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第2章

第44話 偉そうな護衛対象

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ヴォルフガング先生が言うには、今回は、街歩きの護衛に慣れるためであって、護衛対象に付いて歩くだけで良いという。

一番のグループにはトリー殿下がいる。そちらは、本職の護衛騎士が周囲を固めていて、護衛担当のメンバーは、護衛対象と、騎士達の間に配備するのだとか。

トリー殿下のところじゃなかったか。トリー殿下大丈夫かな。
本職の護衛もついているというし、問題ないんだろうけど、気になってしまう。

街歩きは明日で、教室では、時間や経路、注意事項などの説明がされた。護衛対象とともに馬車で街まで出て、街中を歩くのは30分程度だという。
意外と短時間だと思ったら、特進科の人達は、長時間歩き慣れていないからのようだ。確かに、令嬢が長時間歩き回らないか。
一時間も歩き回ったらヘトヘトになるよな。

特進科クラスの方は、街歩きで、買い物を一つしてみる、という実習なんだとか。
あらかじめ決められたルートをグループで歩き,決められたいくつかの店に立ち寄る。グループのうち誰が買い物をしてもよく、誰も買い物をしていなくても
予定された経路の途中でも、時間がきたら終了だと言う。
そうじゃないと延々と買い物をしてしまったりして、授業でなくなってしまうからだという。

特進科クラスの人達の中には、自分でお金を支払って買い物をした事がない人も多いらしい。
始めてのお買い物?それについて行くの、大丈夫なんですかね。

不安そうな顔をしている人も多かったからなのか、ヴォルフガング先生が、補足してくれた。

学園外で、もしも不慮の事態が起きて、戦闘になるようなことがあったとして、護りきれなくても正規の騎士でない騎士科クラスが責任を追求されることはない。
特進科クラスの生徒は、それを了承した上での参加となり、不安なら課外活動は不参加にしたり、自分の家から護衛騎士を用意したりもできるようになっているのだそうだ。
まあ、そりゃそうだよな。

「だが、きちんと騎士らしく振る舞えよ。各班毎に教師か学園が雇った騎士が引率する。」

監視といざという時の戦闘力も確保されているようだ。

授業を終えて帰宅したら、トリー殿下から、明日の街歩きが楽しみなこと、護衛担当が俺達でなくて残念だということが書かれた手紙が送られて来た。
護衛対象を覚えておく為、護衛対象の班の人達とは今日のうちに顔合わせはしたのだ。

3班の護衛対象の二番のグループは男女4人。

エドワード・アインホルン侯爵令息
リアム・サンドラー伯爵令息
ライナ・バーナード伯爵令嬢
ウィノラ・ディーウィット伯爵令嬢

顔合わせだったが、女性二人は、街歩きに関心がいっているのか、名前を名乗っただけで後は、買い物の話を二人でしている。
アインホルン侯爵令息は終始無表情で、サンドラー伯爵令息はじろじろと訝しげに俺達を見ていた。
そして、サンドラー伯爵令息が、ヴォルフガング先生に、女性騎士を護衛メンバーから外すように言って来た。
イリーの魔力がまた漏れ出す。

「あくまでも課外授業の一環です。担当替えはできません。」

ヴォルフガング先生が、きっぱりと撥ね付ける。

「しかし、こんな小柄な女子に護衛など勤まるわけがないじゃないか。」
「先に説明したとおり、これは課外授業です。担当替えは出来ません。不安なら別途護衛を手配してください。」

ヴォルフガング先生が、ごくわからない程度の魔力をぶつけてじんわりと威圧している。
イリーは、拳をぷるぷる言わせている。
「女性に護られる」というのが抵抗があるんだろうか。そもそも、護衛対象は、一人じゃないのに。

「‥‥女子の方達は、女性騎士が居る方が安心なんじゃないですかね。」

話しを向けられた事に気づいて、女性二人が会話を止めた。

「え、ええ。そういえば、そうね。」
「そうね‥‥安心だわ。」

あまり話をきいていなかった様で、二人とも視線が泳いでいる。でも、女性二人が賛同したので、サンドラー伯爵令息は、むぅと口を歪め、黙った。

「リアム。どうせ案山子だ。ムキになるだけ無駄だ。」

アインホルン侯爵令息が、ぼそりとサンドラー伯爵令息に言った。何その言い方、むかつくね!
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