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第7章

第372話 ちょっと気まずい話題

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王都の衛兵隊に居た事がある人って、あの髭もじゃの人かな?衛兵隊に居た人だったのか。衛兵隊って警察っぽいところだよね。だからかな、ちょっと「警部」みたいな感じだった。

カイルさんとイーサンさんもクラウスさんの事を考えて、暗い表情で落ち着かない様子だ。

「俺達も捜索に加わろうかと思ったんだけど、姉上に止められたよ。
もし、俺達が山を捜索している途中に足を滑らせて転落したりしたら、更に捜索隊を出す事になるってさ。」
「地元民でもないのに、迷ったらどうするとかも言われたな。」
ふぅ、とカイルさん達が小さく溜め息をついた。

確かに、カイルさん達まで行方不明になったら大騒動になっちゃいそうだよね。

「せめて、ここで出来る情報収集くらいはしておこうと思ってさ、リズベット・マカロ嬢に何か知らないか、話を訊きに言ったんだけど、泣いていてロクに話が出来なかったよ。」
「リズベット・マカロ嬢?」

誰だか良くわからなくて聞き返したら、広場の祭りのときにクラウスさんと一緒に居た令嬢の事だそうだ。

「あ、ピンクサーモン令嬢‥‥。」
「ちょ‥‥。」

小さい声で呟いただけなのに、隣に居たギルベルト君には聞こえていたらしくて、僕の袖をちょっと掴んだ。
リズベット嬢って言うんだね。あの令嬢‥‥。うん‥‥?

「泣いてばかり?」
「そうだよ。何度か宿に訪ねて行ったんだけど、まだ落ち着かないみたいでね。」

僕達は顔を見合わせた。言ってよいのかな?
告げ口みたいになっちゃうかな、と思って躊躇していたら、ラルフ君が口を開いた。

「さっき、裏通りを歩いている所を見かけましたよ。今は元気になったみたいでした。」
「お、そうか。それなら後でもう一度訪ねてみるよ。ありがとう。」

カイルさんがニッコリとイケメンスマイルでラルフ君にお礼を言った。ラルフ君は、少しだけ微妙な表情で頷いた。
楽しそうにしてたとかは、僕達が受けた印象なだけだから、言わなくても良いのかもね。‥‥ちょっとモヤッとはするけど。

ニコラちゃんとミリーちゃんがイーサンさんの所に駆け寄って来た。

「ねえ、ゼリルダおばさま達、喧嘩なさってた?」
「勝てそうだった?」

イーサンさんの顔を不安げに見上げた。

「喧嘩?‥‥ああー、喧嘩じゃないよ。お話し合いだよ。」

イーサンさんがちょっと困ったように眉毛を下げた。

「ゼリルダさん達はね、お家同士の大事な話をしているだけだからね。喧嘩ではないんだよ。」
「でも、おばさま達、とっても怖い顔をなさってたわ。ヤンティスのお父様も。」
「大事なお話し合いだからね。緊張していたんだよ、きっと‥‥。」

ニコラちゃん達が泊まっている宿では、エッダさんのご両親とクラウスさんのご両親が集まって話し合いをしているところらしい。
それで、子供達は別の場所に居た方が落ち着くだろうということで、エッダさんと一緒にカフェに来ていたのだそうだ。
同じ理由で、カイルさん達もカフェに誘ったんだって。

「だって‥‥ね。お母様まで怖い顔をなさってたのよ。」
「怒られるかと思っちゃったわ。」

ニコラちゃん達のお母さん達も付き添いで付いているのか、呼ばれたら話に加われる様に待機をしているのか、緊張した面持ちで宿に居るそうだ。
何か書類を書くときに証人になるとかするんだって。

「気分転換というより、カフェに逃げて来たみたいになっているのよね。私は当事者なのに。」
そう言ってエッダさんは苦笑した。

「家同士の話なら、そうなるのは仕方ないさ。だって‥‥、いや‥‥、今クラウスも不在だしさ‥‥。」

クラウスさんの名前を出すときに、カイルさんはちょっと気まずそうに口をモゴモゴさせた。
エッダさんが繊細な眉を少し歪めた。

「ええ‥‥、クラウスも同席しているならともかく、私だけが話し合いに出るのはね‥‥。」
エッダさんの声が少し上擦った。泣きそうなのかな。うーん‥‥。気まずいね。
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