自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第7章

第464話 別れ

その様子を見てピンクサーモン令嬢が笑い出した。

「あははっ！計画通りじゃないですかぁ！クラウス様ぁ、私と婚約しましょうよぉ！」
「何言ってる！‥‥あ！エッダ！待ってくれ！考え直してくれ！」

エッダさんが踵を返してクラウスさんに背を向け歩き出すとクラウスさんは追い縋るように言った。エッダさんは立ち止まり、クラウスさんの方に向き直ると
膝を少し曲げて挨拶をした。

「さようなら、クラウス様。ご無事で何よりでしたわ。お元気で。」
「エッダ！」

エッダさんはもう一度クラウスさんに背を向けるともう振り帰らずに歩いて行ってしまった。

「エッダァッーー！」

クラウスさんがエッダさんを追おうとするのを、レナードさんがクラウスさんの腕を引っ張って止めた。

「やめとけ。今はそれより今まで何処にいたとか色々説明することがあるだろう。」
「ああ‥‥。」

クラウスさんはレナードさんにそう言われてガックリと肩を落とした。それから騎士達が動き出して、クラウスさんを何処かに連れて行った。
ピンクサーモン令嬢も別の場所でお話しを聞くと言われて連れて行かれた。

クラウスさんとエッダさんやピンクサーモン令嬢とのやりとりがあった間に、他の黒い服の軍団は落ち着いたみたいだ。
ほとんどが冒険者だったらしく、クラウスさん達の様子を見物した後は冒険者ギルド窓口に行くと言って、解散してゾロゾロと歩いて行った。

「‥‥良く分からないね。自分で婚約破棄の宣言してたのに。何で騒いでいるんだろう。」
「さあ、時間が経って気が変わったんじゃないかな。」

去っていくエッダさんの背中に悲痛な声で呼びかけていたクラウスさんの様子を見て、ギルベルト君が不思議そうに首を傾げた。
ラルフ君が肩を竦めた。ロルフ君が首をゆっくり横に振る。

バタバタという足音がしてサミュエル君が駆けてきた。

「もう出発するって！」
「ああ、そうなんだね。気をつけてね。」

見ると宿の前の道に馬車が出ていて、エッダさんが乗り込んでいるところだった。
クラウスさんとのことがあるから、さっさと出発することにしたのかな。
サミュエル君は、僕達との別れの挨拶が中途半端だったからか、もう一度挨拶しに来てくれたらしい。

「きっと来てよ！クリューガー領に！」

そう言ってから馬車に乗り込み、動き出した馬車の窓から何度も手を振ってくれた。

去っていく馬車が小さくなるのを眺めていたら、ヤンティス君とマイルズ君が走ってきた。

「あ！サミュエルの奴、もう出発したのか！」
「あー‥‥。」

ヤンティス君達も、別れの挨拶をしたかったらしい。
でも、クラウスさんが突然帰ってきて大騒ぎだったものね。

去っていく馬車を見つめていたヤンティス君とマイルズ君はちょっと寂しそうな顔をしていた。