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第4章
第134話 瞳の色の品
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「ヴィルヘルム卿、ご無沙汰しております。」
僕が戸惑って返事をしないでいると、叔父様の声がして階段のところから叔父様が姿を現した。
「マーカス、いや、マーカス卿。久しぶりだな。」
ヴィルヘルムさんが立ち上がった。
叔父様が、ヴィルヘルムさんの方に歩いて行って、恭しくお辞儀をした。
「当商会へようこそおいで下さいました。お急ぎでご入用の品があるとか。」
「そうなんだ。息子の誕生日の贈り物を急ぎ選びたいんだ。俺は午後には王都をでないといけない。」
「‥‥魔獣討伐ですか。」
「ああ、西の方にスタンビートの兆候がでているらしくてな。」
「またですか。最近多いですね。」
「ああ、さすが当たり年だよ。昨日討伐遠征から帰って来たばかりなのに。おかげで、息子の誕生祝いの品が準備できていないんだ。
ああ、その子は、お前の子か?似ているよな。」
「甥ですよ。兄の子です。‥‥ソーマ、こっちにおいで。」
叔父様が、僕の方に向って手を差し出した。リヒャルトさんが、すっと横に動いて道をあけてくれた。
僕はちょっとドキドキしながら、慎重に二人のところに歩いていって、お辞儀をした。
「はじめまして。ソーマ・エルストベルクです。」
「ヴィルヘルム・アイヴリンガーだ。先ほどは失礼したね。息子と同じくらいの年齢の子なら、息子が喜びそうな物が分かるかもしれないと思ったんだ。
どうだろうか。もしよければ選んでくれないか?」
それで、僕に声をかけてきたのか。
「あ、あの。僕だったら父様が選んでくれた物なら何でも嬉しいです。僕が選ぶとかじゃなくて‥‥。」
「そうか‥‥。そうだな‥‥。」
ヴィルヘルムさんは、身を低くして、僕の頭をポスポスと撫でた。撫でたんだとわかるけど、大きな手が僕の頭を鷲づかみにしてぐらぐらと揺らした感じになる。
リヒャルトさんとインゴさんが、一瞬身構えたのがわかった。指先がぴくっと動いている。
「うん?君のしている腕輪、いい色だね。」
「腕輪?」
ちらっと、ヴィルヘルムさんの目線の先、左腕をちょっと持ち上げた。サンプルで作った防御の腕輪をしたままだった。色は、僕の瞳の色と合わせて翠にしてみたんだよね。
「ああ、息子の瞳の色は、もう少し青いんだが。健康祈願で瞳の色の物を贈るのもいいな。」
この国では子供の健康と成長を祈って、瞳の色と同じ色のものを贈る風習があるんだよね。
僕も兄様も瞳が翠なので、小さい頃、家の中にある僕らの物は翠色の物が多かった。
僕は叔父様を見上げて言った。
「叔父様、サンプル品だけど、販売できるの?」
「商業ギルドへの登録がまだだし‥‥、それに、元々一般販売はしない予定のものなんだよ。うーん‥‥、そうだね‥‥。」
叔父様は手元の書類に目を落として考え込んでいる様子だ。
ヴィルヘルムさんが、いやいやと首を横に振った。
「その腕輪が欲しいといったわけじゃないんだよ。瞳の色の物がいいかと思いついただけで‥‥。」
「ええ。存じております。しかし、多少条件はあるのですが、良い商品なので。」
叔父様は、ちらりと、背後を振り向いた。待機していたっぽいユリアさんが叔父様に近づいていって、書類の入った封筒を受け取った。
「申請を。それとお品物の準備を。」
叔父様が小声で言うとユリアさんは頷いた。
「ヴィルヘルム卿。他にも色味で選ぶのにお勧めのものを何点かご用意いたしますのでこちらへどうぞ。お急ぎとのことですのでお時間はかけないようにいたします。」
叔父様は、ヴィルヘルム卿を、商談室にご案内するようだ。僕はどうしたらいいのかな、と思っていたら叔父様が僕に手を差し出した。
