士の話し合いになるだろうから、落ち着いて、ご両親ともよく話し合いなさい。」
「話し合わなくても、暴力女など‥‥。」
「原因には君も関わっているだろう。」
「え?」
ジークヴァルドが、ぽかんとした顔をした。自覚ないの?
「最近、君が婚約者以外の女性を連れ歩いていた事で、トリシア・ブランシュは冷静さをかいた行動をとるようになったようだ。
もちろん、暴力に訴えるのは間違っている。しかも、当事者でもないものを傷つけるなど言語道断だ。
しかし、君も、婚約者に対して、誠実な行動をとっていたとは言えないね。」
「そ、それは‥‥。」
「貴族家の婚約関係について、口出しをするのは控えたかったが‥‥。
ブランシュ侯爵家は、君にも責があると主張する可能性があるよ。正式な手続きを踏まずに短絡的な行動をとると、そのことも後々追求されるかもしれない。取り返しがつかないことになるかもしれないよ。」
「‥‥。」
ジークヴァルドは黙り込んでしまった。一度、エドワードの方をちらりと見た。エドワードが泣きそうな目でジークヴァルドを見ていた。
正直、学園長が助言するのは意外だ。アインホルン家の方に味方してしているみたいだよね。なるべく穏便にしたいだけかもしれないけど。
再びノックの音。執事らしい格好の人が来た。アインホルン家から迎えがきたようだ。
執事やジークヴァルド達と一緒に医務室を出て行く時に、エドワードが俺とジョセフィンの方を振り向いた。
少し不安そうな顔をしていたので、「大丈夫」と頷いておいた。
トリシア嬢は、事情聴取に衛兵に囲まれ喚きながらどこかに連れて行かれた。
衛兵が呼ばれたのを聞いた学園長がすっ飛んで来た。
学園長は、医務室で、治療を受けているエドワードに状況を聞いている衛兵の近くに立って渋い顔をしている。
エドワードは、過去にも殴られた事があったようだ。額に傷跡が残っていた。本当、腹立つ。
エドワードは、治療を受けて大分落ち着いた様子だ。衛兵からの質問にもしっかり受け答えしている。
衛兵は、傷の具合と状況を確認した後、医務室を出て行った。
学園長は、切れ長のアイスブル-の瞳で、衛兵が去った後のドアが閉まるのを、ちらりと見た後、
俺の方に目を向けた。
「衛兵を呼ぶなら、一言相談してからにして欲しかったね。プリメレモン君。」
「傷の状態をみてもらった方がいいし、呼ぶのは早い方がいいと思ったんです。」
俺は、椅子に腰を下ろしたまま、学園長を見上げて言った。
オーギュスト・ファルケン侯爵。昨年代替わりして侯爵家を継いだと同時に、学園長に就任した。
兄の後輩だそうだ。俺が、エルストベルク家の次男だという事も知っている。
ちょっと困った顔をしていて、言いたい事を我慢しているみたいに見える。
相談していたら、衛兵を呼べなかったかもしれない。そんな気がしたから、先に呼んだんだけど。
騒ぎにしたくなかったんだろうなとは思うけど文句言うなら、怪我させた方に言ってください。
学園長は、ふうっと息を吐いてから、エドワードの方に向き直った。
「怖い思いをしたね。しゃべると傷は痛むかい?」
「あ、ちょっと‥‥。でも大丈夫です。」
口の端の周りの腫れを確認するように指先でそっと触れてから、エドワードが答えた。
「アインホルン侯爵家には連絡を入れている。もうすぐ迎えが来るだろう。」
そう言ったすぐ後に、ノックの音がした。
ジークヴァルドが、入って来た。
「エドワード!トリシアに殴られたというのは本当か!」
入ってくるなり大声。ジークヴァルドの後ろに赤茶けた髪の人。ジークヴァルドには従者がいると言っていたから、従者の人かな。
その後ろに、フーゴ先輩。
風紀委員に、ジークヴァルドを呼びに行ってもらった。ニーナ嬢抜きで呼んでもらった。
呼ばなくても騒ぎを聞いてくるかもしれないけど、ニーナ嬢がついてくるとややこしくなりそうだったから。
ジークヴァルドはエドワードの腫れた顔を見て、眉を吊り上げた。
「そんな暴力的な女だったとは! あんな女、婚約破棄してやる!」
ジークヴァルドが怒りの声を上げると、学園長が、淡々とした口調で、嗜める。
「ジークヴァルド・アインホルン君。落ち着きなさい。医務室では静かに。」
「‥‥すみません。でもっ‥‥。」
「家同士の話し合いになるだろうから、落ち着いて、ご両親ともよく話し合いなさい。」
「話し合わなくても、暴力女など‥‥。」
「原因には君も関わっているだろう。」
「え?」
ジークヴァルドが、ぽかんとした顔をした。自覚ないの?
「最近、君が婚約者以外の女性を連れ歩いていた事で、トリシア・ブランシュは冷静さをかいた行動をとるようになったようだ。
もちろん、暴力に訴えるのは間違っている。しかも、当事者でもないものを傷つけるなど言語道断だ。
しかし、君も、婚約者に対して、誠実な行動をとっていたとは言えないね。」
「そ、それは‥‥。」
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ブランシュ侯爵家は、君にも責があると主張する可能性があるよ。正式な手続きを踏まずに短絡的な行動をとると、そのことも後々追求されるかもしれない。取り返しがつかないことになるかもしれないよ。」
「‥‥。」
ジークヴァルドは黙り込んでしまった。一度、エドワードの方をちらりと見た。エドワードが泣きそうな目でジークヴァルドを見ていた。
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再びノックの音。執事らしい格好の人が来た。アインホルン家から迎えがきたようだ。
執事やジークヴァルド達と一緒に医務室を出て行く時に、エドワードが俺とジョセフィンの方を振り向いた。
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