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第1章
第1話 やってきました王都です
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石造りの頑強そうな門を、ゴトゴトと音を立てながら馬車がくぐり抜ける。
長時間振動を伝えて来た座席シートともこれでお別れか、と思っていたら、車輪が、段差を越えたのか、ドンっと止めをさすような振動がきて、疲れきっていた尻に追い打ちを駆けた。
「痛てて‥‥。はあ、でもやっと到着だな。」
馬車の窓から、ちらりと外を見る。門を通り抜けた先は大きな広場になっていて、広場の端に馬車がいくつも停車していて、乗り合い馬車から人々が降りている光景が見えた。
「ありがとう。降車所で降ろしてくれる?」
御者に声をかけ、天井にぶつからない程度に両腕を上げて伸びをした。
俺の名前は、マーカス・プリメレモン・エルストベルク。エルストベルク辺境伯の次男だ。
ドラヒェン王国の貴族の子息子女は15歳になるとドラン王立貴族学園に入学することになっている。
その入学の2ヶ月前に、入学に向けての説明会が開催されるというので、辺境から王都まではるばるやってきたのだ。
父が領主を務めるエルストベルク領は、王都ドランの南東。馬車で14日程かかる距離にある。
14日だぜ。往復だけで一ヶ月かかるんだ。
それなのに、入学の2ヶ月前という中途半端な時期に来て、説明会を受けろという。結構きつい。
「はーぁ!なんか、ぱぱっと移動できる手段、ないかな。作れないかな?」
「是非作ってください、マーカス様。」
何日もかけて、ようやくたどり着いた王都。どうせ時間がかかるならと、乗り合い馬車に乗ったり、貸し馬車を雇ったりして、少しのんびり目に移動した。
王都手前の街で手配した馬車。乗り心地はまあまあ。座席の座り具合は乗り合い馬車よりはマシなんだけど、貴族の乗るような高級馬車に比べると大分固い。
旅行気分で気は紛れたけど、王都の門をくぐるまで連続4時間くらい馬車に乗っていたので、身体のあちこちが辛い。
馬車を降りる時、ちょっと腰が変な感じで、ふらふらしてしまう。
「お手をお貸しいたしましょうか。お坊ちゃま。」
「ジョス、からかうなよ。」
侍従のジョセフィンは先に馬車を降りて、荷物を抱えている。俺は軽く手をひらひらとさせ、よろよろしながら馬車のステップを踏みしめた。
その時、衝撃を受け、何かに突き飛ばされた。
「あ!」
目の端に、ジョセフィンが抱えていた鞄が宙を舞うのが見えた。そして、鞄の持ち手を男性のごつごつした手が掴み、凄い勢いで走り去って行く。
スリ!?油断した!ここ王都だった!
地面に転ぶが、なんとか追いかけようと、スリが走り去った方向を目で追った。
逃げて行く男が急に、何かに弾かれたように転んだ。そして、近づいて来た人物に蹴りを入れられている。
オレンジ色の髪をした騎士服を来た男性が、スリの男の腕を掴んで捻り上げた。スリの男が悲鳴を上げる。
一瞬の事で呆気にとられてしまった。
「マーカス様!お怪我は?」
ジョセフィンが俺を助け起こそうとする。
「だ、大丈夫だ!」
ジョセフィンに手で支えられながら起き上がり、スリと騎士が居るところに向かった。身体があちこち痛む。
俺が近づくと、騎士は、片手でスリの腕をひねり上げたまま、もう片方の手で俺に鞄を差し出した。
「怪我はないかい。」
騎士の男の赤褐色の瞳が俺の手足の怪我を確認するようにちらりと動いた。
「はい‥‥。大丈夫です。」
「それは良かった。」
騎士の男が微笑んだ。涼しげな笑顔。背が高い。筋骨隆々と言う感じではないけど、筋肉質でバランスがよい体つき。
辺境の騎士はもっとマッチョなんだけど、都会っぽい。でも弱そうじゃ無い。
「あ、ありがとうございます。」
「うん。」
騎士が少しくすぐったそうに笑った。
笛の音がして、衛兵達が駆けてくる。
「王都は初めてかい?この辺はスリが多いから気をつけるんだよ。」
「王都は三回目です。久しぶりで一寸油断しました。気をつけます。」
「うん」
この場所は王都の南門近く。王都の外から来た人達の馬車が停まる広場近く。往来が激しい上に、王都の外から来たばかりの俺みたいなお上りさんが多い。
考えてみれば、確かにスリに狙われやすい場所だった。
衛兵達が近づいて来て、騎士がスリを衛兵に引き渡した。門の方で見ていたらしい兵士が一人駆けて来て、何か説明をしている。
「マーカス様。申し訳有りません。僕が油断したばかりに‥‥。」
両手に荷物をしっかりと抱え込んで、ジョセフィンが申し訳なさそうに俯いた。
