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第4章
第136話 商談成立
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叔父様がにこやかな表情で、書類を差し出した。そして、机の脇に置いてあったボタンを押した。
待機していたのか、あまり間を置かずに、ノックの音がして、ユリアさんが入って来た。手に持っているトレーには、グレーの色の腕輪が乗っている。
「ご子息のお色の品は、至急準備いたしますので、まずはこちらの魔力登録をお願いいたします。」
「準備が早いな。」
ヴィルヘルムさんが買うだろうという前提で、既に準備していたようだ。
ヴィルヘルムさんは魔道具の扱いは慣れているのか、特に説明をきかないうちに、腕輪をつけた後、スムーズに魔力を流した。
一瞬、腕輪がふわりと輝いた。
「これで、この腕輪は、ヴィルヘルム卿しか使用できなくなりました。腕輪表面に有る小さな赤い石に触れながら魔力を流すと、機能がオフとなります。
オフの時は、石が青くなっています。再び石に魔力を通すと、機能がオンとなります。訓練時など必要時に切り替えが可能となっています。」
「‥‥すげえな‥‥。見た目も綺麗だ。」
ヴィルヘルムさんは、機能のオンオフを試しながらつぶやくように言った。
そして、おずおずと、顔を上げて、遠慮がちに言う。
「これ‥‥、アイヴリンガー領に提供してもらうことは‥‥。無理だよな。」
「申し訳ございません。」
叔父様はきっぱり。
「だよなぁ。」
ふぅっと、ヴィルヘルムさんがため息をついた。再びノックの音がして、ユリアさんが入って来た。綺麗な色の箱がトレーに乗っている。
「こちらをご用意いたしました。お確かめ下さい。」
叔父様が箱を開けて、中をヴィルヘルムさんに見せた。箱の中には緑がかった青の腕輪が入っていた。
「早いな本当に。」
ヴィルヘルムさんは、腕輪を手にとって、少しの間眺め、トレーに戻した。そしてちらりと、壁掛け時計に目をやった。
「まだ、息子に渡しに行ける時間だ。助かったよ。ありがとう。」
「何よりです。それとこちらは当商会自慢のお菓子です。奥様に。」
「おお、何から何まで。ありがとう。マーカス、すっかり立派な商人だな。」
「‥‥光栄です。」
叔父様が返事をするまでに、一瞬だけ間があった。ヴィルヘルムさんは、叔父様が、商会を作る前からの知り合いなのかな。
それから、魔獣討伐に向かうヴィルヘルムさんの無事をお祈りして、見送った。
別れ際にヴィルヘルムさんが、もう一度僕の頭を撫でたんだけど、やっぱり、鷲づかみにされてぐわんぐわんと揺らされたような感じだった。
ヴィルヘルムさんが出て行った後、ヴィルヘルムさんは叔父様の学生時代の先輩なのだと教えてくれた。
アイヴリンガー侯爵の次男で、現在は王宮の第7騎士団の騎士団長をしているんだそうだ。
「あの人には学生時代、お世話になったんだ。ソーマが、防御の腕輪を作って来てくれてよかった。ありがとう。」
「僕はいつものように新作を持って来ただけだよ。でもすぐ色違いを作って来れるのすごいね。」
「そこはスタッフに頑張ってもらったよ。」
叔父様が、フフフと笑った。ちらりと、受付の方を見ると、従業員の人達も、ニコニコしていたけど、額をハンカチで拭いたりしている。
結構無理したのかもしれないな‥‥。
「ヴィルヘルムさんの息子さん、腕輪気に入ってくれるといいね。」
「そうだね。」
僕は、接客とか何にもしてないんだけど、一仕事したみたいな気分だった。
僕が元の腕輪を作ったというのもあると思うけれど、お客さんが笑顔で買って帰ってくれるのは、嬉しいって思ったよ。
待機していたのか、あまり間を置かずに、ノックの音がして、ユリアさんが入って来た。手に持っているトレーには、グレーの色の腕輪が乗っている。
「ご子息のお色の品は、至急準備いたしますので、まずはこちらの魔力登録をお願いいたします。」
「準備が早いな。」
ヴィルヘルムさんが買うだろうという前提で、既に準備していたようだ。
ヴィルヘルムさんは魔道具の扱いは慣れているのか、特に説明をきかないうちに、腕輪をつけた後、スムーズに魔力を流した。
一瞬、腕輪がふわりと輝いた。
「これで、この腕輪は、ヴィルヘルム卿しか使用できなくなりました。腕輪表面に有る小さな赤い石に触れながら魔力を流すと、機能がオフとなります。
オフの時は、石が青くなっています。再び石に魔力を通すと、機能がオンとなります。訓練時など必要時に切り替えが可能となっています。」
「‥‥すげえな‥‥。見た目も綺麗だ。」
ヴィルヘルムさんは、機能のオンオフを試しながらつぶやくように言った。
そして、おずおずと、顔を上げて、遠慮がちに言う。
「これ‥‥、アイヴリンガー領に提供してもらうことは‥‥。無理だよな。」
「申し訳ございません。」
叔父様はきっぱり。
「だよなぁ。」
ふぅっと、ヴィルヘルムさんがため息をついた。再びノックの音がして、ユリアさんが入って来た。綺麗な色の箱がトレーに乗っている。
「こちらをご用意いたしました。お確かめ下さい。」
叔父様が箱を開けて、中をヴィルヘルムさんに見せた。箱の中には緑がかった青の腕輪が入っていた。
「早いな本当に。」
ヴィルヘルムさんは、腕輪を手にとって、少しの間眺め、トレーに戻した。そしてちらりと、壁掛け時計に目をやった。
「まだ、息子に渡しに行ける時間だ。助かったよ。ありがとう。」
「何よりです。それとこちらは当商会自慢のお菓子です。奥様に。」
「おお、何から何まで。ありがとう。マーカス、すっかり立派な商人だな。」
「‥‥光栄です。」
叔父様が返事をするまでに、一瞬だけ間があった。ヴィルヘルムさんは、叔父様が、商会を作る前からの知り合いなのかな。
それから、魔獣討伐に向かうヴィルヘルムさんの無事をお祈りして、見送った。
別れ際にヴィルヘルムさんが、もう一度僕の頭を撫でたんだけど、やっぱり、鷲づかみにされてぐわんぐわんと揺らされたような感じだった。
ヴィルヘルムさんが出て行った後、ヴィルヘルムさんは叔父様の学生時代の先輩なのだと教えてくれた。
アイヴリンガー侯爵の次男で、現在は王宮の第7騎士団の騎士団長をしているんだそうだ。
「あの人には学生時代、お世話になったんだ。ソーマが、防御の腕輪を作って来てくれてよかった。ありがとう。」
「僕はいつものように新作を持って来ただけだよ。でもすぐ色違いを作って来れるのすごいね。」
「そこはスタッフに頑張ってもらったよ。」
叔父様が、フフフと笑った。ちらりと、受付の方を見ると、従業員の人達も、ニコニコしていたけど、額をハンカチで拭いたりしている。
結構無理したのかもしれないな‥‥。
「ヴィルヘルムさんの息子さん、腕輪気に入ってくれるといいね。」
「そうだね。」
僕は、接客とか何にもしてないんだけど、一仕事したみたいな気分だった。
僕が元の腕輪を作ったというのもあると思うけれど、お客さんが笑顔で買って帰ってくれるのは、嬉しいって思ったよ。
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