自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第7章

第450話 貴族の婚約話とは

ギルベルト君がボソリと僕の隣から呟く様に言った。

「二人のどちらかと婚約する可能性とかはないの？」

ギルベルト君の言葉を聞いてニコラちゃんとミリーちゃんは目を見開いて顔を見合わせた。

「そうね！カイルお兄様かイーサンお兄様が、エッダお姉様と婚約してくれれば‥‥！」

キャー！って嬉しそうにニコラちゃんとミリーちゃんが互いの手を合わせて飛び跳ねた。
「前から思ってたんですわ！クラウス様とじゃなくて、イーサンお兄様と婚約すれば良いのにって。」
「そうよ！ねえ！お母様に相談してきましょうよ。」
ニコラちゃんとミリーちゃんが盛り上がって来たのを、サミュエル君が慌てて止めた。

「ちょ、ちょっと待って！姉上のことは今はそっとしておきたいんだ！」
ラルフ君とロルフ君も頷いた。

「そうだよ。それじゃあ、噂している人と同じになっちゃうよ。」
「ええ！？」

ニコラちゃんとミリーちゃんははっとして、顔を赤くした。それからちょっとほっぺたを膨らませた。

「‥‥エッダお姉様に嫌な想いをして欲しくないですわ。でも、幸せになって欲しくって‥‥。勝手に騒いでごめんなさい。」
「ごめんなさい。」
「うん‥‥。姉上を気遣ってくれてありがとう。」
ニコラちゃんとミリーちゃんが謝ると、サミュエル君はきゅっと唇を結んで頷いた。

それからサミュエル君はふぅっと小さく溜め息をついてから、ギルベルト君の方を向いた。

「‥‥‥婚約ってさ、家のことが関係してくるでしょう？　だから僕は何とも言えないんだ。
以前、母上に同じような事を聞いたら、凄く怒られちゃったんだ。噂になったらどうするって。」
「ああ、噂になっちゃうと、家同士で考える有利な相手との婚約に影響しちゃうからか。」
「そう！母上がそんなこと言ってたよ！凄い！良くわかったね！」

「ややこしいよねぇ。好きにさせてもらえないのって‥‥、ああ、そうか‥‥。」
ギルベルト君は何か一人で納得したみたい顔をした。

僕はよくわからなくて、首を傾げた。サミュエル君も同じだったみたいで、ギルベルト君に訊いていた。

「ああ、そうか、って？何か分かったの？」
「分かったというか‥‥。家同士の話なんだなぁって思って納得しただけだよ。」
「ええ？良くわからないよ。」
「うーん。貴族の家同士って，色々利益だとか関係してくるでしょ。そこに噂とかも入ってくるとややこしくなるんだろうなって思っただけだよ。」
「うーん？」

サミュエル君は、納得したようなしないような顔をして首をひねった。

おしゃべりをしながら歩いていたら、足湯カフェが見える所まで来ていた。
ニコラちゃんが足湯カフェの方を指差した。

「ねえ。あのカフェに行ってみましょうよ。」
「もう蛙魔獣は出ないしね。」
「出たら困るわよ！」

アハハと笑いながら足湯カフェの方に足を向けた。
考えてみたらサミュエル君達に最初に会ったのは、足湯カフェの裏手で足湯をしていた時だったんだよね。
その時に、ニコラちゃんとミリーちゃんが、冬眠した蛙魔獣を持ったヤンティス君とマイルズ君に追い回されていて、サミュエル君が止めに入って来て‥‥。

そんな回想をしていたからかどうかわからないけど、皆で足湯カフェに入ってみたら
ヤンティス君とマイルズ君に遭遇した。