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第5章

第183話 ラオウル君の事情

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ラオウル君のお父さんは冒険者で、一家で護衛依頼を受けながら半年くらい前に王都に来たんだそうだ。
王都に来る途中、魔獣に襲われて、お父さんは怪我をして、お母さんも怪我はなかったけど、病気になってしまって、王都についた頃には寝込む事が多くなってしまった。
ラオウル君のお父さんは、怪我をした身体でも、王都周辺の薬草採りとかをして稼いでいたけれど、一家の生活費とお母さんの薬代には足らなかった。
だから、ラオウル君も12歳になって、冒険者登録をして稼ごうとしたんだそうだ。でもラオウル君の左手が魔獣に襲われた時の毒で、不自由になっているからと冒険者登録をさせてもらえなかったんだって。

紫色に腫れた手は、全く動かないわけではなくて、少し痺れていて、時々痛みが走っていて、剣とかを握るときに力を入れられないらしいんだけど。

「でも!俺だって角狼くらい倒せるのに!」

そこまで話すとラオウル君は悔しそうに左手を右手でギュッと掴んだ。

「実技試験さえしてくれれば‥‥!」

冒険者ギルドでは、登録の際に、魔獣と戦えるかどうかで、登録可能かを判断するんだって。通常は、剣とか弓か魔法の試験を行うらしいんだけど、
王都の冒険者ギルドでは、ラオウル君の左手だけで判断して、実技試験を受けさせてもらえなかったんだって。

‥‥なんとなくだけど、王都の冒険者ギルドって、不信感しかないなぁ‥‥。

ラオウル君は何度も冒険者ギルドの受付に行って、試験を受けさせてくれって頼んだけど、聞いてもらえなくてその姿を見ていたらしい人から、ある日、荷物運びをしないかと声をかけられたんだそうだ。

冒険者としての仕事ではないけど、12歳のラオウル君は、他の仕事を得るのは難しいから、少しでもお金を稼げるならと、荷物運びの仕事を受けることにしたんだって。

「それで今日も急いでいたのに‥‥。もう大分時間すぎちまった‥‥。」

ラオウル君はバッと顔を上げて、兄様を見た。

「馬車から降ろしてくれ!荷物届けにいかないと!もう時間過ぎてるけど‥‥。」
「‥‥ちょっと荷物見せてくれる?」

兄様はそういうと、ラオウル君の鞄の中を確認したり、ラオウル君の報酬を聞いたりしていた。

「薬草を薬師に届けるのか。運んでいるものは違法な物ではないけど、冒険者より大分安い金額で、頼まれてるね。」
「お、俺はこの位しか‥‥。」

冒険者ギルドに配達を頼みに来た人が、ギルドに頼むより安い報酬で、ラオウル君に頼んだのか。

「君は追われてるだろ。今は出ない方がいい。これは届けてあげる。」

ラオウル君が少し考えてから頷くと、兄様は、宛先を確認すると、馬車に乗っていた護衛の人に、配達物を手渡した。

暫くして、馬車が一度止まり、護衛の人が降りていった。

「あ、ここ!」

窓の外をラオウル君が見て、声を上げた。僕も外を覗いてみると、護衛の人が、ドアのところで荷物を渡しているところだった。
サインをもらって来た後、依頼人に渡してお金を受け取るところも、護衛の人が代理でやった。
申し訳なさそうに報酬を手にした後、ラオウル君は、困った顔をした。

「俺、もう仕事頼まれなくなっちゃうかな‥‥。」
「あまり、心配しないで。職の紹介はできるからね。」
「ほ、本当?」

ラオウル君がパッと顔を上げた。兄様がうん、と頷いた。

その辺りで眠ってしまったらしくて、気がついたら屋敷の自室のベッドの中にいた。
治療もされていたらしくて、手とかちょっと地面に手をついただけなのに、包帯でぐりぐりに撒かれていた。
そして、重い。

「にゃーん。」

プティがお腹の上に乗っていた。

「プティ‥‥。」

包帯が巻かれた手で、プティの頭を撫でる。プティのふわふわの毛並みが楽しめない。

「‥‥ラオウル君はどうなったのかな‥‥。」
(一家で屋敷に来てるらしいにゃ)
「え?」

僕が眠ってしまったので、一度屋敷に帰って僕を部屋に寝かせた後に、兄様はラオウル君の両親を屋敷に連れて来たらしい。
ちょっと偵察君を動かして、天井に映像を投影してみた。
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