上 下
251 / 466
第6章

第251話 お土産選び

しおりを挟む
「ソーマ、行きたい場所はあるかい?買いたいものとか。」

麺を食べ終えたタイミングで叔父様が言った。この後デザートが来るらしい。
買いたいものか‥‥。

「あ、プティへのお土産!」

前回、買えなかったから今日は何かいいものが見つかるといいな。

「プティちゃんへのお土産?食べ物かな。」
「食べ物じゃないもので何かないかなと思って。」

叔父様は「ふむ」と考えた様子になった後、ジョスさんの方に顔を向けた。

「ソーマが可愛がっている小さい猫にお土産を買いたいっていうんだけど、何か思いつく?」

「猫ちゃん?ヘンリーがいたら大変そうですね。」
「ああ王都では騒いでたね。」
「やっぱり。‥‥お土産ですか‥‥。猫ちゃんだったら、玩具か‥‥身につけるものとか‥‥?」
「首輪は付けているよ。」
「リボンはどうですかね。近くの農村の冬場の手仕事で作る刺繍リボンが入荷して来てますよ。」
「刺繍リボン?」

作物が育たない冬の間に農村で女性達がリボンに刺繍をして売りに来ているらしい。
結構可愛い柄のリボンがあるというので食事の後、見せてもらう事にした。

デザートは白いモチモチしたブラマンジェみたいなものにベリーのソースがかかっているものだった。甘酸っぱいソースがアクセントになっていて美味しい。

食事が終わって店の外に出ると、テラス席の方から言い争う声が聞こえて来た。
すっかり忘れていたけど、テラス席でまだ口論していたみたいだ。

「そんなに怒らないでくれ。ルイーサはズーデン王国から来たばかりで心細い思いをしているんだ。親切にして当然だろう。君は本当に冷たいな。」
「心細いからといって、婚約者がいる男性にベタベタと接触してよいわけはありませんわ。」
「ケン様、私怖ーい。」
「またそうやってしがみつく!何なんですの貴女!」

見ないように見ないようにしていたけど、少し店から離れてからチラッと見てしまった。
一つのテーブルを囲んで料理を食べながら言い争っていた。喧嘩するならどちらか帰ればいいのに。

刺繍リボンを売っているお店はどこかと思ったら着いた先はエルスト商会だった。商会で綺麗な色の刺繍糸を割引価格で売って出来上がった刺繍リボンを買い取っているんだって。
少し幅広のリボンに花や小鳥が刺繍してある。小鳥のリボンが可愛い。
プティ用にオレンジの糸で刺繍された小鳥柄のリボンを買ってみた。

せっかくなので母様、姉様、マーリエの分も選ぶ。母様にはシックな色合いのもの。姉様に華やかなもの。マーリエには可愛らしいものがいいかな。
父様と兄様は‥‥どうしようかな。
父様と兄様は髪を後ろで縛ったりはするけど、可愛いリボンとかはちょっと微妙だよね。
じっと刺繍リボンが並べてある棚を見ていたら、端の方に細いリボンが並べてあった。5ミリくらいの幅で刺繍はない。色がグラデーションになっている。
背伸びして手を伸ばしたら、ジョスさんが棚から卸してくれた。

「これは染めているだけで刺繍がないリボンだよ。刺繍ができない人達が染めているんだ。」

青と緑や黄色とオレンジのグラデーションとかの色合いが綺麗だ。緑系なら瞳の色とも合うので父様と兄様へのお土産はこれにすることにした。
細いリボンはちょっと多めに買った。刺繍糸もいくつか買ってみた。

「リボン、沢山買ったね。刺繍糸も?」

買い物トレーの上に並べたリボンと刺繍糸を覗き込んで叔父様が言った。

「うん。こっちはお土産用で、こっちは何かに使ってみようかと思って。」
「じゃあ、お土産用は小分けにしましょう。」

ラッピングは箱に入れるのは仰々しい感じがしたので、綺麗な色の布で出来た巾着に入れてもらうことにした。
余分に買ったリボンと刺繍糸は紙袋にまとめていれてもらった。

無事お土産が買えてほっとした。

「これで安心して帰れるね。」
「ソーマ。まだ全然街歩きしてないよ。」

満足してたら叔父様に指摘されちゃった。そういえば、お昼を食べにレストランに移動しただけだったっけ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したけど、前世の記憶いる?

護茶丸夫
ファンタジー
ファンタジーな世界に転生したぜ、やっほう? お約束な神様にも会えず、チートもなく。文明レベルははテンプレより上ですか。 ゲームか何かの世界ですか?特に記憶に無いので、どうしたらいいんでしょうね? とりあえず家族は優しいので、のんびり暮らすことにします。 追記:投稿仕様は手探りで試しております。手際が悪くても「やれやれこれだから初心者は」と、流していただけると幸いです。 追記2:完結まで予約投稿終了しました。全12話 幼少期のみの物語です。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう

蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。 王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。 味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。 しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。 「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」 あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。 ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。 だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!! 私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です! さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ! って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!? ※本作は小説家になろうにも掲載しています 二部更新開始しました。不定期更新です

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。 やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。 人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。 当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。 脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

処理中です...