自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第7章

第336話 絡む人々

「ダンジョンかぁ。トラップって危ないのかな。」
ギルベルト君が、去って行く男の人達の後ろ姿を見つめながら言った。

「ここのダンジョンはトラップが多いらしいって宿の人から聞いたよ。」
ラオウル君が答えたら、ラルフ君とロルフ君がパッとラオウル君を見た。

「ラオウル君、ダンジョンに行くの？」

この中ではリヒャルトさんとインゴさんを除くとラオウル君だけが正規冒険者だ。ラルフ君達はもう少しして12歳になったら正規登録するって言っていたけど。
ラオウル君は首を横に振った。

「このダンジョンにはまだ行かないよ。情報として聞いておいただけだよ。」
「そうなんだぁ。」
「いつか皆で行きたいね。」
「ね。」

そんな話をしていたら、後ろから笑い声が聞こえて来た。

「ははははは！いつか皆でダンジョンに行きたいだってぇ？」
「クラウスさまぁ、どうかなさって？」

振り向くと、クラウスさんが居た。冒険者の格好じゃなくてちょっとお洒落な街歩き用な雰囲気。隣にサーモンピンクの髪をした令嬢がいた。

「いや、このガキ共がダンジョンに行きたい何て言っていたから、思わず笑っちゃって。」
「まあ。ダンジョンって危険な場所なんですわよね？」
「そうさ。実力が認められた冒険者しか行けない場所だよ。」
「そうなんですの？クラウス様はダンジョンに行かれたことはございますの？」
「そりゃ当然さ。」
「流石ですわぁ。」

クラウスさんはサーモンピンクの令嬢とぴったりとくっついたまま、二人で話して盛り上がっている。挨拶もないし、ずっと二人でしゃべっているだけだし。どうしよう‥‥。

あ！僕達別に話しかけられたわけじゃなくて二人でしゃべっているだけだったのかも。
だったら、このままスルー‥‥して行っちゃっていいかな。失礼になっちゃうかな。
そんな事を考えていたら、クラウスさんの後ろから令嬢が近付いて来て、怒ったような声で言った。

「クラウス様。その女性と接近しすぎですわ。」
「エッダ、何でここに？」
「クラウス様が朝食の約束のお時間にいらっしゃらなかったから探しに出たんですわ！」

エッダ嬢だった。仁王立ちでクラウスさんとサーモンピンク令嬢に文句を言っている。

「あなたも！クラウス様は婚約者がいるんですのよ。婚約者がいる男性と接近しすぎですわよ。」
「ええ～。こわぁい。」

サーモンピンク令嬢が，ぎゅっとクラウスさんの腕にしがみついた。
クラウスさんは、エッダ嬢に向かって強い口調で言った。

「エッダ。よさないか。俺はリズベットを案内しているだけだ。リズベットは、この保養地に来たばかりなんだよ。親切にしてあげるべきじゃないのか。
くだらない嫉妬はよせ。」
「！‥‥嫉妬などっ！していませんわ！」

エッダ嬢が顔を真っ赤にして肩を震わせている。
何だか喧嘩が始まっちゃった。‥‥どうしようかな。
ふと、皆の顔を見上げたら、ちょっと呆れたような顔をしてクラウスさん達を見ていた。ラオウル君は僕と目があったら、「いこうか。」と小声で言った。

「行こ行こ。」
「ほっとこ。」

ラルフ君とロルフ君もそう言うと、通りの奥の方にむかってそうっと歩きだした。
僕達も、クラウスさん達の言い争いを少しだけ気にしつつ、彼らから離れて行った。
10m位離れても、まだ彼らの言い争いは続いていた。僕達が離れて行っても気にされている様子をない事を確認して、スタスタと歩く速度を速めた。