自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第6章

第286話 聞き込み

どういうこと？
「平民！」って叫ぶ女の子って、一人しか思い浮かばないんだけど。

「それは‥‥、君達が野営の講習会を受けていた時に同じ会場にいた子爵令嬢姉妹の妹の方ということか？」

腕組みをして聞いていたロトヴィックさんが、キーランド君の方に顔を向けて聞いた。

「そうだよ！意味不明に偉そうな姉妹！の妹の方！‥‥‥二人とも偉そうだったけど！」

キーランド君が、思い出したのか怒った口調になってきた。

「ほう‥‥。そういえば妹の姿が見えなかったな‥‥。」
「‥‥ギルドマスター‥‥、あの姉の方をここに呼んでも？」

ロトヴィックさんは考え込んでいる様子だったけど、クリフォードさんは長椅子から腰を浮かし気味に落ち着かない様子になった。

「うむ‥‥。」

チラリと，ロトヴィックさんが叔父様の方に目を向けた。叔父様が頷く。

「同席しますよ。」
「いいのか？騒がしいぞ。‥‥子供を避難させるなら今のうちだからな。」

ロトヴィックさんはそう言うと、壁際に立ってメモを取っていたギルド職員に指示を出した。

「なんですの！ケン様を探してって言ってるのに、なぜ妹の事を聞かれるんですの！」

ギルド職員に呼ばれて、ギルド長室にやって来た子爵令嬢姉は、ロトヴィックさんが子爵令嬢妹の行方を聞いたら怒りだした。

「君の妹が、彼の妹の物を強奪して逃亡したそうだ。君の妹はどこだ。」

ロトヴィックさんは、冷静な口調で子爵令嬢姉に尋ねている。

「なんですって！強奪だなんて！無礼ですわよ！」
「まともに話を聞かない方が無礼だろう。質問にも答えないようなら衛兵を呼ぶぞ。
強奪と誘拐の容疑で調査してもらう。」
「はぁ！！！？？？？？」

子爵令嬢姉の眉がつり上がった。

ちなみに僕達は壁際の隅っこに立って、様子を見てる。もし暴れだしても巻き込まれないように、だって。
暴れちゃったりするんだろうか。

「い、妹の行方なんて知りませんわ！！」

衛兵を呼ぶと呼ばれて少し動揺したのか、子爵令嬢姉が質問に答え始めた。

「いつも一緒に行動しているんじゃないのか。」
「わかりませんわ！‥‥今朝、少し叱ったら、怒って出て行ったんですわ。‥‥多分拗ねて何処に隠れているんですわ。あの子‥‥。」

子爵令嬢姉がボソボソと言う。

「子供が何処かに隠れている時間帯じゃないだろうが。叱ったってなにかあったのか。」
「‥‥靴が汚れたから新しい靴が欲しいって言い出して‥‥。冒険者登録もしたのだから、自分で稼ぎなさいって言ってやりましたの。」
「冒険者登録って、まだ見習いだろう。で、それは何時のことだ？」
「今朝ですわ‥‥。」

子爵令嬢姉がそこまで言うと、それまで黙ったまま話を聞いていたクリフォードさんが子爵令嬢姉に詰め寄った。

「既に帰宅していたりはしないのか！行きそうな場所はないのか！」
「ちょっと‥‥なんですの？無礼ですわよ！」
「君の妹が僕の妹の物を奪って逃げたんだ！追いかけた僕の妹が行方不明になってる！訴えるぞ！ちゃんと答えろ！」
「‥‥帰った様子はなかったですわ‥‥。」

クリフォードさんの勢いに押されて、子爵令嬢姉は答えたけど、妹の行方は何も知らない様子だった。