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第3章

第106話 混乱していたらしい

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叔父様が来てから少しして、もう一度ノックがあった。案内されて来たのは、髭をはやした厳つい人物。
目元がラルフ君達に似ている。以前確か会ったことがある。ツヴァイトベック侯爵のラインハルト伯父様だ。

「お久しぶりですわ。兄様。」
「ああ、エマ元気だったかい?」

母様が立ち上がって挨拶をしている。僕達もそれぞれ立ち上がって挨拶をした。

「突然呼びつけて申し訳有りませんでしたわ。」
「いや、こちらこそ済まない。息子達が迷惑をかけた。」

ラインハルト伯父様が来たら、ラルフ君達は今まで以上に恐縮した様子だった。

「ラルフ君とロルフ君は悪くありませんわ。ただ対応策についてご相談したかったんですの。」

母様はトリット伯爵家や冒険者ギルドへの対応について、足並みを揃えておきたいからと言って話し始めたけど、
伯爵家とギルドに抗議文を送れとか、母様が中心になって色々指示を出していて、ラインハルト伯父様は「はいはい」と素直に聞いていた。
後は大人同士で話し合うからと言われて、僕達は子供部屋で、マーリエと一緒にプティちゃん双六をすることになった。
子供部屋でメイドと一緒に遊んだりしていたマーリエが、ご機嫌が悪くなってきていたのだ。

「マーリエ、一人で待っていられて偉いねぇ。さあ、皆で遊ぼう」
「マーリエ、ほっぺが膨らんでるわよ」
「マーリエ、早く駒を選ばないと、良いのなくなっちゃうよ。僕は灰色猫さん。」
「あー!マーリエは黄色い猫さんにするっ!」

兄様とアリサ姉様と僕で次々とマーリエに声をかけた。プティちゃん双六の駒は色違いの猫さんだ。
最初むっすりとしていて双六からそっぽ向いていたマーリエだったけど、お気に入りの色の駒が取られそうだと思ったら、
慌てて振り向いていた。

「えー、黄色の猫さん、いいなー。じゃあ僕青い猫さん」
「僕も黄色の猫さんがよかったなー、じゃあ緑の猫さん」

ラルフ君とロルフ君も、マーリエに合わせてくれている。
皆でそれぞれ、駒の猫さんを選んだ。

「『プティちゃんお願い!』やった!素早さアップ!」
「『プティちゃんお願い!』赤? 火の耐性か~」

双六は駒が邪魔にならない範囲なら、人数が増えても大丈夫なのがいいね。始めるとすぐにマーリエの機嫌は良くなった。

(神力アップにゃ!神力アップにゃ!)

皆が次々「お願い」するので、プティもご機嫌だ。部屋の中を走り回っている。
わいわいと盛り上がっていると、ふとラルフ君が言った。

「ねえ、このゲームって、いろんな属性アップの他に、何かモヤモヤすっきりの効果があるのかな?」
「ん?気分転換ってこと?」
「それもあるけど、そういうのじゃなくてね。ギュンター君達と冒険者活動をしてるときに、なんかモヤモヤーとしてたんだけど
何だか良く分からなかったんだ。それがさ、この間ここに遊びに来てゲームして帰った後、冒険者活動でやってることなんだかおかしいんじゃないかって
思えるようになったんだ」
「僕もだよー! あれ?なんでゾフィーの荷物を僕たちだけで持たないといけないの?とか、思うようになったんだ。その前は、なんかちょっと不満でモヤモヤしてすっきりしないんだけど、そこまで考えられなかったんだよね」
「今日もさ。ゾフィのこと顔は可愛いけど‥って思ってたけど、自分の依頼の荷物持たせて、依頼料は僕たちの分までもらって当然って顔してる人のこと
 顔だって全然魅力的には思えなくなったよ。しゃべり方変だし。」

僕はラルフ君とロルフ君の事をじっと見つめた。

ーーーーラルフにゃん、にゃ。混乱は解けてるにゃん。颯真ニャンの従兄弟で友達にゃん。
ーーーーロルフにゃん、にゃ。混乱は解けてるにゃん。颯真ニャンの従兄弟で友達にゃん。

あ、僕の友達って出たって喜んでる場合じゃなくて、「混乱」? 状態異常になってたってこと?

「もしかして何か状態異常になってたのかな。」

僕が言う前に兄様が言った。

「あー、そう言われるとしっくりくるよ。」
「そうそう、なんか変な状態になってた感じ。」
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