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第7章

第373話 足湯カフェ

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「はぁ‥‥」
カイルさんは溜め息を吐いた。

「クラウスの奴、戻って来たらとっちめてやるぞ。エッダ嬢をこんなに哀しませるなんて‥‥。」
ぐぐっと拳を握りしめてる。クラウスさんに会ったらぶっちゃうかもしれないなぁ。

ちょっと気まずくて重苦しい空気を変えようと思ったのか、ラルフ君とロルフ君がカフェ裏の様子を見に行こうと言い出した。

「カフェ裏も綺麗な石畳になっているか気になってきたんだった。あ、でもその前に注文だったね。」

カフェに入ってすぐに言い争いが展開されていた状況だったから、注文すらしていなかった。やばいよね。
慌てて適当に何か注文しようとしたら、カフェの店長さんがニコリと笑った。

「どうぞ、先にカフェ裏をご覧になってください。外でお召し上がりになる場合、お飲みになりたいものも変わるでしょうから。」

あ、これは外でお茶をお勧めされているような気がする。
という事はカフェ裏に期待大かな。

そっとカフェ裏の用水路に面したスペースに続く扉を開けてみると、東屋が出来ていた。それもちょっとお洒落な感じだ。
用水路を上流で分岐させているようで、洗濯をする場所とは流れが違う所に足下にお湯が流れて行く東屋。

「これは!‥‥足湯スペース?」
東屋の屋根の下にテーブルとベンチ。そして足下にお湯。蛙魔獣の時の騒動を踏まえて水路は洗濯ペースと足湯の箇所以外は柵で囲まれている。
従業員のお姉さんがニコニコしながらメニューを持ってたっていた。

「お外でお召し上がりになりますか?」

僕らは一瞬だけ顔を見合わせて、すぐに返事をした。
「もちろん!」

頬を撫でて行く風は冷たいけど、膝から下をお湯につけていてぽかぽか。ユガーランのダンジョン産のダンレモを使ったホットダンレモネードを飲みながら、新しく整備されたカフェ裏の光景を改めて眺める。

「雨が上がってからあまり時間経ってなかったのに、凄く整備されてるよね。見違えた感じだよ。」
「ホントだよね。足湯カフェとか作られるとしてももっと後かと思ってた。」

お姉さんが、サービスだと言ってナッツ入りの焼き菓子を持って来てくれた。

「フフフ。足湯のアイデアをいただいてから、他で真似される前に急ごしらえでも良いから作ろうって、店長が張り切ってたんですよー。」

焼き菓子は足湯のアイデアのお礼らしい。
あ、でも流行るかどうかはわからないんだよね。
ニコラちゃんとミリーちゃんは、僕達が足湯に浸かるのを見て、やってみたい!って言いだしたんだけど、ドレスとか靴とか色々な都合でエッダさんにダメって言われてた。

「面白そうですけれどね。」

エッダさんは、少し困ったように首を傾げて上品に微笑んでいた。
やっぱり、足湯は令嬢向きじゃないみたいだ。
カイルさんとイーサンさんは面白そうって興味を持ってくれてた。だけど、ニコラちゃん達が入れないので遠慮していた。

「母上とか足先が冷えるとか言ってたから、やってみたら嵌りそうなんだけどなぁ。」

ロルフ君がお湯の中で足をプラプラとさせている。ラルフ君は、うーん、と考える様子。

「そうなんだよね。僕達が足湯したって話しをしたとき、興味持ってたみたいだったんだよ。だけど、『屋外で足を浸けるのはねぇ』って、言ってたよ。」
「屋外がダメなのかな。」
「裸足になってドレスの裾をめくって足首を出したりとか、やっぱり人前では無理みたい。」
「じゃあ,屋内?」
「宿の個室とかがいいんじゃない?」
「足湯カフェから遠ざかったね。」

足湯カフェに拘らず、足湯単独で考えた方がよいかもしらない。
フットバスみたいな魔道具を考えてみようかな。

そんな事を考えていたら、ニコラちゃん達が、もう宿に戻ると挨拶に来た。

「エッダお姉様が呼ばれてるんですって。またね!」
「こんど、足湯出来る服装してくる。」

そうして彼らはちょっと名残惜しそうに宿に帰って行った。
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