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第1章

第27話 着々と

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一度帰宅して、シャワーを浴びて出て来たら、ジョセフィンに勝手に出かけた事を説教された。

「早く目が覚めたから。ジョスを起こすのも悪いと思ったんだ。」
「勝手に出かける方が良くないですよ!」
「置き手紙はしただろ?」
「そういう問題じゃないんです!」

プリプリ怒りながら、朝食を運んで来てくれるジョセフィンに、トリー殿下と会った話をしたら、今度は、あーあ、という顔をされた。

「お友達になっちゃったんですか? 面倒事は避けたいって言っていたのに。」
「なってくれって頼まれたら、断れないだろ。」
「一人で出かけるからですよ!」
「あ、来週も同じ時間って約束しちまった。」
「はぁ~!?」

朝食を終えて、学園に向かっている間も、ジョセフィンはぶつぶつと言っていた。
トリー殿下と関わり合いになりたくないのか、なりたいのか方針が見えない。方針を明確にしてもらわないと対応のしようがない、というのだ。
まあ、そうだよね。

「‥‥面倒事は嫌なんだけどさ。嫌な奴とかではなかったし‥‥。」
「もう‥‥。報告しておきますからね。」

やっかい事を避けたいなら、徹底的に避けた方がいい。なのに会う約束をしちゃうとか、自分でも甘いかなと思う。
でも、トリー殿下の様子を見ると、ちょっと見た目が自分と似てると思うからか、血縁と思うからか、王宮に一人置き去りにしちゃっているみたいな感じがしてしまって、なんだか放っておけないんだよね。


オスカーの実家のグリース子爵家には無事にメイドを一人潜り込ませることに成功した。
オスカーの姉、イレーネも、一時的に家から逃げるということに応じたという。最初は、自分だけが逃げるという事は出来ないと、首を縦には振らなかったそうだが、
オスカーが爵位を継げるように動き、当主になったら姉も家に戻れて、無理やり結婚もしなくてよいという話をしたら、頷いたそうだ。

俺の最初の計画だと上手く進まなかったってことかな。
‥‥助言を聞いてよかった、と考えておこう。

オスカーが実家から学園に戻って来た後は、潜入メイドから定期的に連絡がくる。
グリース子爵家に金を貸さないように手配をしているだけだが、子爵家はかなり困窮しているようだ。でも、まだ夫人の散在は収まっていないという。
婚姻の時期について、三日に一度はボック男爵に手紙を出しているらしい。
もう少しかな。

グリース子爵に融資を持ちかける相手も手配した。最初は、裕福な商人でもいいかと思ったんだけど、オスカーに爵位を委譲させるように話を持って行く役割があるので
子爵家より家格が高い貴族の方がいい。父の知り合いの伯爵にお願いすることになった。
実際融資はするので、詐欺とかではないんだけど、「なんか役者になって悪役をやるみたいだ」と伯爵はノリノリらしい。
そろそろ、グリース子爵家に接近している頃だ。
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