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第6章

第267話 野営講習進行中

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道具を運んでから、初級野営の講習が始まるということだったのに、道具運びがなかなか終わらない班があった。

「ええぇ~?ちょっと触りたくないんですけどぉ~。」
「これを‥‥運べというんですの?」
「嫌!手が汚れる!無理!」
「誰か運んでくれないだろうか。」

道具棚の前でケン様一行が何か言っている。
全員一致で道具を運びたくない様子だ。

「あの人達、何しに来たんだろう。」
「ホントにね。」

ラオウル君とギルベルト君が呟いた。
本当だよねー。

ダリルさんが彼らに近づいて行って何か話をしている。注意されたのか彼らの声が小さくなっていった。
結局、野営道具は全部ケン様が何往復かして運んでいた。

道具類を運んで来たら野営の場所決めだ。
他の班と迷惑にならない距離を確保して比較的なだらかで石がごつごつしていない場所に敷布を敷く。敷き布の四隅には拾って来た大きめの石を置いて重しにする。風が吹いて飛ばされないようにする為だって。

「え?この汚らしい布の上に座るというのですの?」
「ドレスが汚れてしまうわ。」

また何か文句が聞こえて来た。もちろんご令嬢達からだ。

「嫌ならずっと突っ立ってろ。」

ダリルさんの冷ややかな声が響いた。

「いいか。貴族だって長距離移動する。途中に宿がなければ野営だってするんだ。
その時にも敷き布が我慢ならないなら一晩中突っ立ってることになるんだぞ。」

「‥‥‥。」

仕方なくという様子で四人で敷き布を広げて持って配置を始めた。持つ人同士で動きを合わせていないからなのか敷き布がなかなか綺麗に広がらない。広げるだけで何か揉めていた。結局少し歪んだ状態だったけど、敷き布を敷く事ができたようだった。

ダリルさんがケン様一行の相手をしている間に、アイリスさんが他の班の所を回って色々指導してくれていた。

火打石で火を起こす。ラオウル君が火打石を火打金にカチカチと打ち付けた。一緒に持っていた黒いもやもやした物体に火がついたら麻縄をほどいたもので包む。煙がもくもくと出て来た。

「わぁ~。結構簡単に火がつくんだね。」

大きめの石で小枝を囲んだ所に出来上がった火種を入れて火を移した。
ぱちぱちと音を立てて炎が出て来た。これは僕もやってみたい!でももう火がついちゃったからなあ。そう思ってたらカチカチさせるのは一人ずつやってみていいらしい。火花が散って黒いもやもやしたものに火花が移ったら、それを既に燃え上がっている火にいれちゃっていいというので挑戦してみた。

火がついたらまずは魔獣避けのお香に火をつける。見本のお香を見せてもらって、煙がでてからの配置の仕方を教えてもらう。
ここは魔獣は来ないから小さいお香にだけ火をつけるだけなんだって。ちょっと蚊取り線香の匂いにも似ている。虫除けにもなるらしい。

「魔獣が嫌う匂いを出すだけで、攻撃にきた魔獣を追い払うような効果はありません。高価ですが可能なら結界石も使ったほうがよいです。
ただ、たとえ結界石があっても魔獣に囲まれたら逃げだせないですから過信しないことです。」
そう言ってアイリスさんは肩掛けポーチから革の包みに入った小さい結界石を見本に見せてくれた。
結界石ってそんなに高価なんだ。身を守る為なら迷わず使いなさいって父様が持たせてくれていたしダンジョンにもゴロゴロあるから知らなかったよ。
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