自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第7章

第371話 カフェで揉め事

彼らと同じ方向に進むのを何となく避けて、反対の方角に進んでみた。また曲がりくねった小道を通ったら知っている道に出て来た。カフェに続いている道だった。

カフェ裏がどうなったか気になったので、カフェに向かってみた。
カフェの前の通りも均等に並んだ石畳で綺麗になっている。この分ならカフェ裏も綺麗になっているかもと期待してカフェに足を踏み入れた。
そうしたら、何か言い争いをする声が聞こえて来た。

「兄上は行方不明なんだぞ！」
「その君の兄上が姉上に酷い事行ったんじゃないか！」
「だからって、兄上が行方不明だっていうのに、暢気にお茶ですか！婚約者なのに！」
「婚約破棄宣言したのは、そっちだろう！」

ヤンティス君とサミュエル君が言い争っていた。カフェの奥のテーブルにエッダさんとニコラちゃん、ミリーちゃんが居る。
エッダさんは当惑した顔をしていたけど、僕達と目が合うと意を決したように立ち上がってサミュエル君達に声をかけた。

「他の方達もいらしたわ。こんな場所で怒鳴り合うのは迷惑になるからお止めなさい。」
「偉そうに言うな！」

ヤンティス君がエッダさんに食ってかかる。サミュエル君がエッダさんを守るように立ちはだかった。

「わぁ！わぁ～？喧嘩かなぁ～。」
「どうしよう！冒険者ギルドのギルマスの所に言いにいったらよいの～？」
「領主夫人のところとか～。」

ラルフ君とロルフ君が大きな声で会話を始めた。なんだか棒読みだ。
ガリオンさんのことを話題に出したからか、ヤンティス君がぎゅっと唇を結んで俯いた。

そこに、カイルさんとイーサンさんがやってきた。カフェに足を踏み入れて妙な雰囲気に気付いて、不思議そうな顔をしている。

「ふん！マイルズ！行こう！」
「お、おう！」

ちょっと気まずそうな顔をしてヤンティス君はマイルズ君と一緒に、カイルさん達の脇をすり抜けてカフェを飛び出して行った。
シーンと一瞬静まり返る店内。
チラリと振り返って店の外を一瞥した後、カイルさんが言った。

「何があったの？」

エッダさんは、広場での婚約破棄の日以来、宿の部屋に籠っていたそうなんだけど、雨が止み、外出自粛令も解けたので気分転換にと、サミュエル君やニコラちゃんがカフェへと誘ったらしい。
カフェに向かうとき、カイルさんとイーサンさんは出かけていたので、宿の受付にカフェに向かうと伝言を頼んでいたのだそうだ。

カフェについて暫くしたらヤンティス君達がやって来て、先程のような状況になったらしい。
ヤンティス君としては、お兄さんが行方不明で心配なのに、お兄さんの婚約者のエッダさんがカフェで寛いでいたのが癇に障ったようだ。お兄さんが婚約破棄をしたのにとは思うけど‥‥。

状況を聞いて、カイルさんとイーサンさんは難しそうな顔をした。カイルさんはポンポンとサミュエル君の頭を撫でた。

「ヤンティス君からしたら、心配で仕方ないんだろう。」
「だからって！姉上を悪く言うなんて！」
「悪く言う方が悪いのは確かだけどな。ヤンティス君は今は何を言っても落ち着かないだろうから、近寄らない方が良いと思うよ。」
「むぅ～‥‥。」

カイルさんとイーサンさんはクラウスさんの事を心配していて、今朝も情報収集しに冒険者ギルドの窓口に行っていたそうだ。

「クラウスの親父さん、ヴァルガー子爵が呼んだという人が冒険者ギルドに来ていたよ。王都の衛兵隊にいた事がある人らしい。クラウスの捜索に加わるのだそうだ。」