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第6章

第227話 講習申し込み

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ムン、と暖まった空気が顔をなでる。ガヤガヤ騒がしい話し声が響いている。
リヒャルトさんが僕の後ろにぴったりとくっ付いて、僕の肩にそっと手を置いた。
ゆっくり建物の中を見回すと、王都の冒険者ギルドとはちょっと雰囲気が違う感じがした。
カウンターがあって窓口がいくつか並んでいるのは同じだ。でも、ランプの着いている窓口一つに人が並んでいる。それも一言二言話して木札を受け取りすぐ次の人に代わる。
王都の冒険者ギルドは一度しか行った事がなかったけど窓口全部に人が並んでいた記憶がある。

「あの窓口で番号札を貰うんだよ。それで番号呼ばれるまで待つんだ。」

ギルベルト君が説明をしてくれる。
銀行とか役所みたいなシステムなのかな。チェックインして後は呼ばれるまでベンチ席で待つみたいだ。
人が並んでいない窓口の所から係員の人が番号の書かれた札を掲げて呼んでいる。
ベンチ席に座っていた冒険者の人が大きな荷物を持って立ち上がり呼ばれた窓口に向かって歩いていった。

「面白い方法だよね。重い荷物持ったまま長い時間並ばなくて良いんだよ。」

ギルベルト君はベンチで順番待ちをしている冒険者達の方をちらりと見た。すごく大きな荷物を持って来ている人が多いみたいだ。
確かに討伐依頼とか採取依頼の報告に来る人は荷物が重いだろうから、座って順番待ちする方が楽そうだね。

「ソーマ君、こっちに講座の案内があるよ。」

ギルベルト君が掲示板に張られている講座案内を指差した。
講座は見習い冒険者用と初級、中級と分かれていた。

薬草の見分け方(見習い・初級)
地図の見方(見習い・初級)
角兎の解体方法(初級)
初級剣術(初級)
初級文字(見習い・初級・中級)
初級ダンジョン探索(初級)
初級野営(見習い・初級)
その他色々。

見習い冒険者が受けられる講座は「見習い」と書かれているもののようだ。
講座名の下に少し小さめの文字で有料か無料か。開催日、定員などの詳細が書いてある。

「文字講座もあるの?」
「依頼票が読めない人向けなんだって。」

冒険者ギルドが学校みたいな事をするのって意外に思ったけど、文字が読めなくて依頼内容がわからないという冒険者には役立つ講座かもしれない。
講座案内が貼られている隣には、講師や講師補佐の依頼票も貼ってある。

「講師も冒険者がやるんだね。」
「そうみたい。でもギルドの職員だったり冒険者じゃない人も講師の中にいたよ。」
「へぇー。」

試しに何か申し込んでみる事にした。ギルベルト君が一緒に受けようと言ってくれたのでどれにするか二人で選ぶ。

受付に並んで番号札を貰った。番号札を貰うだけだからほとんど時間がかからない。番号札はギルベルト君と二人で一つ渡されるのかと思ったけど一人ずつ番号札を渡された。

「15番と16番の番号札をお持ちの方、青色の5番窓口へどうぞ。」

青色の看板がついている窓口で、ギルド職員の人がフロアに呼びかけた。僕達の番号だ。あまり待たずに呼ばれた。

窓口には色のついた看板がついている。数字が読めない人への配慮らしい。番号が読めない人は大丈夫なのか気になったけど、呼びかける時に番号を書いた板を掲げているので自分の持っている札と見比べれば良いってことみたいだ。

「講座申し込みですね。見習い冒険者の方と見学希望の方ですか。‥‥保護者の方ですか?」

受付に座っているギルド職員の女の人に番号札を渡した。ギルド職員の人が僕の後ろに立っているリヒャルトさんとインゴさんを見た。

「はい。そうです。」

リヒャルトさんが僕の両肩に手を置いて答えた。
保護者なの?少し身体を捻って見上げるとリヒャルトさんが微笑んでいる。

「保護者の方も一緒に見学可能ですが、見学されますか?」
「はい。もちろん。」

見習い冒険者と12歳未満の見学者の場合は保護者も一緒に参加して良いらしい。
申し込んだ講座は「初級野営」だ。「薬草の見分け方」の講座も気になったけどギルベルト君が既に受けた事あるんだって。
ギルベルト君が受けた事がない講座で冒険者っぽい講座を選んだんだ。
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