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第6章

第305話 ストーブカフェ

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子爵令嬢妹が冒険者ギルドを辞めたと言っていたけど、ギルベルト君の予想では「辞める」宣言をしただけで正式な手続きはしていないだろうって言っていた。
どっちみち見習い冒険者の場合は半年全く依頼や講習会を受けたりしなかったら、見習いの資格は取り消しになるらしい。ポイントも無効になっちゃうんだって。

正式な手続きをすると色々書類を書く事になる上に再開するときにちょっと面倒なんだそうだ。改めて加入する意思表示をしっかりするとかなんとか。
活動していなくてギルド資格がなくなった場合というのは、怪我とか病気とかでもありえることだから、また活動しますって言えば済むんだって。
活動ポイントとかはゼロからにはなるみたいだけどね。

脱退の為にあれこれ書類書いたりするより、活動しない方が簡単だから、活動しない宣言だけしていったんじゃないかとギルベルト君は考えているそうだ。
まあ、誰かに影響ある訳じゃないしどっちでもいいのかな。

子爵令嬢妹は冒険者活動を辞める宣言したけど、子爵令嬢姉とケン様は冒険者ギルドに顔を出しているようだ。

「‥‥本当に『顔を出している』だけなんだよねぇ。」

冒険者ギルド近くに最近出来たカフェで熱々のお茶を飲みながらギルベルト君が言った。

「顔出しているだけ?」
「うん。依頼を受けていないし,講習会にも出ていないんだって。」
「え?どうして顔だけ出してるの?冒険者って何か出頭義務とかあるの?」

ギルドに登録したら依頼を受けない日も行かなきゃいけないのかな、と気になって聞いてみたらギルベルト君もラオウル君も首を横に振った。
ラオウル君が説明してくれた。

「依頼を受けに来ているらしいよ。でも気に入った依頼がないみたいだよ。」

窓口の人と話をして、結局文句を言って帰って行くらしい。

「なんなの?それ?文句言うなら来なきゃいいのに。」

僕がそういうと、ギルベルト君が激しく同意するように大きく頷いた。ラオウル君はちょっと肩を竦めた。

「窓口の人と話をしているのをチラッと聞いた感じだと、多分お金を稼ぎたいみたいだったよ。でも、薬草摘みなど草刈りの真似事のような事は嫌だって。
荷物運びも、他人の荷物なんて汚いから持ちたくないって言っていたよ。」
「何それ。初級冒険者の仕事って大半は薬草採取か荷物運びだよね。後、掃除とか。」
「掃除の依頼は絶対受けない気がする。」
「だね。何の依頼なら良いんだろう。」
「判らない。魔獣討伐とかかな。」

ラオウル君はそう言いながらストーブ脇の台に干していた手ぬぐいをちらりと摘んで、乾燥具合を確認していた。

僕たちが今来ているストーブカフェは屋外に簡易のストーブのような物がいくつか配置してあって、その周りに椅子が置いてあるアウトドアっぽいカフェなんだ。
野営道具みたいなお茶セットが有料で貸し出されて、それを使って自分達でお湯とかを沸かしてお茶を飲むんだよ。
お茶タイプのバーベキュー場みたいな感じ。

冒険者ギルド員にちょっと人気なのは、依頼から帰って来てちょっと装備とかが汚れたりした時、ギルドの裏手の井戸場で装備を洗ってストーブカフェで温まりながらストーブの熱で装備を乾かせるかららしい。
冒険者パーティの場合は、装備の手入れをしながら依頼の反省会をしたり次の依頼の打ち合わせができるのもよいんだって。

柵で囲まれていて外からは見えるけど、受付と押さないと入れない様になっている。暖かそうで皆ワイワイしているのが外から見えるから最近注目されているお店みたいだ。

エルストベルクは王国の中では温暖な方だけど、冬だし寒い事は寒いから屋外でストーブ囲むのって暖かくて楽しい。
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