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第1章
第7話 王子殿下
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入学後にとる授業の話をし始めようとしたところで、会場のざわめきが大きくなって、声がかき消された。
見やると、会場の奥の方には人が集まっている。黄色い歓声のような声が聞こえる。
「トリー殿下、ああ、やっぱり素敵だわ。」
「やはり特進科に進まれるのかしら。」
「もう、特進科予定の方達とお話をされているようだわ。」
ざわめきの声の元は、圧倒的に女子が多い。男子は、話題になっているから様子を見ている感じだ。
俺たちも、ざわめきに釣られて、会場の奥に目を向けたけれど、人が密集しているのしか見えないから、すぐに視線を戻した。
「いや、凄い人気だね。トリー殿下。」
アレクシスは背伸びをして、もう一度人垣の向こう側に目を向けようとしていた。
「本当だね。」
ジョセフィンも、会場の奥に目を向けている。
「説明会の時に少しお姿を見れたけれど、キラキラしていて別世界の人みたいだったわ。」
フローラは、夢見るような瞳をして言った。
国王陛下には、二人の御子がいて、その直系の王子殿下達も既にご結婚されてお世継ぎがご誕生されている。
王弟殿下の第二子であるトリー殿下は、王位継承権で考えれば、それほど高くはないと思う。それなのに、この人気は、王都に来て驚いた事の一つだ。
王族が学園に入学するのが何年か振りだというので、話題になりやすいのかもしれないけど。
「南のドライフルーツいかがかな。あちらのテーブルにあったんだ。」
急に会話に入って来たやつがいる。振り向くと、青白い顔で黒髪を肩まで伸ばした少年が、にこっと笑った。
見ると、干したいちじくが並んだ乗った皿を手にしている。
エルストベルク産の物だ。俺達が王都に向かう少し前に、何種類かドライフルーツを王都に出荷してたっけ。
「やあ、僕は、ヘンリー・シャーロン。よろしくね。ヘンリーって呼んでね。」
そういって、ニコニコしながらドライいちじくの乗った皿を差し出してくる。
「ああ、よろしく。」
何だかペースを乱される。名乗って、皿からドライいちじくを一つ摘んだ。
シャーロン子爵家は、宮廷魔導士の家系だ。魔導士の中でも特殊な呪術師で、代々宮廷に仕えていると聞く。
青白い顔色をしているけど、人懐っこい性格なんだな。
「君は騎士って感じじゃないよね。魔導科コース?」
アレクシスがドライフルーツを一口で食べてから言うと、ヘンリーは、「うーん」と首をひねった。
「ダンジョンに入れるクラスがいいんだよねー。騎士科は、ダンジョン探索があるだろ? 魔導科でダンジョンに入れなさそうなら騎士科かなぁ」
「そんな理由?」
「猫ダンジョンに行きたいんだよぅ」
「‥‥。」
王都近郊、マタタ村近くにある小さなダンジョン、マタタダンジョンは、猫型の魔獣ばかりがいるので、通称「猫ダンジョン」と呼ばれている。
あまり強い魔獣は居ないのでダンジョンのランクは低い。比較的低位の冒険者でも入れるけれど、冒険者でない学生が入るには、
学科で発行される入場許可証が必要らしい。
何で猫ダンジョンに行きたいのかは、誰も聞かなかった。なんとなく察した。
見やると、会場の奥の方には人が集まっている。黄色い歓声のような声が聞こえる。
「トリー殿下、ああ、やっぱり素敵だわ。」
「やはり特進科に進まれるのかしら。」
「もう、特進科予定の方達とお話をされているようだわ。」
ざわめきの声の元は、圧倒的に女子が多い。男子は、話題になっているから様子を見ている感じだ。
俺たちも、ざわめきに釣られて、会場の奥に目を向けたけれど、人が密集しているのしか見えないから、すぐに視線を戻した。
「いや、凄い人気だね。トリー殿下。」
アレクシスは背伸びをして、もう一度人垣の向こう側に目を向けようとしていた。
「本当だね。」
ジョセフィンも、会場の奥に目を向けている。
「説明会の時に少しお姿を見れたけれど、キラキラしていて別世界の人みたいだったわ。」
フローラは、夢見るような瞳をして言った。
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王弟殿下の第二子であるトリー殿下は、王位継承権で考えれば、それほど高くはないと思う。それなのに、この人気は、王都に来て驚いた事の一つだ。
王族が学園に入学するのが何年か振りだというので、話題になりやすいのかもしれないけど。
「南のドライフルーツいかがかな。あちらのテーブルにあったんだ。」
急に会話に入って来たやつがいる。振り向くと、青白い顔で黒髪を肩まで伸ばした少年が、にこっと笑った。
見ると、干したいちじくが並んだ乗った皿を手にしている。
エルストベルク産の物だ。俺達が王都に向かう少し前に、何種類かドライフルーツを王都に出荷してたっけ。
「やあ、僕は、ヘンリー・シャーロン。よろしくね。ヘンリーって呼んでね。」
そういって、ニコニコしながらドライいちじくの乗った皿を差し出してくる。
「ああ、よろしく。」
何だかペースを乱される。名乗って、皿からドライいちじくを一つ摘んだ。
シャーロン子爵家は、宮廷魔導士の家系だ。魔導士の中でも特殊な呪術師で、代々宮廷に仕えていると聞く。
青白い顔色をしているけど、人懐っこい性格なんだな。
「君は騎士って感じじゃないよね。魔導科コース?」
アレクシスがドライフルーツを一口で食べてから言うと、ヘンリーは、「うーん」と首をひねった。
「ダンジョンに入れるクラスがいいんだよねー。騎士科は、ダンジョン探索があるだろ? 魔導科でダンジョンに入れなさそうなら騎士科かなぁ」
「そんな理由?」
「猫ダンジョンに行きたいんだよぅ」
「‥‥。」
王都近郊、マタタ村近くにある小さなダンジョン、マタタダンジョンは、猫型の魔獣ばかりがいるので、通称「猫ダンジョン」と呼ばれている。
あまり強い魔獣は居ないのでダンジョンのランクは低い。比較的低位の冒険者でも入れるけれど、冒険者でない学生が入るには、
学科で発行される入場許可証が必要らしい。
何で猫ダンジョンに行きたいのかは、誰も聞かなかった。なんとなく察した。
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