一緒に行っていいってことだね。
僕が戸惑って返事をしないでいると、叔父様の声がして階段のところから叔父様が姿を現した。
「マーカス、いや、マーカス卿。久しぶりだな。」
ヴィルヘルムさんが立ち上がった。
叔父様が、ヴィルヘルムさんの方に歩いて行って、恭しくお辞儀をした。
「当商会へようこそおいで下さいました。お急ぎでご入用の品があるとか。」
「そうなんだ。息子の誕生日の贈り物を急ぎ選びたいんだ。俺は午後には王都をでないといけない。」
「‥‥魔獣討伐ですか。」
「ああ、西の方にスタンビートの兆候がでているらしくてな。」
「またですか。最近多いですね。」
「ああ、さすが当たり年だよ。昨日討伐遠征から帰って来たばかりなのに。おかげで、息子の誕生祝いの品が準備できていないんだ。
ああ、その子は、お前の子か?似ているよな。」
「甥ですよ。兄の子です。‥‥ソーマ、こっちにおいで。」
叔父様が、僕の方に向って手を差し出した。リヒャルトさんが、すっと横に動いて道をあけてくれた。
僕はちょっとドキドキしながら、慎重に二人のところに歩いていって、お辞儀をした。
「はじめまして。ソーマ・エルストベルクです。」
「ヴィルヘルム・アイヴリンガーだ。先ほどは失礼したね。息子と同じくらいの年齢の子なら、息子が喜びそうな物が分かるかもしれないと思ったんだ。
どうだろうか。もしよければ選んでくれないか?」
それで、僕に声をかけてきたのか。
「あ、あの。僕だったら父様が選んでくれた物なら何でも嬉しいです。僕が選ぶとかじゃなくて‥‥。」
「そうか‥‥。そうだな‥‥。」
ヴィルヘルムさんは、身を低くして、僕の頭をポスポスと撫でた。撫でたんだとわかるけど、大きな手が僕の頭を鷲づかみにしてぐらぐらと揺らした感じになる。
リヒャルトさんとインゴさんが、一瞬身構えたのがわかった。指先がぴくっと動いている。
「うん?君のしている腕輪、いい色だね。」
「腕輪?」
ちらっと、ヴィルヘルムさんの目線の先、左腕をちょっと持ち上げた。サンプルで作った防御の腕輪をしたままだった。色は、僕の瞳の色と合わせて翠にしてみたんだよね。
「ああ、息子の瞳の色は、もう少し青いんだが。健康祈願で瞳の色の物を贈るのもいいな。」
この国では子供の健康と成長を祈って、瞳の色と同じ色のものを贈る風習があるんだよね。
僕も兄様も瞳が翠なので、小さい頃、家の中にある僕らの物は翠色の物が多かった。
僕は叔父様を見上げて言った。
「叔父様、サンプル品だけど、販売できるの?」
「商業ギルドへの登録がまだだし‥‥、それに、元々一般販売はしない予定のものなんだよ。うーん‥‥、そうだね‥‥。」
叔父様は手元の書類に目を落として考え込んでいる様子だ。
ヴィルヘルムさんが、いやいやと首を横に振った。
「その腕輪が欲しいといったわけじゃないんだよ。瞳の色の物がいいかと思いついただけで‥‥。」
「ええ。存じております。しかし、多少条件はあるのですが、良い商品なので。」
叔父様は、ちらりと、背後を振り向いた。待機していたっぽいユリアさんが叔父様に近づいていって、書類の入った封筒を受け取った。
「申請を。それとお品物の準備を。」
叔父様が小声で言うとユリアさんは頷いた。
「ヴィルヘルム卿。他にも色味で選ぶのにお勧めのものを何点かご用意いたしますのでこちらへどうぞ。お急ぎとのことですのでお時間はかけないようにいたします。」
叔父様は、ヴィルヘルム卿を、商談室にご案内するようだ。僕はどうしたらいいのかな、と思っていたら叔父様が僕に手を差し出した。
一緒に行っていいってことだね。
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