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第5章
第189話 聖女候補の条件
しおりを挟む「ソーマ、行くよ。はぐれないでね。」
ぼーっと、眺めていたら兄様から声がかかった。
ステンドグラスのランプをいくつか買ったみたい。
買った荷物を運ぶて手押し車が、もう用意されていた。
今日は手押し車を押してくれているのは、いつもとは別の人。荷物運び担当できてくれたんだって。
リヒャルトさんとインゴさんが、護衛に専念する為らしい。うん‥‥。僕のせいかも。
それから、ぐるっと一周、大市の会場を見て回った。
特に欲しい物が無くても、どんな物が売られているかとか、どの地域から来ている人がいるかとか、注意しながら見るのが勉強になるんだって。
地域でいうと、王都より東の地域からの品が多かったみたいだ。西は、まだ魔獣が多いからかな。
一割もいないけれど、外国から売りに来ている商人もいた。
乾燥した昆布や若布が売られていて、嬉しくなって買ってしまった。
一通り見た後は、中央広場のベンチで休憩。遠くで大道芸人が、曲芸をやっていて賑わっている。
兄様が買って来てくれた、果実水を三人で並んで飲む。
「わぁ~。本当に暖かい。これいいわね!」
ベンチに、シーサーペントの革で出来たホットカーペットを置いてみたら、ミラ嬢に大絶賛された。
「これもエルスト商会で販売されているの?」
「あ」
ミラ嬢に言われて、叔父様に伝えるの忘れていた事に気がついた。これ、ダンジョンでも出す予定なんだけど、売って大丈夫かな。
ちょっと装飾とか入れたり染めたりして、違う感じにすればいいかもね。
まだ販売していない物だと、説明をしたら、売り出したら是非教えて欲しいと言われた。
王都の冬が寒いなら、役立ちそうだな。
シーサーペントの革以外でも作れるかな、とか考えていたら、広場の真ん中辺りで「わーっl」って歓声があがった。
「見て、新しい聖女様よ。」
「知ってる!先週、お告げの鐘の音聞いたもの!」
広場の中央辺りに人だかりができている。
人々の影からちらりと、ピンク色のポニーテールが見えた。
「‥‥あの子が、聖女候補に選ばれたようだね。」
兄様が、広場中央に目をやりながら言った。
「ケニー様、知ってるの?」
「先週、大教会の鐘が鳴った時、近くにいただけだよ。」
ミラ嬢の問いに、兄様は何でもなさそうに答えた。
「そうなのね。聖女候補が増えれば、王都の結界も安心ね。」
「結界?」
ミラ嬢の言葉に首を傾げた。
王都の周囲に張られている大結界は、聖女が毎月新月の日に、「聖なる祈りの日」に祈りを捧げて、力を保っているのだという。
今は、「聖女」として正式に認定されている人がいなくて、何人かの「聖女候補」が、祈りを捧げているんだそうだ。
「聖なる祈りの日」、聖女候補の祈りの力が強ければ、大教会の大鐘が長い間鳴り響くんだそうだ。そうすると、その祈りを捧げていた聖女候補は、「聖女」として
認められたことになるんだって。
そういえば、ピンクツインテールが、「新月の祈り」とか言っていたな‥‥。
「聖女候補って、みんなピンクの髪なのかな‥‥。」
さっきのポニーテールの子も、ピンクツインテールもだけど、確か、エミリア嬢の婚約破棄の時に問題になってた人も聖女候補で、ピンクブロンドの髪をしていた気がする。
‥‥聖女候補って、微妙な人が多い気がするけど‥‥、それは言ったらまずいのかな‥‥。
「ピンクの髪色の人は、女神メチェの加護が強いって言われているそうよ。でも、別に聖女候補の人がみんな、ピンクの髪色でもないし、
ピンクの髪色の人が必ず聖女候補になるわけではないわよ。そうじゃなかったら、髪色で選べばいいだけになっちゃうでしょう。」
「そうだよね‥‥。」
髪色で判断できるなら、わざわざ教会の鐘が鳴るかどうかとかで、選ばれたりしないよね。
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