オレンジ色の騎士は、衛兵に状況を告げた後、俺に軽く手を振り去って行った。
俺はお辞儀をした後、騎士が去って行く方向を見つめた。
長時間振動を伝えて来た座席シートともこれでお別れか、と思っていたら、車輪が、段差を越えたのか、ドンっと止めをさすような振動がきて、疲れきっていた尻に追い打ちを駆けた。
「痛てて‥‥。はあ、でもやっと到着だな。」
馬車の窓から、ちらりと外を見る。門を通り抜けた先は大きな広場になっていて、広場の端に馬車がいくつも停車していて、乗り合い馬車から人々が降りている光景が見えた。
「ありがとう。降車所で降ろしてくれる?」
御者に声をかけ、天井にぶつからない程度に両腕を上げて伸びをした。
俺の名前は、マーカス・プリメレモン・エルストベルク。エルストベルク辺境伯の次男だ。
ドラヒェン王国の貴族の子息子女は15歳になるとドラン王立貴族学園に入学することになっている。
その入学の2ヶ月前に、入学に向けての説明会が開催されるというので、辺境から王都まではるばるやってきたのだ。
父が領主を務めるエルストベルク領は、王都ドランの南東。馬車で14日程かかる距離にある。
14日だぜ。往復だけで一ヶ月かかるんだ。
それなのに、入学の2ヶ月前という中途半端な時期に来て、説明会を受けろという。結構きつい。
「はーぁ!なんか、ぱぱっと移動できる手段、ないかな。作れないかな?」
「是非作ってください、マーカス様。」
何日もかけて、ようやくたどり着いた王都。どうせ時間がかかるならと、乗り合い馬車に乗ったり、貸し馬車を雇ったりして、少しのんびり目に移動した。
王都手前の街で手配した馬車。乗り心地はまあまあ。座席の座り具合は乗り合い馬車よりはマシなんだけど、貴族の乗るような高級馬車に比べると大分固い。
旅行気分で気は紛れたけど、王都の門をくぐるまで連続4時間くらい馬車に乗っていたので、身体のあちこちが辛い。
馬車を降りる時、ちょっと腰が変な感じで、ふらふらしてしまう。
「お手をお貸しいたしましょうか。お坊ちゃま。」
「ジョス、からかうなよ。」
侍従のジョセフィンは先に馬車を降りて、荷物を抱えている。俺は軽く手をひらひらとさせ、よろよろしながら馬車のステップを踏みしめた。
その時、衝撃を受け、何かに突き飛ばされた。
「あ!」
目の端に、ジョセフィンが抱えていた鞄が宙を舞うのが見えた。そして、鞄の持ち手を男性のごつごつした手が掴み、凄い勢いで走り去って行く。
スリ!?油断した!ここ王都だった!
地面に転ぶが、なんとか追いかけようと、スリが走り去った方向を目で追った。
逃げて行く男が急に、何かに弾かれたように転んだ。そして、近づいて来た人物に蹴りを入れられている。
オレンジ色の髪をした騎士服を来た男性が、スリの男の腕を掴んで捻り上げた。スリの男が悲鳴を上げる。
一瞬の事で呆気にとられてしまった。
「マーカス様!お怪我は?」
ジョセフィンが俺を助け起こそうとする。
「だ、大丈夫だ!」
ジョセフィンに手で支えられながら起き上がり、スリと騎士が居るところに向かった。身体があちこち痛む。
俺が近づくと、騎士は、片手でスリの腕をひねり上げたまま、もう片方の手で俺に鞄を差し出した。
「怪我はないかい。」
騎士の男の赤褐色の瞳が俺の手足の怪我を確認するようにちらりと動いた。
「はい‥‥。大丈夫です。」
「それは良かった。」
騎士の男が微笑んだ。涼しげな笑顔。背が高い。筋骨隆々と言う感じではないけど、筋肉質でバランスがよい体つき。
辺境の騎士はもっとマッチョなんだけど、都会っぽい。でも弱そうじゃ無い。
「あ、ありがとうございます。」
「うん。」
騎士が少しくすぐったそうに笑った。
笛の音がして、衛兵達が駆けてくる。
「王都は初めてかい?この辺はスリが多いから気をつけるんだよ。」
「王都は三回目です。久しぶりで一寸油断しました。気をつけます。」
「うん」
この場所は王都の南門近く。王都の外から来た人達の馬車が停まる広場近く。往来が激しい上に、王都の外から来たばかりの俺みたいなお上りさんが多い。
考えてみれば、確かにスリに狙われやすい場所だった。
衛兵達が近づいて来て、騎士がスリを衛兵に引き渡した。門の方で見ていたらしい兵士が一人駆けて来て、何か説明をしている。
「マーカス様。申し訳有りません。僕が油断したばかりに‥‥。」
両手に荷物をしっかりと抱え込んで、ジョセフィンが申し訳なさそうに俯いた。
オレンジ色の騎士は、衛兵に状況を告げた後、俺に軽く手を振り去って行った。
俺はお辞儀をした後、騎士が去って行く方向を見つめた。
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