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第5章

第193話 ツヴァイトベック家

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「本当にありがとうございます!」

村の門がしっかり閉ざされて安全が確保されてから、馬車を降りてきた商人が改めて、お礼を言って頭を下げている。
僕達は馬車から降りる指示は出されていないので馬車に乗ったままだ。
商人の護衛をしていた冒険者達の何人かは、怪我をしたみたいで、ポーションで治療を始めていた。
その様子を窓から見た後、地図を確認する。

点在する赤い点。かなり減ったけど、やっぱり結構多い。
父様は商人達から情報収集したり、騎士に休憩の指示を出したりしてた。
元々は寄る予定ではなかった村だけど、戦闘もあったし、一度この村で休憩するみたいだ。

「はぁ、怖かったねぇ。」

窓の外を見て、安心したのか、マーリエが、安堵の息を漏らした。緊張していたのか顔色があまり良くない。休憩だと言っていたし、お茶でも出して気分転換しよう。

馬車の壁の留め具を外して、テーブルを出した。折り畳んだボードが両側から出て来て、接合させただけの簡易なものだ。

「あら、面白いわね。」

母様が興味深げにテーブルを眺めている。テーブルの表面は小さい石をちりばめたみたいにざらざらしていて、多少馬車が揺れても、上に置いた物が滑りにくいようになっている。
今は馬車が止まっているから大丈夫だけど、何時動き出すかわからないので、テーブルクロスは出さずに、お茶の準備。
保温ポットに入れて、更に時間の流れが遅いクーちゃん特製のマジック巾着に入れていたお湯は、まだ熱々だ。
箱から茶葉を小分けにしていれた布袋を取り出して、ティーポットにイン。お湯を入れておく。
旅の時は、ティーバッグが扱いやすいよね。
カップを出して注ぐ。焼き菓子も出すとマーリエが嬉しそうな顔をした。

「ソーマ、ありがとう。お茶美味しいよ。淹れるの上手だね。」

かなり大雑把な淹れ方だったけど、兄様が褒めてくれた。
プティは、座席のところに置いたお皿でミルクをチロチロと飲んでいる。

「お茶を飲むと落ち着くわね。」

母様が、ふぅと息を漏らした。母様もちょっと緊張していたのかもしれない。

しばらくしてから再出発。商人達は、村の人達が、商品を売って欲しいと交渉して来て村で営業をしていくというのでここで御別れだ。

そこからスピードアップして移動。運転にも慣れて来たから、スピードを上げて、魔獣を引き離して進む作戦にしたようだ。
時々、魔獣を吹き飛ばすような音が聞こえて来たけど、魔獣に足止めされる事も無く順調に馬車が進んで、夕方には、街に到着した。
街の宿に泊まるのかなと思ったら、お屋敷だった。

「ソーマ君!久しぶり!」

ラルフ君とロルフ君が出迎えてくれた。
滞在するのは、ツヴァイトベック領の領主邸だったらしい。
ラルフ君達は、大市にお誘いしようとしたら不在だったんだけど、伯父様達と一緒に領地に帰っていたようだ。
スタンビートの影響が気になって、領地視察の為に戻っていたんだって。

ラオウル君と年齢が近いのでラルフ君達に紹介した。ラオウル君が王都で冒険者登録ができなかったり、お父さんがランクを下げられた話を聞いて、渋い顔。

「うぅーん。正規の冒険者登録はやっぱり、こっちですることにするよ。自分ちのとこの領地の冒険者ギルドだと、色々気を遣われちゃうかなと思って
王都で登録しようかと思ってたんだけど、なんだかねー。王都の冒険者ギルドって,前からちょっと、微妙なとこあるよねー。」

以前、見習い冒険者サポートで、王都の外に出た時、冒険者ギルドが手配したはずの御者に、王都の結界外に連れ出されたりしたときの事も
王都の冒険者ギルドは、全然謝罪とかなかったんだって。
微妙というより不信感しかない気がするよ。

ラルフ君達はもうすぐ12歳の誕生日を迎えて、正規の冒険者登録ができるようになる。誕生日の贈り物に、マジックバックを上げようかと思ったんだけど
ダンジョン産でないと、他人に渡してはいけないというし、プレゼントするためにクーちゃんに夜なべしてつくってもらうのも、ちょっと違う気がするから、
シーサーペント革のホットカーペットに物理耐性と魔法耐性をつけた物をプレゼントすることにした。
冒険者活動中に、暖まって安心して休憩できるかな、と思って。シングルサイズで一枚ずつ。

「あったかい!これいいね!部屋の中でも使いたい!」
ラルフ君とロルフ君二人に同じ物をプレゼントしたけど、喜んでくれたようだ。二つ繋げて、ゴロゴロして感触を確認していた。
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