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第4章

第167話(第4章エピローグ)戻って来た平和な日々

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数日後、王都周辺の魔獣の活動はすっかり沈静化した。
商人達も移動ができるようになり、市場は、まだ価格が下がっていないものの、活気が戻って来た。

王都近郊のダンジョンは魔獣をシャッフルした後は、ある程度回復するまでは、冒険者とかが入れないようにしておいた。
弱っている時に入られたら一気に攻略されちゃうからね。
まだ、他の地域のダンジョンも「魔獣の入れ替え」が続いているから、シャッフル作戦を続けて行く予定だ。

スタンビートとその後の状況によって、ごたごたしているうちに季節は巡って、王都に雪がちらつくようになった頃、僕は再びエルストベルクの海岸に来ていた。
王都より南に位置するこの場所は、まだ秋終盤と言った感じだ。

少し海風が肌に冷たく感じる。
秋とか冬に海に来ると、妙に物寂しい雰囲気になる気がする。
ゲートを開けて、崖に接した砂浜の一番奥に陣取って、隠蔽機能が有る結界を張っておく。これで外からは存在を悟られないし、攻撃をうけたとしても防御できる。
日差しは暑くはないけれど、ちょっとまぶしいので、結界の上部を不透明にして陰をつくる。

足下は油をしみ込ませた布を敷いた上に、分厚い布を敷いている。
用意が整った頃に、ぴょん、とプティが登場。

波打ち際の方をじっと見つめる。
ざざーっと音を立てて波が打ち寄せている。

(今日は静かだにゃ)

「今のところねー」

偵察の魔道具を出して、飛ばす。ふよふよと飛んで行って、波の上あたりまで行ったとおもったら、とつぜん海中から何か飛び出して来た。

ズバーーン!!

「おおーー!」

急な襲撃を受けて、偵察の魔道具が吹っ飛ぶ。

(クラーケンがきたにゃ)
「シーサペントが良かったんだけどね。」

今日の狙いは、本当はシーサーペントなんだけど、クラーケンではだめと決まった訳ではない。一寸試してみるか。

吹っ飛んだ偵察魔道具を再び浮かび上がらせる。ちゃんと物理耐性をつけておいてよかった。
偵察の魔道具に貼付けるようにゲートを生成。
ゆっくりと、波うち際に飛ばして行く。波の上あたりに偵察の魔道具とゲートが到着。少しだけ魔道具の魔力を強める。
ズバーーッ‥‥!!
再び、突然海中から何か飛び出てきた。さっきと微妙に違う音がした。

(うまくいったにゃ)
「まあまあ、少しだけど。」

結界を壁にして、偵察の魔道具が撮った映像をスロー再生してみる。
海中から水しぶきを上げて突き出てくるなにか。スローでも早すぎて、はっきりと捕えにくい。もっとスローにすると一瞬イボイボの吸盤が見えた。

それがぶつかってくる。瞬間的に、映像が途切れた後、次に映っていたのは、落ちている巨大イカの足の先端。まだうねうねと動いている。

足が落ちている部分の床が、じわーっと光って行き吸収を開始した。
時間をかけてずぶずぶと沈みこんでいって消えていった。

「吸収成功!」
(クラーケンが原料だと何になるにゃ?)
「うーん? スルメ?」
(‥‥。美味しいのかニャ?)

今日の目的はシーサーペントの素材を手に入れること。
ダンジョンの制御権があるってことは、ダンジョン産のものが作れるって事ではと思って、マジック財布と同じように、魔力を溜め込めるシーサーペントの革でできた
マジックバックが作ろうと思ったんだ。それで狐に相談したんだけど、材料がないって。
確かに通常は陸のダンジョンに海の魔獣の素材は入ってくることがない。
ならば、素材を採りに行けばいいんじゃないか、という事で考えた作戦がこれ。

偵察の魔道具の魔力を餌にして、ゲートを開いておいて、攻撃された途端にゲートを閉じる。
ゲートを閉じると時空が分断されるから、ゲートの中に入ったところだけがゲートの先のダンジョン内に入るってことになる。

「さて、じゃあ、再チャレンジ。」
足の先端を切られたクラーケンは、沖の方迄逃げるように移動してしまった。
クラーケンが居ると近づいてこないシーサーペントが寄ってくる可能性が高くなる。
もう一度、偵察の魔道具をとばして、ゲートを配置させる。

ズシャーーーー‥‥!!

「あ!」

バシャーーーン!!

「‥‥。」
(ニャーー‥‥。)

一瞬のことだった。予想通り何か海から飛び出して来たと思ったら、次の瞬間、巨大な頭のない何かが、浜辺に落ちた。
少し間をおいて切り口から血が吹き出て来て、砂浜がみるみる真っ赤に染まる。

海から飛び出して来たシーサーペントは偵察の魔道具にぶつかりそのままゲートに頭部を突っ込んだ。
その瞬間にゲートを閉じたので、一瞬のうちに頭部を切断されたシーサーペントの死体が浜辺に横たわることになってしまった。

「あー、こうなるか‥‥。まあ、考えてみたらそうだよね‥‥。」
(ちょっと気の毒な気がするにゃ‥‥。でも考えてないで早くしないとクラーケンにもっていかれるにゃ)
「え、何を?」
(素材にゃ)
プティが前足でシーサーペントの死体を指し示した。
予定では、ゲートに入ったところの素材だけもらおうとしていたんだけど。

「えーとどうしよう。浜辺に近寄ると危険だよね。」

ものすごく小さいゲートをシーサーペントの死体の傍に一瞬だけ開いて、ストレージボックスに収納。それを、狐のダンジョンに送り込んだ。

「これで、マジックバックできるかな。」
ーーーー大きすぎるコン!! ダンジョンの収納容量も考えるコン!!

ダンジョンの通路がぎっしりシーサーペントの身体で埋め尽くされたらしい。
狐が叫ぶ声が聞こえた。

あ、今度名前つけてあげようっと。
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